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クラゲ
23
mg.side
天使さんの姿が雲の向こうに消えていくのを見届けてからも、
胸のざわめきは消えなかった。
握られた手は、柔らかくて温かかった。
「……またね、天使さん」
最後にそう言った自分の声が、まだ耳の奥に残っている。
本当は、もっと言いたいことがあった。
でも言えなかった。
目黒蓮。
俺の名前を名乗った瞬間、
あの子がふわっと笑ったのが忘れられない。
あんなふうに微笑まれたの、いつぶりだろう。
「……阿部亮平、か」
名前を呼んでみようとして、喉の奥で止まった。
俺は堕ちたんだ。理由なんて思い出したくもない。
羽が黒く染まったときから周りの態度も冷たくなっているのに気づいた。
怯え、軽蔑するような視線。俺に向ける周りの目が怖くなった。
なのに――
あの天使は、平等に見てくれる。
あのとき天使さんが俯いた俺を見て
そっと近づいてきた瞬間――
胸の奥が、痛いような。温かいような。
味わったことのない感覚でいっぱいになった。
ab『誰かのために行動できる。それってとっても素敵なことだよ』
あの言葉。
少し長めの前髪が風で揺れて、
光に当たると、透けるくらいに柔らかくて。
【守りたい】って思った。
「……なんで、こんなに覚えてるんだよ」
自分でも驚くくらい、細かいところまで思い出せる。
白い羽の先が光を受けてきらきらして、その下で、少し照れたように笑う顔があって。
天使って、もっと遠い存在だといつからか決めつけていたんだ。
あの日、確かに手を伸ばした。
気づいたら助けてた。
ただ、衝動的に羽が動いて。放っておけなかったんだ。
ab『また、会いに来てもいいかな?』
あの子を傷つけてしまうかもしれない。
俺のせいで。危ない目に合わせたら…そう思ったはずなのに
「……うん。」
気づいたら、返事してた。
【離れたくない】なんて、思ってしまって――
あいつらの声が聞こえた瞬間、
反射的にその子を隠した。
見つかったらなにがあるかわからない。
天使と話してるなんて知られたら…。
「今日はもう帰ったほうがいい…またね、『天使さん』」
いつか――
その名前を呼べる日が来たら
「……また、会える…かな。」
灰色の風が羽を揺らす。
その風が、少しだけ温かく感じて。
気づけば、天使さんが帰っていった方向を見ていた。
fin.
コメント
5件

🖤はなぜ羽がそうなったのか… 2人の関係が良い方向に 向かったら良いな🥰
# 感想 天使さん視点の温かさと、目黒くん視点の切なさが重なって、胸がぎゅーってなったよ…!😭💕 「守りたい」って思う感覚、堕ちたあともちゃんと人間らしい心を持ってる目黒くんが健気すぎて泣ける。 「天使さん」って呼び合う距離感、すごくエモい…ふたりの関係、どう育っていくのかな?次回が待ちきれない〜!🌸