テラーノベル
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その夜、塔の外階段の影で星の見える静かな塔の屋上。
シンムとノーマンが言葉を交わすその下の階段には――
こっそり息を潜める、エマ・レイ・ギルダ・ドン・フィルたちの姿があった。
「……すごい、ふたりとも……」
エマが小さく呟く。
「完全に、俺たちが考えたどの道よりも、ずっと先を見てる」
レイが少し目を細める。
「……でもね、完全なんて、ないんだよ^^」
「“ぼくのいない世界でも成り立つかたち”にしてあるよ」
「未来の可能性を、たくさん考えたんだ^^」
――それを聞いたエマの目に、涙が浮かぶ。
「……シンムお兄ちゃん、ずっと、私たちの“あと”のことまで考えてくれてたんだね」
ギルダが、静かに言葉を繋ぐ。
「ううん、きっとそれだけじゃない……。
“鬼たちの未来”も、“この世界”のすべても、
全部、自分の責任として背負って……」
フィルが袖を握る。
「……シンムお兄ちゃん、ほんとは、ずっと怖かったのに……がんばってたんだ……」
その夜、星の下で知ったのは、
あの“やさしい先生”が、どれほどの覚悟でここにいたか。
「ノーマンにも負けてなかった……むしろ、ずっと“先”にいた」
ドンの目も、どこか誇らしそうに揺れていた。
レイがぽつりと言う。
「……あいつ、やっぱりずるいよな」
「全部を救って、全部を背負って、しかも……笑ってる」
【屋上に戻る足音】
「――っ、来るよ!」
ギルダが小声でみんなに合図する。
扉が開いて、シンムとノーマンが降りてくる。
エマたちはとっさにバレないように隠れたけれど――
「ふふっ、聞いてたよね?^^」
シンムが優しく、気づいていたように微笑んだ。
「えっ……!?」
みんなが息を呑む。
「全部、聞こえてたでしょ? まぁ、ぼくも聞かせたかったんだけどね^^」
エマが、もうこらえきれずにシンムに飛びついた。
「バカ……! そんな大事なこと、全部ひとりで考えて……!」
「ひとりでがんばって……ひとりで守って……!!」
ノーマンも、少しだけ微笑む。
「君は、やっぱり“ぼくらの兄さん”だよ。誰よりも、誇れる兄さんだ」
レイもぽつり。
「……やっぱりずるい。けど、そんなあんたがいてくれてよかったよ」
その夜、塔の外階段で、子どもたちと大人たちと、
そしてひとりの“せんせい”が――
少しだけ、心をひとつにした。
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