荒い呼吸が車内を埋め尽くしていた。
フロントガラスは完全に白く曇り、外の景色など何も見えない。
助手席に身を戻した大森は口元を拭い、わざとらしく舌で唇を舐めた。
「……どう?気持ちよかった?」
「……っ……黙れ」
シートに沈み、乱れた呼吸を整えようとする若井を見て、大森は子供みたいに笑う。
「感じてる顔……もっと見せてよ」
その声音が甘く、挑発的で、心臓を直撃する。
まだ荒い呼吸が整わないうちに、若井は衝動的に身体を起こしていた。
「……調子に乗るなよ」
そう吐き捨てると同時に、大森の身体を押し倒す。
リクライニングで倒したシートがギシリと揺れ、驚きの表情を見せた大森はすぐに、挑むような笑みを浮かべた。
「……あは、やっぱり我慢できないんだ」
「……黙ってろ」
顔を覆うように唇を重ね、舌を強く絡める。
荒い吐息と唾液の音が混じり、狭い車内を震わせた。
「んっ……はぁ……若井……そんな必死な顔、たまんない」
「……っ、余裕ぶるなよ」
胸元に手を滑らせ、布越しに突起を強く摘む。
大森は背を弓なりに反らし、甘く切ない吐息を零した。
「……あぁ…!……っ……もっと……」
狭い助手席の中で身体をぶつけ合い、シートが軋み続ける。
車体がギシ、ギシと小さく揺れ、スリルが背徳感を煽る。
「……っ、元貴……もう、止まんない」
「いいよ……止めなくて……んっ、はぁ……」
言葉を交わすたびに熱が高まり、荒い呼吸が絡み合う。
若井は完全に余裕をなくし、衝動のままに求め続けた。
そんな若井を見上げる大森の目は、嬉しさと愛しさで濡れている。
「……若井、必死すぎ……そういう顔、俺、大好き」
「……っ、元貴……煽るな……」
「煽ってない…っ、……若井の感じてる顔、見て、イきたいからっ……」
吐息が重なり、身体と身体が打ち合わさる。
小さな車内では逃げ場などなく、熱は限界まで高まっていく。
「……っ、はぁ……もう……イく……!」
「若井……一緒に……っ……!」
荒い吐息が重なり、最後の一線を越えた瞬間。
車が大きく揺れ、ガラスが震える。
視界が白く弾け、全身が痙攣するように果てていった。
しばらくはただ、肩で息をする音しかなかった。
大森はシートに横たわり、荒い呼吸の合間に笑みを浮かべる。
「……はぁ……若井、最高……。余裕なくなると、必死になる顔……めちゃくちゃ好き」
「……お前が……煽るからだろ……」
苦笑いを浮かべながらも、まだ彼の背を抱きしめる腕を離せなかった。
曇ったガラス越しに遠くの街灯が揺れている。
誰にも言えない、俺たちだけの背徳の夜。
荒い呼吸が静まっても、熱だけはいつまでも車内に残り続けていた。
END
コメント
4件
今回もめちゃめちゃすごかったです!! 2人の個性が見れるって感じでいいな〜って自分は思いました(´-`).。oO 次はどんな感じのお話かな?楽しみに待ってます(*^^*)
こんな感じで前後編で構成されているお話っていうのが、元々大好きなので(手軽に読めるので)、それに主様のワードセンスが乗っかって、 好き×好きの神数式が生まれちゃいました…。 今回もドキドキしながら読ませていただきました✨ いつもお忙しい中での作品更新ありがとうございます!