テラーノベル
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【短歌】
目を閉じて 待つ数秒が 長すぎて 触れた瞬間 時が止まった
【短歌をテーマをした物語】
放課後の公園は、いつもより静かだった。
春の終わりを告げるように、柔らかな風が吹いている。
私はベンチに座り、隣にいる彼をちらりと見た。
いつもなら、学校でくだらない話をしている時間。
今日も同じように話していたはずなのに。
さっきから、どうにも落ち着かない。
「……そろそろ帰ろうか」
彼が言った。
「うん」
立ち上がる。
二人で公園の出口へ向かう。
けれど、私はなぜか歩く速度を少しだけ落としていた。
今日が終わってほしくなかった。
公園を出たところで、彼が足を止める。
「ねえ」
「なに?」
「今日、楽しかった?」
「うん」
私は笑った。
「すごく楽しかった」
「そっか」
彼も笑う。
その笑顔を見ると、胸が少し苦しくなる。
好き。
その気持ちは、もう自分でも分かっている。
彼も同じ気持ちなのか。
それだけは、まだ分からなかった。
「じゃあ……また明日」
彼がそう言った。
「うん。また明日」
私は手を振ろうとした。
けれど。
「……待って」
彼が呼び止めた。
振り返る。
彼は何か言いたそうにしていた。
「どうしたの?」
「……えっと」
いつもはすぐに答える彼が、珍しく言葉に詰まっている。
「何?」
「その……」
彼が一歩近づく。
心臓が跳ねた。
羊と亀のお遊戯会
23
奏音•*¨*•.¸¸♬︎💙
10
映え無し

1
「……目、閉じてもらっていい?」
「え?」
意味を理解した瞬間。
顔が熱くなった。
「……どうして?」
「嫌ならいい」
「嫌じゃ……ない」
小さな声で答える。
彼が少しだけ笑った。
私はゆっくり目を閉じた。
何も見えない。
聞こえるのは、風の音だけ。
さっきまで聞こえていた車の音も。
遠くの話し声も。
全部が遠くなったように感じる。
――まだかな。
ほんの一秒。
なのに、ものすごく長い。
もう少し。
あと少し。
そう思っているうちに、緊張で胸がいっぱいになる。
目を閉じて
待つ数秒が
長すぎて
どれくらい経ったのか分からない。
すると。
ほんの一瞬。
頬に風が触れた。
そして――。
唇に、柔らかな感触が触れた。
驚いて、息を止める。
ほんの一瞬だった。
すぐに離れる。
目を開けると、彼も顔を赤くしていた。
「……ごめん」
「……なんで謝るの?」
「緊張してたから」
「私も……」
二人とも、それ以上何も言えなくなった。
不思議だった。
ほんの一瞬だったはずなのに。
その瞬間だけ、世界から音が消えてしまったような気がする。
時間も。
風も。
夕暮れの景色も。
全部が止まってしまったようだった。
「……帰ろうか」
彼が照れながら言う。
「うん」
二人で歩き出す。
さっきまでと同じ帰り道。
同じ街並み。
同じ夕暮れ。
なのに。
何もかもが少し違って見える。
しばらく無言で歩いたあと、彼が小さな声で言った。
「……今日のこと、忘れないで」
私は笑った。
「忘れられるわけないよ」
「そっか」
「うん」
それだけで、二人ともまた照れてしまう。
駅が近づいてくる。
もうすぐ別れる時間だ。
いつもなら寂しいと思うだけだった。
でも今日は違う。
胸の中に、小さな秘密が一つ増えている。
「じゃあ、また明日」
「うん。また明日」
今度は、ちゃんと手を振った。
彼も手を振り返す。
歩き出してから、私は一度だけ振り返った。
彼もこちらを見ていた。
目が合う。
二人で笑う。
私は前を向いた。
目を閉じて
待つ数秒が
長すぎて
触れた瞬間
時が止まった
たった数秒。
たった一度の出来事。
それなのに。
今日という日は、きっとこれから先も忘れない。
明日、学校で会ったら。
きっと少し照れてしまうだろう。
いつも通りに話せないかもしれない。
それでも。
また「おはよう」と言えることが、今は楽しみだった。
止まったように感じた時間は、また動き始めている。
けれど、その瞬間だけは。
二人の心の中に、いつまでも残り続けるのだった。
コメント
1件
ああああもう最高すぎる!!😭💕💕 「目を閉じて待つ数秒が長すぎて」の感覚、めっちゃわかる…!ほんの一瞬なのに永遠に感じるあのドキドキ、文字通りの"時が止まった"体験を短歌と物語の両方で味わえる構成が天才すぎるよ…!! 二人とも照れてるけど確実に両想いになってる感じが尊くて、公園から帰る道すがら世界が違って見える描写に完全にノックアウトされた…!!また明日って言えるのが楽しみになるって、恋愛の醍醐味そのものだよね🌸 次話も絶対読みます!待ちきれないよ〜!!✨