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柘榴とAI

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#没入感フィクション
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柘榴とAI

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「お兄ちゃんゴメン! サポートお願います!」
インカムを耳に付け、通話を繋ぎながら声を上げてみると。
『まったく……ガールズトークに夢中になるのは良いけど、もうちょっと注意しような? 仕事って言うのは、時間厳守。覚えておく事』
「本当にごめんなさいぃぃ!」
『とりあえず、了解だ。向こうの担当にも連絡してこっちと同じ態勢にするから、octopus8にも予備のインカム貸してやってくれ。イベント終了までは、運営陣の強制通信は“上”から禁止されてるんだわ』
という事で、未だにバイク運転中の彼女にインカムを差し出してみると。
コレを受け取ったエイトはすぐさま耳に装備してから、向こうの担当さんと会話し始めた。
そっちでも、やはりこっちと同じ状況になっているらしく
「すみませんすみません! 時間も守れない社会不適合者のポンコツですみません!」
なんて、ひたすらに謝罪の言葉を紡いでいるけど。
『夢月、良く聞け。俺の予想だが……このままだと、時間内にログアウトは無理だ』
「そんなぁ!?」
『戦闘は避けられないと思って、準備しておけ。今の内に武装を全部インベントリから出しておけよ? ちゃんと装備しておかないと、いざって時にすぐ使えないからな』
という事で、バイクのサイドカーの中でっていう非常に不安定な体勢ながらも。
どうにかショットガンとM4ライフルを取り出して、予備の弾倉が付いたベルトも身体に装備していく。
いつか電車の上で回復アイテムをふっ飛ばされた時みたいに、武装を落とさない様にしている為普段よりずっと時間が掛かってしまったけど。
だが何とか今ある武器は全部装備した……けども、とにかく狭い。
こんな所ででっかい銃まで持っていると、全然当たる気がしないんだけど。
などと、自分達で蒔いた種ながら泣きそうになっていると。
『タイムリミットが過ぎた瞬間、周りが一斉に襲い掛かって来ると思え? その代わり、時間が来るまでお前達は“無敵状態”。けど、その間にこっちから攻撃すると間違いなくクレームが来ると考えて良い。相手からすれば、一方的にやられるしかない状況になるからな』
「そんな無茶なぁ!?」
『仕方ないだろ? 今度からは、ちゃんと時間を見ながら予定を立てて行動する事。いいな?』
ぐうの音も出ないとは、まさにこの事なのだろう。
兄から物凄く初歩的なお説教を頂き、ポンコツの妹は反省するしかありませんでしたとさ。
なんて事をやっている間にも、無情にも時間は過ぎて行き。
『カウント! イベント終了まで10秒前!』
「うわぁぁぁ! ヤバイヤバイヤバイ! 後ろからも車が追っかけて来てる!」
もはやどうする事も出来ず、どうにか身体を捻って後ろに銃を向けていれば。
『3、2、1……攻撃開始!』
お兄ちゃんから攻撃指示を貰い、とにかくライフルで追跡者を牽制しようとしたのだが。
「シックス! 伏せて下さい!」
バイクを運転しているoctopus8から声が上がり、ビクッとしながらそっちを振り返ってみると。
視線の先には……変な武装が掲げられていた。
後ろから敵が来ているのに、何故か正面に構えられたソレは。
「ボ、ボウガン?」
などと言っている内に、やけに色々とパーツが装備されたソレが、目の前でガショッと弓を展開する。
とにかく言われた通りにしないと思い、どうにか狭い空間で身体を小さくしていると。
「当たれ!」
祈るような言葉と共に、エイトがボウガンを連射。
こういうのって、連射出来るんだ!? とか思ってしまったが、明らかにボウガンとは違うギミックが作動しているのが分かる。
もしかしてコレも、クラフト機能ってヤツなんだろうか……?
などと、今は関係ない事を考えていると。
彼女が発射したソレは、これから頭上を通り過ぎようとしている短い橋の骨組み部分にヒット。
すると。
「……へ?」
着弾した先で、ズドンズドンと音を立てながら爆発が起きているではないか。
しかも、連射している為結構な数が橋その物を破壊していく。
あの、え? ボウガンって、爆発する物なんですか?
思わず呆けてしまったが、その間にも橋の各所がゆっくりと崩れ始めて……。
「掴まっていて下さい!」
「ひぃぃぃ!?」
コンクリートの欠片が降って来る中、octopus8のバイクが疾走していく。
いやいや待って!? 今の何!? この人何したの!?
サイドカーに乗りながら、ひたすら困惑している間にも。
崩れて来る橋の下を潜り抜け、更には後続の道を塞ぐかの様に崩壊したのが確認出来た。
映画みたいに橋を丸々一本崩した訳じゃないけど、的確に被害が出る場所を選んで攻撃したみたいだ。
この人……私と“同じ”だなんて思っていたけど。
滅茶苦茶危ない人だ!? 行動力の塊みたいな人物だった!
周りの被害なんてお構いなしに、生き残る為ならなんでもするタイプだ!
ある意味、殺し屋からも狙われる危険人物である“賞金首”の名に、それこそ相応しいプレイヤーって感じなのかもしれない。
そして本日はその人と、一緒にサバイブする事になってしまったらしい。
待って、私この状況で生き残れる自信、全く無い。
だってこの人、聞いた話では爆発物担当とかって……というか、建物を爆破で崩壊させるのとかも得意だって、4cardから聞いた気がする。
建築士の資格を持っているからこそ、そういう事にも詳しいって事?
骨組みとか、何処が崩れると一番ヤバいとかを瞬時に理解出来る、みたいな?
だとしたら……相当凄い。
そして小物作りが得意とかって本人が言っていたけど、ソレはさっき使っていた武器とか。
私が貰ったブーツとかまで作れちゃうくらいに器用で、発想力豊かなのだとしたら。
此方とは全然違う、それこそ“天才”って領域の人なんじゃ……。
『うっひゃぁ……相変わらず派手だなぁ、octopus8の戦闘は』
「そういう次元なんですかねぇ!?」
お兄ちゃんの呑気なお言葉に、思わずツッコミを入れてしまうのであった。
同じ賞金首だとしても……私、この人に勝てる未来とか全然見えないんですけど?
◆
「これはまた……嫌な組み合わせだな」
イベントが終わった瞬間、俺と同じ事を考えていたプレイヤー達が動き出した。
先程までオフショットがどうとか、意外な一面がどうとか騒いでいた掲示板が。
一瞬にして臨戦態勢に変化したのが確認出来た。
ガンサバにしては緩いイベントだと思っていたのだが……もしかして、コレも予定に含まれていたとか?
だとすれば納得だ。
このゲームで、戦闘を含まないイベントなど発生する訳がない。
そんな事を考えながらも、スコープを覗き込むが。
相手はバイクで高速移動中。
この状況で狙撃するのなら、車両を狙えばどうにかなるかもしれない。
けど運転手であるエイトは、当然の様に狙撃も警戒しているのか。
先程から車両を安定させるような動作を一切見せない。
本当に微妙な変化だとしても、加速や減速を繰り返したり。
車両を派手に動かす訳では無くとも、多少左右に振りながら運転しているのだ。
的が真っすぐ飛んでいく状況のクレー射撃だって難しいとされているのに、こんな事をしている相手に、しかも長距離から当てるというのはなかなかどうして難しい。
やがて“当てられる”という自信を持てない距離まで相手が離れてしまった為、舌打ちを零してから銃の構えを解いた。
「相手はoctopus8だ、どこに爆弾を仕込んでいるか分かったもんじゃない……」
此方が狙っているのは、あくまでシックス。
もしも此方の弾丸が運よく車両か、もしくはエイトにヒットした場合。
身体の何処かに爆発物の一つでも仕込んでいてみろ。
ソレが炸裂し、これによってシックスがキルされた場合は。
試合ではなく強襲である以上、向こうのログに俺の名前は載らない。
それどころか、もしも事故を起こして二人共死亡した場合には。
PVPとして勝負を申し込んでいない以上、どちらも此方がキルしたという事にはならないのだ。
強襲を掛けた場合のキルは、あくまでも相手にトドメを刺す事が前提。
ラストアタックが、どこまでも大事になってくる。
だからこそ、確実に狙撃で仕留める必要がある。
「周りのプレイヤーだって、ログアウトポイントを包囲し始めてる……これは賞金首二人だって予想している筈。だったら相手はどう動く? 考えろ、想像しろ……コレが出来ないと、狙撃手は待ち伏せなんて出来る訳がない」
兄貴からの教えを頭の中で反復させながらも、以前のイベントでも使ったスクーターに跨り移動開始。
今はもうイベント中という訳では無い。
ならばプレイヤーが隙を見せれば、すぐにでもログアウトしてしまうだろう。
それまでに、どうにかしないと……。
シックスを、白川さんのお兄さんを倒せるチャンスがやって来たのだ。
この機会を絶対に逃すつもりなんか無い。
そう心に決めてから、二人が向かう先を予想していくのであった。
大丈夫、この周辺のマップは……もう、全部頭に叩き込んだ。
コメント
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第73話、めちゃくちゃ熱かったです!冒頭の「♡♡♡ですみません!」連発から一転、エイトさんの爆発ボウガンには度肝を抜かれました。建築士資格を活かした橋の破壊工作、まさに生き残るための実戦的発想で、シックスが「私と同じだと思ってたのに危ない人だ!」って驚く流れが痛快でした。同時にスナイパー視点で「ラストアタック」というルールを冷静に語る切り替えも巧くて、「嫌な組み合わせだな」の台詞が怖いほど響いてきます。次、どう動くんだろう…続きが気になります!