テラーノベル
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左には遮るものがなく、まるで鳥になったように、雪は潮風を全身で受ける。
「曇ってるねぇ。」
一度見た景色、けれど表情の違う。またそれもいい。
秋の天気は曖昧だ。ましては沿岸部など、、、
海は陽の光を反射していない。南下して南下して、、、
『今日の目的地は?』
そうだな、、
「箱根、芦ノ湖を目指す。」
辻堂公園を過ぎたあたりだろうか。
『うわ、、降ってきた。』
それはあっという間に容赦ない大粒の滝に変わった。
「止めるよー。」
道の駅湘南ちがさき。ここで一度雨宿りをする事にした。
「どうしようか、、」
『走れなくはないけど、、風邪ひいたらね。』
「それは1番避けたい。」
ウォーターサーバーで汲んできた水。紙コップから私はゆっくりとそれを口に運ぶ。
「私のN VANに雪のハンターカブ入るかな。」
そう呟くと、雪は勢いよく立ち上がった。
『入る!!』
「まさか初日の正午から、こうなるとはね。」
『まぁ、仕方ないよ。』
雪は海を眺める。その姿は翼を失った鳥のようだった。
「悔しい?」
『まぁ、、憧れてたし、ここ走るの。』
後ろからカタカタと音が鳴る。ワイパーの音とは全く合わない。この不協和音を消してやりたいと思った。
「音楽何聴く。」
私たちはすでに平塚に入っていた。
『MONGOL800』
不貞腐れるようにそう答えた。絶対にダメであるとわかっているが、私は片手でスマホを一瞬操作した。
「ふふふ ふふふーん、、、」
ワイパーの音が少し小さい気がした。
『あーなーたーに!あいたくてぇぇ…..!!』
雪の歌声は楽しそうであった。濁りなく純粋に。
私も上から被せるように思い切り歌声を上げた。
車はいつの間にか、内陸へ進んでいた。海は見えない。
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#条約空気
コメント
1件
読了しました。雨で予定が変わっても、海を眺める雪さんの「翼を失った鳥」のような佇まいが切なくて…。でも車内でMONGOL800をかけて一緒に歌い出す流れ、一気に空気が変わって好きでした。雨の日の不協和音を歌声で塗り替える感じ、二人の距離感がじわっと伝わってきました。次の目的地は芦ノ湖、無事に着けるといいな。