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大量の薬を飲んで今日も眠る¿夢の中けれど、今日は少し違う。
白い部屋ではなく、
灰色がかった夜のベランダ。
冷たい風が頬を撫でる。
遠くの街灯の光が、
ゆらゆらと歪んで見えた。
「……いるま?」
振り向くと、
ベランダの柵に寄りかかる
いるまの姿があった。
けれど――手には、煙草。
赤い火が、夜に溶けていく。
「……っ、え、いるま……なにそれ」
「ん? これ?」
いるまは少し笑って、煙を吐き出した。
「なんか落ち着くんだよ。吸うか?」
「え…、いやいいよ
いるま……たばこは体に悪いって……。
嫌いって言ってたじゃん」
「俺、そんなこと言ってた?」
いるまは首を傾げて笑った。
その笑顔は“同じ形”なのに、
どこか冷たい。
なつの胸に、不安が広がる。
「いるま……どうしたの、なんか変だよ」
「変なのはお前の方だよ、なつ」
「え?」
「――あいつら、まだ離してくれないの?」
声が低く、
その奥に鋭い熱を孕んでいた。
「てかさ、なつが離れりゃいいんだよ。
あんな奴ら、もう必要ねぇだろ?」
「そんなこと言わないでよ……
みんな、心配してくれてるのに……」
「心配?あいつらお前を“病人扱い”
してるだけだろ。
俺に会いに行く来るのを邪魔してる。
それが優しさか?」
なつの喉がつまる。
言葉が出ない。
いるまは近づいてきて、
ゆっくりと手を伸ばし、
なつの頬を撫でた。
指先から、微かにタバコの匂いがする。
「なぁ、なつ。
お前は俺がいなきゃ生きられないんだよ」
「……いるま、ッ」
「だから、もう戻るな。俺だけ見てろ。
なつが俺を信じてれば、それでいいから」
その声はやさしい。
けれど、どこか違う。
胸の奥で何かがざわめいているのに、
なつはもう抗えなかった。
「……うん、俺もいるまがいないと
ダメだから……」
いるまは笑い、
もう一度、煙を吐いた。
その煙は形を保ったまま、
なつの指先に絡みつく。
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