テラーノベル
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友人Aが死んだ。
その報せを聞いたのは午後五時半だった。
なんとなく、僕はAの標本を暫く家で保管することにした。
その標本は、とてもとても丁寧に保管されていた。今にも動き出しそうなほど綺麗な状態で。
そしてそれは、ギョッとする程美しい琥珀色を輝かせていた。
彼奴の琥珀色の瞳ももう見られないのか。
そう思うと、本当に、本当にすべて終わってしまった感じがした。
その日の夕食は砂の味がした。
ジャリジャリとした感触が喉の奥にへばりつき、嗚咽すらでなかった。
書斎でAの標本を眺めていると、何かの音が聞こえる事に気がついた。
標本を耳に近づけてみると、死んだ筈のAの声がした。
「聞こえるか?親友。」
軽快に響く声は、間違いなくAの声だった。
「お前、死んだんじゃなかったか、」
「まぁ、そうとも言うかな。」
少し寂しそうに言った。
「それはそうと、明日の午前0時、広場のベンチで待ってるよ。」
「は?ちょっと、待てよ、お前は死んだ筈だろ…。」
僕の問いに返事は返ってこなかった。
言われた通り、0時に広場のベンチに向かうと死んだ筈の彼奴の姿があった。
「お前、生きて…!!」
「残念ながら、生きてはいない。」
笑っているのに、表情は暗い。
「は…?じゃあ、なんなんだよ、お前は、」
「俺は、お前に頼みがあるんだ。」
「頼み?わざわざそんなことがあるのか?」
「ああ、あるよ。」
「もう一度、お前が持っているあの標本を見せてくれないか?」
「元々、お前のだったやつか。分かった。」
「少し待っていてくれるか?」
「ああ、勿論。相棒とまたあれを見れるなんて、嬉しいよ。」
「…行ってくるよ。」
家に戻ると、標本がいつにもまして琥珀色を輝かせていた。
「お、相棒。持ってきてくれたんだな。」
Aニコッと笑った。
なんだか、その顔が妙に懐かしくて、温かかった。
「これで、良いんだよな。」
「ああ!!まさにこれだ。」
「懐かしいな、昔もこんなふうに見たよな。」
「ああ、あの時か。お前が何故か泥だらけになって持ってきたんだっけ。」
「ふっ!!ハハハハハッ!!まだ覚えてたのかよ!!」
「ああ、なんとも印象的だったからな。そりゃあ、もう忘れられないね。」
懐かしい思い出話をするうちに、太陽が昇り始めた。
「おっと、それじゃあもう一つだけ。頼まれてくれるか?」
「ああ、相棒の頼みだからな。何でも聞くよ。」
「お前の家にある、本を、持ってきてくれないか。」
「勿論、お前の書いたやつな!!」
「、ああ。分かった、よ。」
そこに彼奴は居なかった。
時間はあまりかかっていないはずだろ。
そうだ、そうだった、楽しい時間はあっという間に過ぎるのがテンプレだもんな。
でもさ、お前は、酷いな。
死んだ筈の友人がいきなり標本を通してベンチで待ってるとか言って、お前の頼みを聞いたらこれだぜ?
「本当、酷いよ。」
そこには、羽が取れた標本だけが落ちていた。
それは、いつにもまして、輝きが小さかった。
まるで、魂が抜けたように。
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