「僕は仮病なんて使ってません……」
「すぐバレる嘘をつきやがって!」
父親は持参してきた非接触式の体温計を僕の額の前でかざした。
「ほら見ろ。体温40℃。仮病じゃねえか! えっ。40℃?」
どうやら殺されずにすんだようだ。困惑する父親に代わって、彼女が騒ぎ出した。
「どうしてボクが看護してたのに夏梅の熱が上がったんだろう?」
それはね、僕の熱の上がるようなことばかり君がするからだよ。
でもそう言い返す元気なんてなくて、僕はまたベッドに臥せって眠ってしまった。
次に目を覚ますと、午後三時すぎだった。彼女の両親の姿はなく、彼女だけがベッド脇の椅子に腰掛けて本を読んでいた。熱を測ると38℃に下がっていた。
「君の両親はもう怒ってない?」
「大丈夫だ。これからはちゃんと避妊すると約束したら、苦虫をかみつぶしたような顔で帰っていった」
「それは内心めちゃくちゃ怒ってるような気がするんだけど……」
僕の熱が下がって、それからまもなく安心した顔で彼女も帰っていった。翌朝にはもう平熱に戻り僕は登校したけど、彼女は欠席していた。SNSで連絡があり、39℃の熱が出たという。
誰かに移すと風邪が治るというのは、やっぱり真実だったのかもしれない。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!