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第12話(最終回)
最終章 朝は、まだ静かで朝の光が、カーテンの隙間から差し込んでくる。
「……朝?」
ゆっくり瞬きをして、
僕――緑谷いずくは、天井を見上げた。
いつもと違う。
部屋が、少しだけ広く感じる。
……いや、違う。
人の気配が、近い。
「起きたか」
低く落ち着いた声。
視線を向けると、轟が窓際に立っていた。
「焦凍……」
「まだ早い。もう少し寝ていてもいい」
その言い方が、
“兄”のときより、柔らかい。
「うるせぇ、起きてんのバレたなら起きろ」
反対側から聞こえた声に、思わず笑ってしまう。
「かっちゃん……」
爆豪は腕を組んで、壁にもたれていた。
でも、目線はちゃんと僕を確認している。
「……おはよう」
そう言うと、
爆豪は一瞬だけ視線を逸らした。
「……あぁ」
その短さが、
どこか照れくさい。
「おはよー! いずく!」
明るい声と一緒に、
上鳴がドアのところから顔を出す。
「朝メシどうする? 食堂行く? それとも――」
「電気、声でかい」
切島が苦笑しながら止める。
「まだ静かにした方がいいだろ」
「え、俺うるさかった?」
「自覚なしかよ」
そのやり取りが、
あまりにも自然で。
胸の奥が、じんわり温かくなる。
(……あぁ)
これは、夢じゃない。
昨日。
たくさん話して、
たくさん悩んで、
簡単な答えじゃない形を選んだ。
誰か一人を手放すんじゃなくて、
誰か一人に押し付けるんじゃなくて。
一緒に歩く、という選択。
「……ねぇ」
ベッドから起き上がって、
僕は4人を見た。
「昨日のこと……後悔してない?」
一瞬、間が空く。
最初に答えたのは、切島だった。
「後悔するなら、選ばねぇよ」
真っ直ぐで、迷いがない。
上鳴が肩をすくめる。
「正直、簡単じゃねーけどさ」
「いずくが笑ってるなら、アリ」
爆豪は鼻で笑った。
「後悔する暇あったら」
「強くなって、離れねぇ方が建設的だろ」
最後に、轟。
「……俺は」
「今が、一番落ち着いている」
その言葉に、
胸がきゅっとなる。
「そっか……」
小さく笑うと、
切島が言った。
「なぁ、いずく」
「なに?」
「今日からは」
「“気を使いすぎる”の禁止な」
上鳴が頷く。
「そうそう」
「我慢して平気なフリするの、一番ダメ」
爆豪が低く言う。
「嫌なもんは嫌って言え」
「俺らは……聞く」
轟が、静かに続けた。
「それが、この関係の条件だ」
条件。
でも、それは縛りじゃなくて――
支え合うための約束だ。
「……うん」
強く、頷いた。
「ありがとう」
そう言うと、
上鳴が笑った。
「よし、じゃあ改めて!」
切島も笑う。
「新生活一日目だな!」
爆豪は小さく舌打ち。
「騒ぐな」
轟は、窓を開けた。
朝の風が、部屋に入ってくる。
並んで歩く廊下。
5人分の足音。
まだ不安はある。
ぶつかる日も、きっと来る。
でも。
(ひとりじゃない)
それだけで、
前に進める気がした。
「……行こう」
僕が言うと、
誰も否定しなかった。
新しい生活は、
特別じゃなくて、静かで。
それでも確かに――
ここから始まる。