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こちらの作品はirxsのnmmn作品となっております
上記単語に見覚えのない方、意味を知らない方は
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ご本人様とは全く関係ありません
Prologueだけ投稿したのにも関わらず、
いいねがいっぱい……。ありがたい限りです……
自分の首を絞めることは百も承知ですが、
早めの1話投稿です。
Day1 雨宿りと猫
みなさんの周りに猫みたいな人っていますか?
猫は、可愛くて愛らしくて、寂しがり屋さんで。
いろんな意味で最高なのかもしれませんね。
ほら、例えば、
こんな一面が見れちゃったり……なんてね
あんのクソ上司、
仕事の押し付ける量、間違っとるやろ?
確かに連日熱で休んだけどさ。
やからって、全部俺に回ってくんのは、
ちゃうやろ。
おかげで23時過ぎとるんやけど。
暖房の切れたフロアで残業して、
凍え死ぬかと思った。
しかも、駅から出た瞬間、
雨まで降ってきよった。
はぁ、今日は何から何まで最悪すぎや……。
そう思いながら、歩いていた帰り道。
俺は、街灯の下にひとつの影を見つけた。
なんや、あれ……?
目を凝らすと、それは
制服を着た、おそらく高校生。
雨をしのげるものがないのか、
ブレザーの上からでもわかるほど、
肩をすくめて、しゃがみ込んでいる。
雨で濡れ、重くなった布が
体に張り付いていて、
足元には水たまりができている。
声をかけるか、一瞬迷った。
でも、その姿が
昔の自分と、
不運すぎる今の自分と
妙に重なってしまって、
気づけば声をかけていた。
「大丈夫か」
自分でも驚くくらい、低くて、
事務的な声には、なってしまったが。
少し間があって、
影がこちらを睨むように見上げてくる。
「……別に」
声は掠れていた。
濡れているのに、立ち上がろうとしない。
そして、寒さからか、唇の色が少し悪い。
「家は?」
聞いた瞬間、
しまった、と思ったが、
放った言葉はもう取り戻せない。
そいつは、どこか遠くを見て、
諦めたように言った。
「ない、追い出された」
その声が、あまりにも大人びていて、
世の中の理不尽を
もう受け入れてしまってたようで。
「家、来るか?」
考えるより先に
そんな言葉が口から出ていた。
それから1週間。
俺は、あの少年――ないこと生活している。
拾ったはずなのに、
いつの間にか『同居』という呼び方のほうが
しっくりくる距離になっていた。
ないこ曰く、
部屋は一応、探しているらしいが、
この頃、物価高の現代。
どこも家賃が高くて、
条件に合う物件が見つからないのだそう。
「見つかったら、すぐ出ていく」
そう言って、
あくまでも仮住まいを強調するのも
いかにもないこらしい。
それまでの間、泊めさせてほしい。
かわりに、家事は全部俺がする。
それが、ないこの出した条件だった。
正直、
その条件を出された時点で、
答えは決まっていた。
家事が壊滅的に苦手な俺は
少し考えるふりをしてから、
ふたつ返事で了承した。
たぶん、
俺の方が先に折れていたんやと思う。
その証拠みたいに
「まろ、これ教えて」
今だって、
宿題片手に俺のところへ
当然のようにやってくる。
「そう、そこまではできてる。
で、このあとはこの公式に当てはめたら
解ける」
「……それでやってできなかった」
「え?そんなわけあらへん……って、
ないこ、ここ計算ミスしとる」
そう言うと、
ないこは少しだけ眉を寄せて、
不満そうにペンを走らせた。
どうやら
できなかったと思い込んでいた問題は、
計算を間違えただけやったらしい。
答えにに丸がつくと、
ぱたんと冊子を閉じた。
その仕草を見て、頬がゆるむ。
「よく頑張ったな」
と、わしゃわしゃ頭を撫でると、
「うるさい」
と言いながら、
すぐに手を跳ね除けられた。
最初は、
必要最低限のことしか喋らんかった。
聞かれたことにだけ答えて、
それ以上は踏み込ませないタイプで。
それが今は、
頭を撫でられるくらいの距離まで、
近くなったらしい。
まぁ、
撫でさせてくれる気は
まだなさそうやけどな。
「よし、ないこ。
風呂入って、寝るぞ」
そう言うと、ないこは渋々腰を上げた。
ないこは、風呂は嫌いじゃないらしい。
ただ、入るとやたらに長い。
「ないこ、まだ?」
「今出る」
そう聞いて、
体感15分は経った気がする。
もう一度呼びに行こうか、
そう思った、そのタイミングで。
洗面所の方から、
足音がして、
髪だけ拭いたないこが姿を現した。
そのまま、どかっとソファに座り、
乾かす気はまるでなさそうだ。
「ないこ、ドライヤー」
「やんない」
「風邪引くぞ」
「平気だし」
そう言って動かんから、
仕方なくコンセントを引っ張ると
「……やめて」
小さくそう言われた。
嫌そう、というより
困っているみたいな顔で。
やめてと言われても、
風邪引かれたら困るし、
廊下やソファが濡れるのも嫌や。
「じっとしとき」
半ば強引に
ドライヤーの電源を入れた瞬間、
ないこは条件反射みたいに
ソファから立ち上がった。
「やめてって言ったじゃん!」
耳を押さえて、叫ぶあたり、
音と距離……あと、熱も
ドライヤーのすべての要素が苦手なんだろう。
「なら、自分でかけぇや」
「やだ」
「じゃあ、かけるからこっち来て」
「それもやだ」
「やだやだって、子どもじゃないんやから」
「17歳は立派な子どもです〜」
間延びした声でそう言い返されて、
思わずため息が出る。
「17歳は立派な高校生や」
そう言い返すと、
ないこは一瞬だけ口をつぐんで、
目線をそらした。
「ほら」
ソファを叩いて言うと、
ないこは小さく息をついて、
観念したように腰を下ろした。
風量を一番弱く、
そして、
温風と冷風が交互に切り替わる設定にする。
近づきすぎんように、
距離を測りながら、
そっとドライヤーを向けた。
ちらりと、ないこの表情を窺う。
目を細めて、
さっきまでの警戒心が嘘みたいに、
気持ちよさそうな顔をしている。
「ふはっ、猫やん」
思わず零れた声に、
ないこは何も言わず、
じっとこちらを睨んだ。
その表情と、
音に敏感で、
距離を詰められるのは苦手なくせに、
心地良いと分かれば大人しくなるところ。
今までの動作が全部重なって、
俺の中で、
ようやく腑に落ちた。
ああ、
こいつはほんまに、
猫みたいなやつなんやな。
ドライヤーをかけ終わると、
わずかに間を置いてから、
小さく
「……ありがと」
そう呟いてから、
布団に潜り込んでいった。
これが、
ここ1週間、ずっと続いている。
もう、
黙ってドライヤーをかけられてばいいのに、
毎回毎回、同じやり取りをする。
それもきっと
警戒心の強い猫なりの、
慣れ方なんやろうな。
コメント
1件
ツンツンした桃さんをあまり見たことがないので新鮮です…✨✨ ドライヤーのやり取りが目に見えて想像できてなんだか微笑ましかったです…😖💘 猫というと青さんの方を思い浮かんでしまいますが桃さんも可愛い…𐔌ᵔ ܸ . .ᵔ ꣓ 読んでいて癒しでしかなかったですっっ🫶🏻︎💕︎︎