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「うわ……最悪」
「げ、マジ?」
ナギと東海が赤い印を引き当て、二人は絶望的な表情で項垂れた。
「ナギ、大丈夫かい? なんなら僕が変わろうか?」
「おい、オッサン、それじゃクジの意味無いだろ」
つい心配になって声を掛けると、東海がムッとしたように抗議の声を上げる。
「そうだよ、大丈夫だって。別に相手は人間なんだし、ちょっと怖いけど」
「そう? なら良いけど」
兄の寝起きはすこぶる悪い。目付きの悪さはいつもの倍以上だし威圧感が半端ないが大丈夫だろうか?
一抹の不安が頭を過るが、それもまた一興かと黙っている事にした。
「じゃぁ、決行は今度の地方ロケで決まりね」
美月の一言に、メンバー達は満場一致で賛成した。
「――てかさ、誰よ!? 凛さんに寝顔ドッキリとかいう恐怖のカード突っ込んだの!」
美月が思い出したように叫ぶと、全員の視線が一斉に銀次へ。
「……え? なんで俺を見るんすか?」
「いやいや、その顔だろ絶対」
「あはは、バレちゃいました? こういうのって、一番怖そうな人でやった方がバズるんですよねぇ。安心してください! 皆さんの有志はちゃんっと俺が責任もって動画に納めますから♪」
にっこりと満面の笑みで両手を上げる銀次。
「クズだ……」
「え、でも面白いっしょ? バズる匂いしかしないもん!」
呆れ返る東海とナギをよそに、銀次は悪びれもなくウインクして親指を立てた。
動画配信者らしい悪ノリに全員がどっとため息をつく。
「……ま、いいか。次のお題はっと……ええっと、雪之丞さんのキャラ弁作りが見たい?」
「ええっ、ぼ、ボク!?」
「あー、ゆきりん器用だし、意外に料理上手だからねぇ。って、またまた誰よこんなの入れたのは」
美月が呆れたようにため息を吐き、苦笑する。
「って言うかさ、それ、いっそ料理対決とか面白そうじゃん?」
そう言いだしたのは、雪之丞の隣の席に座っていた東海だ。その言葉に、ナギも目を輝かせ「それ、面白そう!」なんて便乗してくる。
「ち、ちょっと誰が対決するのよ?」
「誰って……そりゃ、いるじゃん。紅一点本物女子が」
「っ、あ、アタシ!?」
「なに、出来ねぇの? まさか女子なのに料理できないとか言うんじゃ」
「失礼ね! 出来るわよ! その位っ!」
ニヤァと意地の悪い笑みを浮かべる東海に、美月は頬を膨らませ不機嫌そうに睨みつけた。
「いいわ! やってあげる! 勝負しましょ、ゆきりん!」
「姉さん……本当に大丈夫なんですか?」
心配そうに見つめる弓弦の顔には不安の色が浮かんでいて、それが余計に美月に火を付けた。
「大丈夫! 男の子になんて負けないんだから! とびっきり美味しい物作ってやるわよ!」
「へぇ、そりゃ楽しみだな」
「ちょっと! 逢坂さん! 姉さんをあまり煽らないで下さいよ」
美月がやる気になったのを見て、弓弦が困ったように眉を下げる。だが、一度言い出したら聞かない性格なのは知っているのか、それ以上は何も言わなかった。
そんなやり取りを少し離れた所から眺めていると、ナギが自然と隣にやって来る。
「俺、今回のロケ楽しみになって来た」
「そう、だね。美月と銀次君が色々と企画を考えてくれるから、退屈しなくて済みそうだし、やっぱ彼はすごいよ。面白そうな企画を次々と提案してくれる。しかも、みんなでお題を考えてそれぞれが引くなんて考えてもみなかった」
「フフッ、確かに! お兄さんもそのうち何かやらなきゃなんじゃない?」
「え? 僕が?」
思いもよらぬ言葉に、蓮は驚いてナギを見返す。すると、ナギは悪戯っぽく笑いながら人差し指を立てた。
「んー、お兄さんには何がいいかなぁ? 弓弦君とのイケメン対決? あ! 二人で女装しちゃえば? どっちが可愛いか。みたいな」
「はぁ? 嫌だけど」
「ちょっと! 小鳥遊さん! 何とんでもない企画考えてるんですか! 私だって嫌ですよっ!」
突然会話に入って来た弓弦は、真っ赤な顔をして憤慨している。
「あはは、冗談だってば」
「えー、でもそれ見てみたいかも。蓮君意外と似合いそう。弓弦君も……」
「棗さんまで何言ってるんですかっ!」
ナギの話に便乗して来た雪之丞の言葉に、弓弦が頬を引きつらせながら反論する。
「なになに、何の話?」
「なんか、草薙君とオジサンが女装対決やるんだって」
「うわー! 女装対決はマジでバズるやつっすね! 視聴者の反応、絶対すごいっすよ」
「いや、やらないから!」「やりませんってば!」
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銀次のとどめの一言に蓮と弓弦の声が見事にハモり、その反応が可笑しかったのか、美月たちは顔を見合わせケラケラと笑った。