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「これ、ハンカチ。」
顔を上げると、そこにはハンカチを差し出す男がいた。
「…先生、」
「ほら、受け取れって」
「…」
「しょうがないな、」
先生、、木村は困った顔をして笑った。そして
ハンカチで僕の頬を拭いはじめた。
「それにしても、こんな所にいたんだな。そりゃあ見つからないわ。」
「……?」
「朝、見かけたのにいなかったから探してたんだ。ちょうど授業もなかったし」
木村は微笑んでいた。
「……なんで、」
「ん?ああ。そりゃあ自分の生徒が居なくなったら探すだろ」
「…」
「めちゃくちゃ探したんだからな?」
「そう、ですか。」
そう言って僕は先生から離れ、立ち上がった。
「お、ちょっと落ち着いた?」
頷くと、木村はほっとしたような顔をした。
そして立ち上がると、ハンカチをポケットにしまい僕の隣のフェンスにもたれた。
そして少し間を開け、
「言いたくないなら言わなくていいが、なんで泣いてたんだ?」
と聞いてきた。
僕は笑顔で答えた。
「言いたくありません。」
「そんなストレートに、、ふはっ」
木村が笑った。
だから僕も笑った。
「そういえば、教室で喧嘩してた奴らを止めたんだが、アレはやばかった。あの高崎があんなふうに怒るんだな、、気配だけで殺されそうだった。」
「でも、止められたんですね」
「ああ。俺も高校のときは結構ヤンチャしてたからなぁ」
木村は、新任の先生で生徒と仲がよく、結構人気がある。見た目はどちらかと言うとホストっぽい。
「なあ、及川」
「何ですか」
「このクラスを見てきて、あの高崎があんなに食いつく事なんて俺は1つしかないと思うんだ。」
「?」
「お前、昨日佐々木と何かあったのか?」
「……」
「これは先生も気になる。個人的に。」
「…別に。」
「そうか?まあいい。お前この後どうするんだ?」
「帰ります」
「え、流石にそれは」
「僕、勉強好きじゃないので」
「嫌いとは言わないんだな。だが、先生の前でそう言ったのは間違いだったな。」
「え?」
「教師が、授業サボろうとする生徒を見逃すと思うか?」
確かに。
僕はそっとカバンを取り、 ダッシュで逃げ出した。
「おい、まて!!」
先生が追いかけてきた。
後ろを振り返らず急いで足を動かす。
「ぐぇっ」
襟を掴まれた。
「はぁ、お前なぁあ」
「っ…」
捕まった。速すぎないか?
「捕まえた。はは、まだまだだな。それじゃあ付いてきて貰うぞ。」
木村は楽しそうに言うと、僕の手首を掴み歩きだした。
コメント
5件
ゆきの足が遅いのか、先生が速すぎるのか…どっちだと思います?笑