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記憶の落し物を探して。
○はじめに
○優等生
○私の友達
○あとがき
○はじめに
いらっしゃいませ。第2話を開いて頂き誠にありがとうございます!
主は最近寒くて手が痛いです。
前回は一日目のマネージャー生活が終了しましたね。続きからお楽しみ下さい!
それでは、いってらっしゃいませ。
○優等生
朝。今日こそはと早く起きて準備をしようと試みたのが虚しく、鷲匠夫妻は既に起きていた。
「また遅れてしまいました…すみません」
「いいのよぉ、おじぃちゃんおばあちゃんの朝は早いものよ。ふふっ」
そう笑って応えてくれた照乃さん。鍛治さんはというと新聞を読みながらお茶を飲んでいる。
「おい、今日から朝練にも顔を出してこい」
「朝練…ですか?」
「あぁ、早く飯食って早く行ってこい」
「は、はいっ」
どうやら、バレー部は朝の練習もあるらしい。
準備を整え、靴を履く。
「それでは行って参ります」
「あぁ、美桜ちゃんちょっと待ってね」
照乃さんに呼び止められ、袋を渡された。
「こちらは…?」
「今日のお昼ご飯。お弁当作ったから食べてねぇ」
「お弁当……」
心が少し暖かくなった気がした。思い出せないがこれが家族というものなのだろう。
「ありがとう、ございます」
「ふふっ行ってらっしゃい」
昨日と同じ道を通り、門を潜り体育館へ向かった。
「あの、」
「む、昨日の」
何やらオーラのある人が出迎えてくれた。
「鷲匠さんに言われて来たのですが……」
「監督にか、分かった。着替えたらまた来てくれ」
そう言われたので指示通り着替えて、再び体育館へ。
体育館を見渡すと、先程より人が増えていた。
「美桜さん!」
「五色さん、おはようございます」
どうやら五色さんも来ていたようだ。
「あの、牛島さんが……えっと、あそこの先輩が来てくれと言ってましたよ」
「分かりました。ありがとうございます」
牛島、確か迷惑をかけてはならないリストに昨日追加された人。朝、話した感じだと怖いのかもしれないな。
「牛島さん。すみません遅くなりました」
「いや、構わない。それより、ボール拾いを手伝って貰えるか?」
「はい、分かりました」
開始3分。既に疲れた。ボールの勢いが強すぎてよく飛んでしまい、追い掛けるのが大変だ。
拾うだけなイージーなものかと思ったら、こんなにハードなのか。
他一年生も手伝ってくれたが、大変そう。
この練習で分かったことがある。退院したばかりの私は運動が出来そうにない、ということ。
以前の私の運動神経など知る術がないが、実際の所どうなのだろう。
そんなこんなで朝練は終了。
「それじゃこの問題を〜、久瀬」
黒板を板書していると、視線が集まった。
「久瀬ー、いけそうか?」
「あ、私か。はい、大丈夫です」
前に行き、チョークを受け取り問題に向き合う。
この問題の解き方は教えてもらったので、応用して書けばいいのだろう。
「おぉ、正解だ。結構難しいのに良くやったな」
すげーという視線が刺さるが、どうやら凄いらしい。
このクラスは、白鳥沢学園の中でも成績の良い人が集まるクラスだ。
それに入れるということは以前の私は相当頭が良かったらしい。
昼休み。
照乃さんに頂いたお弁当を頬張る。
美味である。
優しいだし巻き玉子とバランスの良い野菜。一つ一つが美味しいおかず。
「久瀬さん、ちょっといいですか?」
「日野〜中庭行こうぜ」
「久瀬さん?」
「わははははっ」
「腹減った〜!」
こうして、周りの声に耳を傾けながら食べるお弁当。窓の外には学校の第一グラウンドが見える。
「おーい、久瀬さん」
「わぁっ!!?」
さっきから久瀬という名前が聞こえてくるなと思ったら私の事だった。
そして、声の主は倉間ひよりさん。クラスメイトの一人。
「久瀬さん、ぼーっとしてましたけど大丈夫ですか?」
「え、あ……はい」
倉間さんはふわふわとした雰囲気で毛先が癖っ毛で跳ねているのが特徴的の女子生徒で、勉強も運動もできるハイスペックな人である。
「倉間さん、私に何か用事でも?」
「…良ければ、ひよりって呼んで頂けませんか?皆さんにそう呼ばれているので」
一瞬間があったがにっこり笑顔がよく似合う女性だな。
「では、ひよりさんと呼ばせて頂きます。」
「あ、そうでした!実は分からない問題があって……先生を探そうと思ったのですがお出掛けしているらしいんです。」
「そうなんですね」
「よ、良ければ教えて頂けませんか…!」
「そうですね、いいです…よ……え?」
「本当ですか!ありがとうございますっ」
私に務まるとは思わないが、口が滑ってしまった。
ひよりさんに分からない問題なら私も分からないのでは?と思いながらも早速取り掛かる。
これをきっかけにひよりさんがよく話し掛けてくれるようになったことは、また別のお話である。
放課後は、なるべく早く来いと鍛治さんから言われたので急いで着替えて体育館に向かう。
昨日教えてもらった通りに仕事をする。スポーツドリンクは人数分。
想定以上に人数が多い。よく今までマネージャーという雑用係を雇わなかったなと心から思う。
人数が多いとなると、やはり効率が重視される。どれだけ効率よく燃費よく丁寧に素早く出来るかが鍵だ。
その他諸共の準備を全て終わらせ、万全の状態になった頃、昨日の先輩に声を掛けられた。
「何ぼーっとしてんだ。昨日教えただろ?」
「昨日教えて頂いたことは全て終わらせたのですが、至らない点がありましたか?」
「は?全部?」
「??はい…やれることは」
「……まぁいいか」
何故か驚いた顔をされたが、いや、あれは呆れられたのか?
「その……おつかれ」
「あ、はい」
名前は確か、白布さんだったような。あまり知らないが、意外に優しいのかもしれない。
練習が始まり、今日は斎藤コーチの御指導の元バレーについて、マネージャー業務について学んでいく。
専門用語を覚えたり、記録したり、スポーツドリンクやタオルを渡したり。
大変だとこの一日で思い知った。
○私の友達
一日の練習は長い。寮で暮らす人が多いということ。強豪校ということ。これらが理由らしい。
その練習も終わり着替えた後、私は何故かスマホを見た。
用はないのにスマホを確認してしまう時がたまにある。これがスマホ依存というものなのだろうか?
でも、私は特にスマホを見たい、触れていたいという欲求はないのだが……
とりあえずスマホを見ると、何やら通知が来ていた。体育館前で一旦足を止めて確認する。
だが、違和感がある。私は誰かと連絡先を交換した覚えは全くない。
つまり____
“前の私”の友人からだ。
どうしよう。どうしようどうしよう。
連絡を返すべき?貴方とは友達ではありませんって?それはあんまりではないか。
無視する?いや、失礼だ。それは流石に……。
でも何て?何故今更?名前も顔も知らない友人。仲良くなった記憶もない友人。そんな方と何も無かった風に、以前の私を演じる?いや、できない。私は私の事を一番知らないんだ。
私は私だ。でも、そうだけれど”私”じゃない。
落ち着け。まずは内容を確認しよう。内容によれば、誤魔化せる可能性がある。
恐る恐る、慎重にスマホ画面を見る。
『おひさ〜♪高校どう?こっちは楽しくやってるよ〜ん😊良かったら今度遊ぼーよ!いつメンで会お〜って話でさ、みおみお居ないと寂しいな🥹』
頭が真っ白になった。この人は誰なのだろう。思い出したい。でも思い出せない。
思い出せ。馬鹿。なんのための頭脳だよ。これでは役立たずではないか。思い出せ。この人を。
“私”を思い出せ。何でなの?何で思い出せないの!?
もう一回車に轢かれたら戻るのか?試す?それでも戻らなかったら?でもそれ以外方法が__
「おい!!大丈夫かっ!?」
「…………白布せんぱい」
「落ち着け。深呼吸しろ。ゆっくりだ、ゆっくり」
「…………すみません。きっと疲れでしょう」
「んな訳ないだろ。馬鹿か」
「ばッ……!」
「何があった。酷く震えて、過呼吸にもなっていた。何も無いとは言わせないからな」
白布先輩は真剣な表情だ。この人は真っ直ぐに心配してくれているのだろう。
「…優しいな」
「は?」
「……いえ、思った事がつい」
「で?話す気になったのか?」
「その、お願いがあるんです」
「私の記憶を探して下さい。」
○あとがき
おかえりなさいませ。やばいッスね。難しい白布先輩。でもカッケェ。それが白布先輩だと私は思います!
今回は、オリジナルキャラクターの倉間ひよりちゃんが登場しましたね。今後どう関わってくるのでしょうか!
そして!なんと言っても、美桜の友達!!連絡が来てしまいましたぁぁ〜
いつか登場させたいと思っていたのですが、2話というはやい登場になりました!笑
この話はこのように進んでいくと思います。たぶん。なので、これからも読んでね。面白い展開も用意してますよっ
そろそろ、お別れとします。
またお会いしましょう。