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「兄上、珠子様がお好きだったのではないのですか? このままお気持ちを伝えずに宜しいのでしょうか?」


私はレオ国の王子ルイス・レオとして生を受けた。

2年後に生まれてきた珠子様風に言うと光の主人公属性を持つ無敵の男がルイだ。


彼は知能が異常に高い上に、察しもよく人の心の機微に敏感だ。

だから、当然私の珠子様への気持ちにも当然気がついているとは思っていた。


やっと強制力という呪いがとけて取り返そうと必死に仕事をしているのに、ルイは自分がなんでも一瞬でできてしまうから私の苦労が本当の意味では分かっていない。


珠子様に自分の気持ちを伝えて振られている暇があったら、私はずっと失礼な対応をし続けても支え続けていたフローラの想いに報いたいのだ。


それに、珠子様は自分の手に負える女性ではないことは彼女の書いた暗黒小説を読んで理解している。


「ルイはそれで良いのですか?珠子様が私を好きになってしまうかもしれませんよ。ルイは珠子様以外の女性を愛せないと私は思います」


ルイは思いやりがあり、優しく、なんでも出来て全てを持っている。

彼は欲しいと思ったものは、何でも手に入れてしまうだろう。


そのような彼が一生かけても手に入れられない闇を持っているのが珠子様だ。

私は彼女の思いやりや優しさに惹かれたが、ルイは彼女の闇に惹かれている。


ルイは自分の持っているものや、これから手に入れられるものに惹かれるような子ではないのだ。


「珠子様が兄上を好きになる可能性はありません。彼女は僕に惚れ込んでいます。兄上も僕が珠子様以外を愛せないと思っているのですね、僕もなぜだかそう感じております。なぜなのでしょうか」


初めてわからないことができた、ルイを見て「ざまあみろ」と思ってしまうのは私が珠子様の暗黒小説を読みすぎたせいだ。


私は自分の誰にも言えない悩みに気がついてくれた珠子様を好きになり、私を主人公とした小説まで書いてくれた彼女に感動した。


最初の1回を読んだ時は、「私の本当に好きな人はフローラです。」という最後のフレーズを心の中で「私の本当に好きな人は珠子様です」に変えていた。


彼女の書いた小説を読んでいる時だけは、イザベラを求める強制力から逃れられていたのだ。

そのような不思議な魔力を持った小説を私は何度も繰り返し読んだ。


「自分の気持ちは自分で向き合っていくしかないのではないでしょうか。本物のイザベラはどこにいると思いますか? 」


珠子様が私のために書いた小説は私の心に寄り添ったもので、とても心が慰められた。

しかし、彼女の小説は闇を感じる独特な表現に溢れていて、繰り返し読んでいると闇に取り込まれるような感覚に陥った。


本物のイザベラのことも小説の中で、「世界にいらない子として天に召された。」と表現していた。

私は小説の中に闇に取り込む罠のように点在する独特の表現に、珠子様の深い闇を感じた。


暗黒小説に取り込まれている間、イザベラを求めるという人を愛するような気持ちは強制されても生まれないのだと悟った。


「正直に言いますと、彼女がどこにいようと僕はあまり興味がありません」


ルイが淡々と返してくる、彼が彼女と婚約したのは私を次期国王にするためだから当然だ。

王位を長子に相続させると決めてた父上も、ルイの超人のような能力を察するとルイに王位を譲ろうと悩み出した。


私が自分が次期国王になれないかもしれないことにショックを受けているのをルイは察知し、自分は私のサポートに徹し出した。


強制力がかかって私が自分を見失ってからは、さらにサポートに徹した。

彼は王位に興味がない、そんなものなくても自分が無敵の存在だと知っているからだ。


「ルイは今日ルドルフ王太子殿下が現れるまで、珠子様がこの世界を作家が創造した世界だという言葉信じていなかったでしょう。そのように愛する人の言葉を信じないようだと、どこかで幻滅されてしまいますよ」


やはり私は暗黒小説に触れすぎたせいか、ずっと支えてきてくれた弟のルイにさえ意地悪になってしまっている。


「彼女に幻滅されてみるのも、面白いかもしれませんね」

ルイは今までできなかったことがないから、幻滅されてもすぐに心を取り返せる自信があるのだ。


「珠子様が現れて良かったですね。ルイが誰かを愛する日が来るとは思いませんでした。私が好きなのはフローラです。7歳の時初めて彼女に会って、優しく思いやりがあり誠実な彼女に惹かれました。私が自分を見失っていた間も、私の代わりを努めてくれたり、尽くしてくれました。珠子様に惹かれた日があったとしても、私はもう一度フローラを好きになる自信があります。ルイも私をずっと支え続けてくれましたね。本当に感謝しています。私は今必死で遅れを取り戻そうとしています。ルイが珠子様から愛されているという惚気話を聞いている時間がないことをお伝えしておきましょう。私はフローラの隠された価値にも気がついています、次に会う際には私が好きなのはフローラだと迷いなく答えられていると思いますよ」


私はルイが愛する人に出会えたことを心から喜べたことに、暗黒小説に取り込まれきってはなかったと安堵した。

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