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「って感じで今って訳!何か質問ある?」
守がいつものように明るく言うと、皇后崎はふるふると首を横に振った。
背中合わせなので守の顔は見えないが、まだどこか寂しさを纏っている。
皇后崎が口を開いた。
「…まだ言えないって言ってただろ。何で言う気になったんだ?」
守はその問いに少し目を大きく開き、少し考えてから言った。
「どうせ話さなければいけないし…」
守は少し笑った。
「君には、妹が懐いているからね」
皇后崎は『じんくん!』と子犬のように走ってくるあの少女を思い浮かべた。
すると、重い鉄の扉をノックする音が聞こえる。
ドアは皇后崎の正面。つまり、守のちょうど後ろなので見えにくい。
守は少し堅い声で皇后崎の名前を呼んだ。
「俺が応答するから、ドアの方見てて」
守は少し後ろを向きながらドアの向こうに呼び掛けた。
「誰でしょうか」
「守、一緒に拐われたガキは無事か。後、罠とかはあるか」
(あ、あの人か)
素直に言われた通り辺りを見回し、「何も無しだよ」と答える。
すると、少し経ってから扉が大きな音を立てて斬られた。
「無様だな?愚妹」
鼻で笑いながら入ってきた真澄に、守は笑い返した。
「真澄兄、久し振りに会う妹に愚妹は無いってば」
すぐに真澄と薫が各々守と皇后崎の拘束を解き、解放する。
皇后崎は少女達が心配なのか、すぐに部屋から出ようとして真澄に止められた。
「時間が無え。子供が人質にされてんだ、すぐ行かねぇとやばい」
焦りを滲ませて言う皇后崎に、真澄は冷たく返す。
「子供の顔、知らねぇんだろ? 調べれば済む。分かったらお前は…」
「時間が無えって言ってんだろッ! 」
真澄に掴みかかろうとする皇后崎を制しながら、守は少し呆れながらやり取りの行く末を見守った。
(素直に『ガキに危ない真似させられるか!』って言えばいいのに)
うちの『お兄ちゃん』はつくづく言葉が足りない。
「血走ってんな。冷静さを保てないやつはすぐ死ぬぜ?」
ほら、言っている事は正論ではあるが、もう少し言い方を考えてほしい。
昔から何故そんな 所だけ変わらないのか。
呆れながら無陀野の方を見ると、「戻り次第話を聞かせろ」と皇后崎に言った。
「約束できるなら、俺と一緒に行く事を許す」
真澄はそれに青筋を立てたが、無陀野はそれに臆すること無く「どうせ行かせるまで話さない」と言い返した。
「桃華、桃と遭遇したときに頼めるか。海、四季、お前達も来い。皇后崎が先走ったらお前達が止めろ」
「ちょっと待って、姉さんは…?」
「守は副担任だろう。他の奴等を見る」
一通り今後の方向性が決まったところで、守が手をあげた。
皆が守の方を見て、すぐに「あ、しまった」と言わんばかりに目をそらす。
「服くれない?今上半身マッパなんだけど」
守は本来女性であれば膨らみがある筈の平坦な部分をヴィーナスの誕生のように隠し、乾いた笑いを浮かべている。
腹と腕に傷跡が残ってしまっている上半身は守の言う通り真っ裸で、長い髪で大事な部分は隠されているが、それでも一応女ではあるので羞恥心が出てくる。
そんな守の隣をせっせと上着を持った桃華が通りかかった。
「桃華、それお姉ちゃんに?」
「いや、じんくんだよ?」
「お姉ちゃんは無視か」
ふるふると首を横に振る桃華をじとりと睨み、守は「誰か上着無い~?」と呼び掛ける。
遊摺部が思い出したように偵察部隊の上着を渡し、守はすぐにそれを着た。
チャックを閉めながら守は桃華に尋ねる。
「桃華、『カラーボール』持ってる?」
桃華は元気に「うん!」と答え、鞄から手のひらサイズのピンクのボールを取り出した。
守はそれを確認すると四季と皇后崎の頭を撫で回し、言った。
「妹達をよろしくね」
四季達は突然の事に目を丸くしていたが、こくりと頷いて返事をした。
「当然だ」
「ぜってぇ守る!」
守は「心強いねぇ」と笑うと、「いってらっしゃい」と手を振った。
こんにちは作者です。この度、わたくしインフルやらかしました。どこから貰ってきたのか心当たりしかないです。後、検査の鼻に綿棒ぶっ挿すやつ。あれ地味に痛くないです? まあ、そんなことはおいておきまして。
いつもブックマーク、いいね、ありがとうございます。これからも読んでいただけると幸いです。