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てぃんかーべる@全垢フォロー
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第二話『笑い声のする場所』
「……あの、名前はなんて言うんですか?」
『らこ?らこはね〜、音ノ瀬らこ!らこでいいよ!』
「ら、らこ…かぁ…」
歩いて十分ぐらい経った頃、二階建て……いや、三階建てかもしれない。
とにかくそのぐらいありそうな小さめな黒い建物が見えてきた。
玄関の横の表札には『million production』と書いてあった。
『あっ、着いたよ〜!ここがらこたちの事務所!』
窓から人影が見えて、誰かが居るのがわかった。
らこが先に玄関の扉を開けて中に入って行った。
私もらこの後を一歩遅れて中へ入った。
『あっ、らこちおかえり〜!!!』
『らこちおかえり〜…って、後ろの子誰?』
『ん?この子?ゆらぎ!散歩してたら見つけてさ〜、困ってそうだったし連れてきた!』
部屋にいた人たちは、一斉に私を見た。
誰もが困惑したような表情を浮かべている。
でも、確かに誰だって知らない人が来たら驚くかもしれない。
私は思わずらこの後ろに身を寄せた。
『つ、連れてきたって…誘拐ってこと?』
『え!?いや違う違う!ちーがーう!この子が自分で行くって言ったの!』
私がらこの後ろに隠れていると、奥の部屋からオレンジの髪の人が飛び出してきてぐっと距離を詰めてきた。
『ねーねー!どこから来たの?好きな食べ物は!?』
……近い。
『ちょ、こま…初対面の人に詰めすぎ。』
『あーごめんごめん!!』
らこがその人に注意すると素直に離れた。
こまって呼ばれた人はなんだか明るい人なのかな…?
『んー…とりあえず事務所探検しよ!ゆらぎ!』
「え、う、うん…」
私の手を引いてらこが部屋に入っていった。
『ここがリビング!大体みんなここにいるんだよ!』
「リ、リビング…」
確かに、ソファに座っている人が居る。
持っている黒い板から、ぴこん、と軽い音が鳴る。
その人は楽しそうに笑っていた。
……あの板、鳴くんだ。
『次はこっち〜、ここが配信部屋!オフコラボとか公式配信の時に使うとこ!』
「はいしん……」
なんだか光る大きい四角い箱が何個か置いてある。すごい。
黒い円の中に光る小さな太陽みたいなものがある。眩しい…。
海で見た光る生き物とは違うみたい。
らこが大きい四角いものを指さした。
『これがパソコンね!パソコン!』
「パソコン…?」
海にはなかったもの。陸って難しいものがいっぱいあるのかな…。
名前まで難しい…。
『そ!これで配信する!』
パソコンの前に置いてある白い、小さい四角がたくさん並んでるもの。
それは何なのかな。
「ねぇらこ…この白いやつ何?」
『これ?これはね〜、キーボード!これで文字打ったりできる!』
「きーぼーど……文字…」
『押してみる?』
「……。」
私は恐る恐るキーボードの小さい四角を一つ押してみた。
カチッと軽い音が鳴った。
何これ。
よく分からないものばかりなんだね…。
『ゆらぎ〜、最後はここ!屋上!綺麗だよ〜!』
「屋上…」
扉が開くと、ふわりと潮風が頬を撫でた。
目の前には、どこまでも青い海が広がっている。
思わず足を止めた。
「……海。」
フェンスの向こう側、ずっと先に海が見えた。
広い、深い、青く澄んだ大海原。
『綺麗でしょ?』
「……うん。」
『らこ、この景色好きなんだ〜。疲れた時とか、よくここに来るんだよね〜!』
私はもう一度海を見つめた。
海は変わらない。
だけど、ここから見る海は、私の知っている海とは少し違って見えた。
海の中から見るのとは違う。
広くて、すごく綺麗。
……。
まだ何も知らないけど。
少しだけ、この場所が、この笑い声が好きになれそうな気がした──。
コメント
3件
やっべガチもんの小説家見つけちゃった⭐️
僕的には「……あの板、鳴くんだ。」が1番好き スマホは鳴かないけど
うわ、これ、すごくいいな。ゆらぎの「陸って難しいものいっぱいある」っていう感覚、海の世界から来た子ならではの新鮮な視点で――キーボードのカチッとか、スマホの「鳴く」って表現に、未知のものに出会ったときの純粋な驚きが詰まってる。そして最後に屋上から見る海。海の中からじゃなくて“外から見る海”が違って見えるっていう気づき、ゆらぎが少しずつこの場所を受け入れ始めているのが伝わってきて、じんときた。らこの明るさもすごくいいアクセントで、この後の関係性も気になるな。