コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第10話:グルッペンの罠:泳がされていた二人
登場人物
グルッペン:WrWrd軍総統
ひとらんらん:一般兵、スパイ
トントン:書記長
ゾム:暗殺者
コネシマ:特攻隊長
本文
トントンからの報告を受け、グルッペンは、全てが自分の読み通りに進んでいることに満足していた。彼が求めていたのは、二人の自発的な告白と、W国に致命的な打撃を与える決定的な裏切りの証拠だった。
グルッペン「トントン。作戦を発動する。これこそが、彼らが裏切り者となるか、真の仲間となるかを決める最後の瞬間だ」
グルッペンが発動させたのは、W国国境付近の補給基地を完全破壊するという大規模な偽装作戦だった。この情報は、彼らが**「本物のスパイ」**であるかどうかを試すための、最後の偽の情報として、オスマンとひとらんらんを含む中枢メンバーに流された。
この作戦が実行されれば、W国は大きな打撃を受ける。オスマンの家族が人質であることを知るグルッペンにとって、これは彼らの家族を直接的に脅かす行動を意味した。
オスマンは、家族の危険を察知し、極度の不安に駆られていた。しかし、外交官としてWrWrd軍に忠誠を誓った以上、もはや情報を流すことはできなかった。
一方、ひとらんらんは、グルッペンが自分たちを試していることを理解していた。
ひとらんらん「(グルッペンの作戦は、僕たちが偽の情報を流し続けた場所を叩くことを示している。もしW国がグルッペンの偽情報に乗れば、彼らは致命的な隙を見せることになる)」
ひとらんらんは、畑の奥深くにある隠し通信機の前で、決断を下した。彼の目的は、W国全体を救うことではなく、家族を人質に取っているW国の総統を出し抜き、自分の家族と、WrWrd軍の仲間を守ることだった。
ひとらんらん「(ごめん、グルッペン。これが、僕がWrWrd軍に入った本当の理由なんだ)」
彼は、補給基地破壊作戦の真の標的と、それを避けるためのWrWrd軍の実際の部隊配置に関する、極めて正確な機密情報を暗号化し、W国へと送信した。これは、WrWrd軍の作戦を完全に破綻させ、W国を勝利に導く、最も悪質なスパイ行為だった。
その深夜。
ゾムとコネシマが、グルッペンからの極秘命令を受けて、軍の通信基地周辺を巡回していた。
ゾム「グルッペンの命令は絶対だ。怪しい通信があったら、すぐに捕まえろ。グルッペンは、ひとらんらんかオスマンが動くと読んでいる」
その時、コネシマが基地の裏手の倉庫から、微弱な電子音が発せられているのを聞きつけた。
コネシマ「ゾム! あそこや! 誰か、通信機を使っとる!」
二人が倉庫に突入すると、そこにいたのは、いつもの穏やかな農夫の顔ではなく、冷徹な工作員の顔をしたひとらんらんだった。彼は、通信機の送信完了ボタンを、まさに押し終えたところだった。
ひとらんらんは、二人の姿を見て、静かに立ち上がった。
ひとらんらん「……ああ、とうとうバレたか」
ゾム「ひとらん……やっぱり、お前やったんか!」
コネシマ「なんでや! お前、俺らの仲間やったやろが!」
ひとらんらん「ごめん、コネシマ。僕は、家族を守るために、他国から来たスパイなんだ」
ひとらんらんは、観念したように静かに告白した。スパイの正体が、コネシマとゾムの目の前で、決定的にバレた瞬間だった。
しかし、彼が投降する気配はない。彼は、倉庫の隅に隠していた特殊なナイフを手に取った。
ひとらんらん「だけど、まだ終われない。僕の最後の目的は、僕を裏切らせようとしたグルッペンを、殺すことだ」
ひとらんらんは、家族の安全を確保するために、自分を道具として利用したグルッペンへの怒りと、家族を守るという過去の誓いに突き動かされ、ゾムとコネシマを振り切って、闇夜の中に逃亡した。
ここまでの隠し事の状況(10話終了時点)
グルッペンの仕掛けた偽装作戦が、ひとらんらんを最終的なスパイ行為へと追い詰めた。
ひとらんらんが決定的な機密情報をW国に流出させた。(隠し事の全容が完成)
ひとらんらんがスパイであることをゾムとコネシマに告白し、グルッペンを殺害する意図を明かして逃亡した。(クライマックスの幕開け)