テラーノベル
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襲撃者たちが撤退したのは、それからしばらく経ってのことだった。
荷馬車に積まれていた嫁入り道具の大半が奪われ、護衛たちにも少なからぬ死傷者が出ていた。
幸い、後続の馬車に乗っていた二人の侍女は無事だったものの、肝心のダフネを乗せた儀礼馬車の姿がない。
「お嬢様は!? ダフネ様はどちらに!?」
侍女の一人が血相を変えて尋ねた。
「襲撃の最中、護衛の指示で御者が馬車を走らせたんだ。お嬢様だけでも逃がそうと……」
「では、もう安全なところまで逃げられたのですね!?」
「それが……」
答えた護衛は、困惑したように街道の先へ目を向けた。
あれから随分と時間が経っている。
馬車が無事ならば、どこかで止まっているはずだった。
しかし、街道の先へ確認に向かった者たちからは、まだ何の報告もない。
「とにかく捜せ! お嬢様に何かあってからでは遅い!」
負傷者の手当てと荷馬車の警護に必要な人数を残し、動ける者たちが街道の先へ向かった。
***
やがて、街道脇に倒れている男が発見された。
ダフネの乗る儀礼馬車を操っていた御者だった。
「おい! しっかりしろ!」
呼びかけに、男が呻き声を漏らす。
額から血を流し、片腕を押さえていたものの幸い命に別状はなく、すぐに意識を取り戻した。
「馬車はどうした!? ダフネ様は!?」
「……馬が……」
御者は苦しげに息を吐いた。
「賊から逃げようと……馬車を走らせたんですが……馬がひどく怯えてしまって……」
「それで?」
「手綱を引いても……止まらなくて……。道の凹凸で馬車が大きく跳ねた時に……私は、御者台から……」
「投げ出されたのか!?」
御者が弱々しくうなずく。
「馬車は……恐らくそのまま……」
「どちらへ行った!」
男が震える手で街道の先を指した。
護衛たちは顔を見合わせる。
御者を失った馬車が、怯えた馬に引かれたまま走り続けたというのか。
「急げ!」
数人が馬を走らせた。
ノルディア街道は、モビ山脈の裾野を縫うように続いている。
ところどころに雪の残る岩肌が迫り、道の片側には深い谷が口を開けていた。
やがて、先行していた護衛の一人が馬を止める。
「……おい、あれを見ろ」
鷹槻れん

17,825
#強引
#シングルマザー
水羽凛
806
#異世界転移
新城かいり
1,030
街道の端。
ぬかるんだ地面に、深い車輪の跡が残されていた。
それは道の先へは続いておらず、街道の外――。崖の縁へと向かっていた。
「まさか……」
馬を降りた護衛が、慎重に崖際へ近づく。
眼下には、切り立った岩壁と、ところどころに針葉樹の生えた急斜面が広がっていた。
その先は深い霧に覆われ、谷底まで見通すことができない。
「……落ちた……のか?」
誰かが呟いた。
答える者はいなかった。
ただ、崖の縁に残された車輪の跡だけが、馬車の行方を物語っていた。
***
捜索はすぐに始められた。
しかし、谷の斜面は想像以上に険しかった。
剥き出しの岩肌には雪解け水が流れ、足を掛けた途端に崩れるような場所もある。
わずかに生えた木々を頼りに、護衛たちは慎重に斜面を下っていった。
どれほど進んだ頃だっただろう。
「おい! あそこに誰かいるぞ!」
斜面の途中、岩と木々の間に引っ掛かるようにして、一人の女性が倒れていた。
衣服はあちこち裂け、顔や手には無数の傷がある。
片脚も不自然な方向へ曲がっていた。
それでも、近づいた護衛が声を掛けると、女性は微かに瞼を動かした。
コメント
2件
引っかかってたのはダフネ!? それとも!?
うわ、ここで終わるのか…! 襲撃後もまだ安心できなくて、馬車ごと崖に落ちたっぽい展開がめっちゃハラハラした。御者が投げ出されて「そのまま馬車が…」って流れ、想像するだけで胃が痛い。ダフネの無事を祈りながら、次話も待ってます🔥(鷹槻れんさん、今回も緊張感が半端なかったです!)