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昇り詰めた後──
「……さっき、何を言いかけたんですか?」
ふと思い出して彼に訊いてみると、「うん……?」と、顔が向けられた。
「君は、私を、どこまで溺れさせたらと……。そう、言おうとしたんだ」
「えっ、溺れさせるって、お風呂と何か関係が……?」
まさかそんなわけもないよねと、頭の中がハテナマークでいっぱいになる。
すると彼が、喉元でくっ……と短く笑って、
「……君は、可愛くて、本当に……」
愛おしげに私の頬に手をあてると、唇にちゅっと触れるだけのキスを落とした。
「溺れてしまうくらいに、君を愛してると……。そう、言ったんだ」
「…………。」
言葉の意味が知れると、幸せなあまり涙が溢れた。
「ほら、泣かないでいい」と、溜まった涙を吸うように私の目尻にそっと唇を寄せると、「そろそろお湯に入ろうか。君の体が冷めてしまわないように」と、浴槽に手が引かれた。
先に入った彼に背中を向けるかっこうで、おずおずと身体を沈めると、後ろから腕が回されバックハグで広い胸に抱え込まれた。
「……あっ、あんまり密着されると、その、恥ずかしい、です……」
身の置き場に困り、もぞもぞと体をよじりながら口に出す。
「……どうして?」
耳元で声がひそめられ、付け根に唇が寄せられる。
「……だって、」
「もっと、君とくっついていたい」
回されている腕に、離したくないとばかりにぎゅっと力が籠って、こんな風にくっつかれるのも、なんだかくすぐったいなと感じる。
「……今夜の蓮水さんは、少し甘えたがり屋なんですね?」
ちょっぴり微笑ましくも感じながら口にすると、
「こうしていないと、君がどこかへ行ってしまいそうにも思えて」
ふと彼が切なげに呟いて、きっと過去の想いに今も捕らわれているんだろうなと、
「私は、ずっとあなたのそばにいますから」
と、腰まわりで組まれた彼の手の上から、自分の手をそっと重ね合わせた……。