コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
四月二十四日……朝八時……。
「ご主人、朝だよ」
「……あ……さ……?」
えっと、俺は昨日、ミノリ(吸血鬼)と一緒に服作りをしてて……。
「ご主人、早く起きないといたずらしちゃうよ」
「……いた……ずら……?」
えーっと、この声は……そうだ、ミサキだ。
一人称が僕で『四聖獣《しせいじゅう》』の『玄武』。
このアパートと合体しているのがこいつの外装で本体はこいつ。
「ご主人、早く起きて。みんなもう朝ごはん食べちゃったよ」
「……朝……ごはん……?」
あー、そうか。もう朝なのか。
服作りをしている時は時間の流れなんて微塵も感じなかったのに……。
まあ、時間の流れ方は人によって違うからな。
さてと、そろそろ起きるか。
俺が目を開けると目の前にミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)がいた。
「おはよう、ご主人。今日はいい天気だよ」
「そうか……。ふわぁー……あー、眠いなー」
「昨日、遅くまで服を作ってたね。どう? 進捗の方は」
「うーん、まずまずかな……。次の目的地に着くまでにはなんとかするよ」
「そんなに急がなくてもいいよ。別に締め切りがあるわけじゃないんだから」
「うーん、でもなー。あんまり遅いといらないとか言われそうだからな……」
「そんなことないよ。ご主人が一生懸命、心を込めて作ったものなら、どんなに見た目がアレでもみんなきっと喜んで受け取ってくれるよ」
「そうかなー?」
見た目がアレって……。
まあ、そうならないように気をつけるよ。
俺が上体を起こそうとすると、ミサキが俺を抱きしめた。
「おーい、ミサキー。早く退《ど》いてくれー。じゃないと俺はずっとこのままだぞー」
「僕にだって、ご主人を独り占めしたい時はあるんだよ」
「え? あー、そういうことか。それが今なんだな。よし、分かった。お前の気が済むまでこうしててやるよ」
「ありがとう、ご主人。じゃあ、お言葉に甘えて」
ミサキは俺の首筋にキスをすると舌をチロチロと動かし始めた。
こいつはあまり自分の欲を解放しない。
理由は分からないが、常に自制しているような気がする。
そういう面では、こいつは俺と少し似ている。
まあ、それはあくまで俺視点だから必ずしもそうとは限らない。
だが、たまにこうして俺に甘えてくれるのは嬉しい。甘えるという行為そのものだけでなく、こうして俺を頼りにしてくれるのが嬉しい。
あー、なんかポエムっぽくなったな。
やめよう、やめよう。これ以上はいけない。
「ねえ、ご主人」
「なんだ? ミサキ」
「僕ね……今までずっとご主人に隠してたことがあるんだ」
「へえ、そうなのか」
「うん。でね、今からそれを言おうと思うんだけど」
「え? 今言うのか? 別に無理に言わなくてもいいぞ」
「うーんとね、なんとなく今言わなきゃいけない気がしてるんだよ。だから、今言わせて」
「お、おう……」
お、落ち着け、俺。
別に恋愛関連だと決まったわけじゃないぞ。
えーっと、あー、た、多分あれだ。成長痛とかだ。
うん、そうだ。そうに違いない。
「あのね……実は……」
「二人ともー! いい加減起きなさーい! 朝ごはん冷めちゃうわよー!」
ミサキの声をかき消すようにミノリ(吸血鬼)の声が台所の方から聞こえてくる。
タイミングが悪すぎる。どうしてこうなった?
日頃の行いが悪いせいか?
それとも別の何かのせいか?
何にせよ、いいところで電話がかかってきた時と似ている苛立ちだな、これは。
「分かったー! 今行くー! ということで、その話はまた今度……」
「あっ、うん……そうだね……」
ミサキは俺から離れると俺に背を向けた状態でボソボソと何か言った。
その後、彼女はミノリの作業部屋から逃げるように出ていった。
な、何だった? まあ、いい。
とりあえず、朝ごはんを食べよう。