テラーノベル
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冬が明け春が訪れようとしている。
都会の大学への進学が決まり、 引越しの準備で、実家にある 自分の部屋の片付けをしている時だった。
「あれ、こんなとこに。 なっつかしー!」
見慣れた校舎、懐かしい顔
もう見返すことのないと思っていた卒アル
思い出に浸るため、片付けの手を止めた。
「うわ、かっちゃん。今と変わんねーなぁ 」
「え!逆にこいつは変わりすぎだろ!笑笑」
クラス写真を眺めている時、
ある人物に目が止まった。
「こんなやついたっけ?」
俺はどちらかといえば、
クラス全員と仲良くできるタイプだった。
名前だって覚えたし、今でも出席番号1番から言えるんじゃないか?と思うくらいだ。
「申し訳ないなー、」
そんなことを思いながら、
知り合いとのトーク画面を開いた。
【これ誰だっけ?】
【卒アルに載ってるんだけど思い出せなくて】
その人物の写真と共にメッセージを送った。
〖いやーわかんね。〗
〖いたっけ?そんなやつ。〗
【やっぱそうだよね、ありがと】
そう言い残してスマホを閉じた。
再び卒アルに目を戻し、ページをめくる。
そこには俺と一緒に写っている写真もあった。
「仲良しだったじゃん」
でも名前も声も喋り方も思い出せない。
「なんでだよ」
「あ、そういえばどっかに 名前書いてるページあったよな」
その名前を探すように
ペラペラとページをめくっていく
「あった!」
その時、激しい頭痛が俺を襲った。
「はぁ、もう今日はやめよう」
卒アルをパタッと閉じて、床に置いた。
その日は掃除もやめて休んだ。
その夜、 高校時代の夢を見た。
━━━━ってやつが転校してきて、
席が隣で、すげー明るいやつで、いいやつで…
「いやー、短いようで長かったね、3年間。」
「くだらん事ばっかやったわー、」
「まあ、全部覚えとく程でもないけどね笑」
「それじゃ、またね」
「おう、またな」
「ッ…!!」
飛び起きた。
長い夢だったように感じた。
けど夢の記憶は無く、
「あ、え、俺なんで」
目から流れたであろう涙の跡があった。
絶対忘れてはいけないような、
心に穴が空いたような、
変な感情になっていた。
外を見るとまだ夜は明けず
あたりは薄暗い時間帯だった。
小鳥の鳴く声で目が覚めた。
「そろそろ朝ごはんよー!!」
「はーい!!」
1階から俺を呼ぶ母親に
いつも通り返事をした。
その日の朝は謎にスッキリしていた。
「あ、片付け途中だった。
あれ、なんでやめたんだっけ?」
「ん?卒アルじゃん、懐かしーなぁ」
床に置いてあった分厚い本を手にした。
「うわ、かっちゃん。今と変わんねーなぁ」
「え!逆にこいつは変わりすぎだろ!笑笑」
「うん?なにこの隙間」
俺と友達が映るその写真には、
不思議なくらいに人1人分の隙間があった。
いくつかの写真にも隙間があった。
誰かがそこにいたように。
「早くご飯食べるよー!!」
母の声に驚きながらも
卒アルを閉じて部屋を出た。
ヒラっと卒アルの隙間から落ちた付箋。
そこには少し強めの筆圧で
「楽しかったよ、ありがとう。」
と 書かれていた。
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