運び屋

列に並んだ女性たちは、順番にランウェイに向かって歩き始めた。ランウェイは赤いカーペットが敷かれ、両側には視聴者の反応が表示される大きなモニターが設置されている。参加者がランウェイを歩くたびに、画面上には色とりどりのエフェクトが飛び交い、まるで視聴者の評価をリアルタイムで反映しているかのようだった。

最初にランウェイに立ったのは、完璧に女性らしく装い、堂々とした姿勢で歩く一人の女性だった。彼女が一歩一歩進むたびに、モニターにはピンクや赤のエフェクトが花火のように舞い上がる。画面は彼女の女性らしさを称賛する色で染まり、彼女がターンしてランウェイを戻るときには、視聴者の歓声が遠くから聞こえてくるようだった。

次々とランウェイを歩く参加者たち。女性らしい服装や動きを心がけた者たちは、赤やピンクのエフェクトに包まれていたが、多くの参加者はそうはいかなかった。ぎこちない動きや男性的な仕草が目立つ者たちがランウェイに上がると、画面はたちまち青や緑のエフェクトで染まり、冷たい反応を示す。視聴者が投票しているのか、まるで彼らの期待に応えられなかったことを示すように、画面は男性的な色で満ちていく。

「くそ、こんなはずじゃ…」

一部の参加者は青や緑のエフェクトに落胆し、ランウェイから戻るとそのままうつむいて去って行った。彼らの表情には落胆と恥じらいが浮かんでいた。

そして、とうとう彼の番がやってきた。係員の合図で、彼は深呼吸をしながら一歩前に出た。足元のハイヒールに気をつけながら、緊張で固まった体を何とか動かそうとする。心臓が鼓動を速め、全身が汗ばんでいるのがわかる。

「大丈夫、大丈夫だ…」

自分に言い聞かせるように呟き、彼はゆっくりとランウェイに足を踏み入れた。照明の光が強烈に彼を照らし出し、周囲の視線がすべて自分に集まるのを感じる。何とか笑顔を作ろうとするが、それがぎこちない表情にしかならないことに気づき、すぐにやめた。

彼が歩みを進めると、モニターにはまず赤いエフェクトがわずかに現れた。しかし、彼の動きがぎこちなくなると、次第に青や緑のエフェクトが画面に溢れ始めた。それはまるで、視聴者が彼の内面に隠された男性らしさを感じ取っているかのようだった。彼の足が止まりそうになるのを必死でこらえ、何とかターンを決めて戻ろうとしたが、画面の青と緑のエフェクトがますます激しく舞い踊る。

「こんなはずじゃない…俺は…」

心の中で叫びながら、彼は震える足でランウェイを後にした。視線が刺さるように感じられ、恥ずかしさと恐怖が彼を襲う。再び列に戻ると、彼の後ろに並んでいたTシャツに野球帽姿の女性が目に入った。彼女は不安そうに、しかしどこか毅然とした表情で彼を見つめていた。

「次は、あなたの番です。」

係員の声が彼女に向けられ、彼女は小さく頷くとランウェイに向かって歩き出した。彼女がどのような反応を受けるのか、彼は見守るしかなかった。