類司
とある日のこと。天馬司は朝から発狂していた。
「あああ!!!!!なんてことだっ!!!これではショーの練習に遅れてしまう!!まずいっ…それだけは避けなければっ…!!!」
壁時計を見て叫んだ俺に階下から咲希の小言が聞こえてきたがこの際いいとしよう。
俺はショーに使う小道具と台本をひっかき集めて鞄に入れ、洋服を取り出して慌てて着替えた。
規則正しくリズムを刻む時計は9時45分を指している。
まずい…待ち合わせは10時だが、家から走っても15分で着くだろうか…と思いつつ、階段を駆け下りてパンを口に突っ込み、玄関のドアを開けて勢いよく外へと飛び出した。
「はあっ…はあ…」
全速力でフェニックスワンダーランドまで走った俺は息を整えて辺りを見回す。
どうやら類達はまだ来ていないようだった。
「司くーん!!!!!」
「うわっ!!…ってえむか。類と寧々はまだ来ていないのか?」
「ほえ??司くん、まだ9時だよ?」
「えぇええ!?!?!?」
慌てた俺はスマホを取り出して時刻を確認する。
スマホのホーム画面の時計はぴったり9時を示していた。
「…あ、家の時計がずれていたのか…ところでえむは何をしてるんだ?」
「あたしはね~…着ぐるみさんと追いかけっこ~!!!」
「いやそれはお前が…まあいいか。待ち合わせには遅れるなよ!!」
「もちろん!!あっ着ぐるみさん近くに来ちゃったからあたしもう行くね!!バイバイ司くんー!!」
「ああ…ほんとにあいつは相変わらずだな」
思わず苦笑してしまった俺は、少し考えてワンダーステージへと足を進めた。
「はー…しかしどうするか…一時間ほどすることもないしな」
とりあえず近くのベンチに腰かけた俺は早速暇を持て余してしまった。
持ってきた台本は何回も読んでしまったし、ショーの練習をしようにもさすがに朝からセカイに行く気にはなれない。
「ふわあ…」
慌てて走ってきて疲れたのか、急激な眠気を覚えて俺は目を閉じた。
「…くん、司くん!」
「…ん、え…るい?」
「はあ…よかった。司くん大丈夫かい?」
「大丈夫…って何がだ?」
そう俺が訊ねると類は無言でスマホを取り出して俺に見せてきた。
「…ってえ!?!?11時!?」
「10時にえむ君たちと集合したんだけどしばらく待っても司くんが来ないから、心配になって探してたんだ。
…でもまさかこんなところで寝ているなんてねえ…」
「…すまん…」
「こんなところで寝てしまうなんて司くん、よっぽど疲れているんだろう?今日は解散にしないかい?」
「え…いやでも、えむや寧々に迷惑がかかるだろう…」
「寧々にもえむ君にもさっき言っておいたから、このまま僕たちで帰ろう。」
「ああ…でも」
「…そうだねえ。代替案と言ってはなんだけど僕の家でショーのDVDでも見るかい?それからショーの話でもしようじゃないか」
類の一言に俺は目を輝かせて食いついた。ピコンと軽くなった通知音に気づき目を通してみれば、えむと寧々からのメッセージが届いていた。
『司くんゆっくり休んでね!!あたしたちのことは気にしないで!!!』
『ベンチで寝るって馬鹿すぎでしょ…まあ今日は休みなさいよ』
「えむ…寧々…」
「フフフ、それじゃあ行こうか。」
「ああ!!」
コメント
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(*´ω`*)司くん!ゆっくり休んでね☆