葛城陸との交際は一年も前に終わったことなのに、今でも私のトラウマ
今日もトラウマをひどくするような映画を一人で観にきて、ラストではぼろぼろと涙を流してしまった
君とつきあいたいと思ったのは陸を奪った霊山寺さんへの復讐だけじゃない
君が彼女とキスするのを見て、私も幸せになりたいと一年ぶりに思った
もし君が私を選んでくれるなら、私は最高の彼女になると誓うよ
最強の彼女と最高の彼女。
葛城陸にひどいトラウマを植えつけられたという共通点を持つ二人の美少女が僕を取り合っている。あまりに想定外の展開に思考がついていけない。
彼女はどんな表情をしてるのだろうと思ったら、僕に背中を向けていて表情を読み取れない。
「ボクを捨てるのか?」
捨てる? 僕が今彼女に別れを告げたら、僕が彼女を捨てたことになるの? 陸には4Pやらハメ撮りやら好き放題させたくせに、僕には一度もセックスさせないし、キスさえ好きにさせてくれない。彼女は僕を何だと思っているのだろう? 心の中のもやもやした気持ちは膨らむばかりだ。
「いろいろ聞かされてまだ頭の中で消化できてない。もう少し時間をほしい」
「すぐに否定してくれないのが答えだ。いいだろう。別れてやる。ただし夏梅がボクを振ったんじゃない。優柔不断なおまえをボクが振ったんだ。勘違いするな」
僕の最強の彼女だったはずの彼女は一度も振り返らずどこかへ走り去り、すぐに人混みにまぎれて見えなくなった――