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瑠奈は目を見開いた。

「思い出した!あなた長谷川さんちの子でしょ。長谷川智菜ちゃん。でも、全身やけどで心肺停止って聞いたのによく助かったよね? そちらの男性は長谷川直哉。長女虐待殺人犯。十年前に死刑執行されたはずだけど何で生きてるの?」

――……! 何で? 私、何でそんなこと知ってるの? 少女の顔を見る。

少女は黙って瑠奈を見ている。瑠奈は思い出す。

そういえば、少女は自分に似ているだけでなく、自分の兄によく似ているのだ。瑠奈は思い出す。

「私の名前は山崎瑠奈。一つ違いの兄がいた。山崎玲於奈。私たち兄妹は孤児だ。両親は強盗に殺された。身寄りのない私たちは母の弟である長谷川家に引き取られた。

長谷川親子と私たち兄妹は巧くいっていたが長谷川直哉は山崎玲於奈の存在を疎ましく思っていた。

なぜなら直哉は小児性愛者だったからだ。男の子は要らない。未成年の女の子だけでいいと思った。


それで私の兄玲於奈を殺そうとしたが長谷川智菜が身を挺して庇った。

その結果、包丁で胸を刺された。動転した直哉は瀕死の智菜と玲於奈を閉じ込め、マンションに火を放った」

そこまで聞いて長谷川直哉は凄んだ。

「ああ。瑠奈。お前は学校へ行っていて難を逃れた。だから俺はトドメを刺しに来たのだ」

瑠奈はひるまずに言った。「貴方はもう死んでいるのよ」

瑠奈がそういうと、直哉は苦笑した。

「いいや。怨念は死んでない」瑠奈は、直哉の身体から煙のようなものが昇っていくのをみた。

瑠奈はそれに向かっていった。

「お化けの癖に!」直哉は瑠奈を馬鹿にしたように笑う。

「お化けじゃない。悪霊だ。俺の邪魔をするな」

直哉はそう言いながら瑠奈を押しのけようとした。

しかし、瑠奈は退かない。瑠奈は直哉の手を掴んだが、逆に押し返されてしまう。

「うわっ……!」

瑠奈が声をあげる。瑠奈は後ろに転びそうになった時、瑠奈は何かを踏んだ。

瑠奈の足の下からバキッという音がする。瑠奈が足をどかすとそこには折れた釘があった。瑠奈はそれを拾い上げて、直哉に近づこうとする。

「何度やっても同じことだ。無駄だぞ。瑠奈!」

「やってみないと分からない!」瑠奈は、その折れ曲がった釘で、直哉を突き飛ばそうとしたが、避けられてしまう。

「チッ」舌打ちして、今度は瑠奈はバットを振り回し始めた。

しかし、やはり当たらなかった。その時、後ろから大きな物音と共に、男の悲鳴が聞こえてきた。

振り向くと、ドアの向こうで、先程、ドアノブに手をかけて瑠奈が引っ張っていた男の姿があった。

「大丈夫ですか?」

瑠奈が叫ぶ。すると男の影が振り向いた。

「ええっ?お父さん?」

それは強盗に殺されたはずの山崎卓也であった。

「瑠奈、大きくなったな」

「お父さん、助けて!長谷川の亡霊に襲われてるの」

すると卓也は直哉を睨みつけ一喝した。

「この野郎。一度ならずも二度三度、どこまで人を殺めたら気が済むんだ。あげくは死刑に処せられて死んだ後もなお、俺の娘に手を出す。何様のつもりだ!」

その言葉を聞いてもなお、直哉は不敵に笑い続けた。

「何様はお前の方だぞ。聞いてあきれる。山崎卓也。お前は俺の妻を孕ませた。そして中絶を強要した。妻は俺に知られまいと悩んで苦しんで苦しんで苦しみぬいて脳梗塞で死んだ。卓也。お前が殺したんだ」

「何だと? 嘘を言うな」

「嘘なもんか」

「ああ、分かったよ。俺がお前を殺したい理由はそれか」

「ああ、そうだ。俺は、妻を殺して自殺したんだ」

「自業自得だろ」

「うるさい!」二人のやり取りを聞いていて瑠奈はあきれ果てた。片や他人の妻に手を出した男。

片や復讐のために手段をいとわぬ男。瑠奈は叫んだ。「お父さんも長谷川のオッサンもどっちもどっちじゃない」

そして、瑠奈は二人の間に割って入り、瑠奈は二人を引き剥がした。

瑠奈は、自分がどうしてこんなところに来たのかを思い出そうとしていた。それは、きっと、大切な人を探しに。

……………………。そうだ。そうなのだ。ここは廃墟となった自宅マンションの焼け跡。

地下駐車場の片隅に兄と二人で隠した宝物がある。

他愛ないミニカーとビー玉だったが、長谷川直哉が初めてくれたお年玉で駄菓子屋に買いに行った。その記念に隠した兄妹の宝物。大きくなったら二人で結婚しようと誓い合った。

「お兄ちゃん。これ結納だね」

「そうだ。瑠奈。俺からの婚約のしるし」

近親婚の禁止とかそういう大人のルールすらしらなかった純粋で可愛らしい男の子と女の子のピュアな思い出。

その思い出を胸に二人は生きた。だが、それも長くはなかった。

長谷川直哉は山崎瑠奈に執着して追いかけ回すようになり、それを不審に思った山崎卓也は長谷川直哉を問い詰めた。

その日を境に長谷川夫妻には亀裂が生じていき崩壊の一途をたどることになるのだが。


そしてある日、その悲劇が起こったのだ。山崎卓也と長谷川直哉は殴り合いの喧嘩をした。

そしてその最中で、直哉は倒れ込んだ卓也の上に馬乗りになり、手に持っていた果物ナイフで何度も何度も突き刺したのだ。長谷川直哉は、そのまま警察に逮捕されたが、

山崎卓也は帰らぬ人となった。そんなことはもう、思い出したくもなかったはずなのに、忘れていたはずだったのに、何故か今になって思い出すなんて。長谷川直哉は言った。

「おい! そいつはお前の父親だろう? 父親を見殺しにするのか?」

――違う! 私は……! 瑠奈は駆け出した。地下駐車場の最深部。地下三階の非常階段扉の戸袋。

そこにガムテープで二人だけの宝物が張り付けてある。

「あった!」

ボロボロに焼け焦げた何かの塊。かろうじて溶けたミニカーが判別できる。

ビー玉は消滅していた。「お兄ちゃん。ごめんなさい。私だけ生き残って」

瑠奈はスカートのポケットから清め塩を取り出した。封を切って念仏を唱えながらまき散らす。

すると長谷川直哉と山田卓也の亡霊が苦しみ始めた。「今更、成仏なんかさせない!」

瑠奈は泣きながら長谷川直哉と山田卓也の亡霊を追いかけた。

「逃げないでよ!」

だが長谷川直哉と山田卓也の亡霊は消えてしまった。「

お願いだから!」

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