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北本の端っこ、もう畑と雑木林しかないような場所に、ボロアパートがぽつんと建っていた。築40年はとうに過ぎたそのアパートの一室で、後藤鳴琉(める)布団に顔を埋めていた。
母・千里(ちさと)は今日もまたスマホに向かって叫んでいる。かつて「エミメルダイアリー」としてSNSで話題になり、そして笑い者にされ、今では“ネットのおもちゃ”と呼ばれている女。金も時間もなく、家庭はほとんど壊れていた。
鳴琉は14歳。中学2年。進学や夢どころじゃない。
学校では「エミメルの息子」というあだ名でバカにされ、家に帰れば母親のヒステリーが待っていた。
「なんで……なんで俺、こんなとこで生きてんだよ……」
ぽつりと声が漏れた。枕はすでに涙でぐっしょり濡れている。
親には言えない。友達もいない。何度も何度も「ここじゃないどこか」を夢見た。
でも、行く場所なんてない。
リビングのほうで千里がまたヒステリーを始めた。
耐えきれず、鳴琉はドアを蹴飛ばして叫んだ。
ぽつりと声が漏れた。枕はすでに涙でぐっしょり濡れている。
親には言えない。友達もいない。何度も何度も「ここじゃないどこか」を夢見た。
でも、行く場所なんてない。
リビングのほうで千里がまたヒステリーを始めた。
耐えきれず、鳴琉はドアを蹴飛ばして叫んだ。
鳴琉はそのまま自分の部屋に戻って、布団をかぶった。
声にならない嗚咽が、喉の奥から漏れていく。
「……俺なんて、生まれてこなきゃよかった……」
夜の静寂が、それだけを聞いていた。
そして、古びたアパートの天井には、何の夢も希望も映らなかった。