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足湯の縁に並んで腰かけると、そろそろとワンピースの裾をまくった。


たったそれだけのことなのに、いつもはパンツスタイルばかりなこともあって、素足を出すことがやけに恥ずかしく思える。


喉元をせり上がってくる恥ずかしさをこらえて、膝のあたりまで上げた裾を、両手でギュッと握り締めていると、


「ほら、これを掛けているといい」


彼が耳元に唇を寄せて言い、シャツの胸ポケットから抜いた白いハンカチを、私にスッと差し出した。


「あっ、ありがとうございます。だけどどうしてわかって……」何も自分からは話していないのに、彼が気持ちを汲んでくれたことが、とても不思議な気がした。


「強く握った手と、赤くなった耳だ。……わかってやれなくて、悪かったな」


「悪かっただなんて……。気づいてくれたことが、嬉しいくらいですから……」


渡されたハンカチを膝に広げて掛けながら、はにかんで口にすると、


「気づかないわけがないだろう。君にこんなにも心を奪われているのに」


彼の甘い囁きに包まれた。


「……私、あなたを好きになって、本当によかったです」


込み上げる想いを素直に伝えると、


「ああ、僕もだ。君を好きになって、よかった」


同じ想いが返されて、足元から伝わるお湯の温かみとともに、彼の愛情の温かさが体中ヘ満たされていくのを感じた──。


この旅行が、彼との幸せな思い出のたくさん詰まった忘れられないものになったのは、言うまでもなかった──。




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