TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する


~~ 遡ること約7年と数ヶ月前


由宇子が大倉将康との離婚届を出し

新居に移ってから半年程経った頃のこと ~~ ④



嫁に来ないかぁ~ぼくのところへ~。


なんか伯母の家を出て自宅へ戻ってからこの古い歌詞が

頭の中をグルグルしているんだけどぉ~。



ふむふむ……薫と結婚かぁ~。

考えた事もなかったけど、案外いいんじゃないって思い始めてる。



一番の理由は薫なら娘への性暴力に対する心配だとか

息子へのサンドバックにするような生き死にに関わるような

暴力の心配もほぼ100%心配する必要がないから。


そして浮気の心配もない。

薫はそういうことを、しないであろうという特性個性

持っているのだ。



素人判断だし、どんなことも100%という数字を出すのは

間違っていると思うけど、他のどんな男性より可能性が低いことは

私の中では断言できる。



小さな頃から子供たちと薫は触れ合う機会があって仲がいいし、

今なら子供たちも小さくて父親と思って成長していくだろう。


子供たちが物心ついた頃から実の父親ではないと教えておいてもいいし。


父親でなくても血縁はあるわけで、家族して一緒に仲良く暮らしていこうね

……というスタンスでもいいと思う。



なんか、肝心の薫から何も聞いていないのに独りで妄想に勤しんでいる

自分に気付いて、なんか笑える。



伯母や伯父はそんな風に考えているらしいけれど薫はどうなんだろう。


44-2



6才頃に伯母の家でお風呂に入ってた記憶が蘇った。

3才の薫と一緒に入ってるシーンが記憶の彼方からやってきた。


次は母と私、伯母と薫の4人で動物園に行った時のことなんかも

思い出された。


薫と一緒の写真も随分撮ってもらってたなぁ~。


昔何度か広げて見てたアルバムに可愛くてちっちゃい薫がたくさん

あったことも……次から次へと驚くほど薫の過去の目にしていた映像が

浮かんでは消えていく。


中学生になる頃まで、ほんとにきょうだいのように過ごしてたんだ、

私たちって。



頻繁ではなくなったけれど、結局中学生以降も親戚なので、必ず祖父母の家に集った折に会ってたし母と伯母、そして祖父母の家が近所だったことで

時々互いに顔は合わせてるよね。



薫が仕事し始めたて、私が結婚して子育てと仕事に忙殺されてからよね

あまり会わなくなってしまったのは。



正直言うと、結婚後薫のことを特に思い出したりしたことはなかった。

わたしが日々見つめていたのは元夫であり子供たちだったから。



そんな薄情な女と結婚?

まさかね。

ないない、やっぱりないわぁ~。


妄想して浮かれてたけど最後はちゃんと大人な判断ができた自分を

褒めてやりたい。




~~ 遡ること約7年と数ヶ月前


由宇子が大倉将康との離婚届を出し

新居に移ってから半年程経った頃のこと ~~ ④



私はそんな風にして一度は楽観的な妄想をしたものの我に返り、

やっぱり薫との結婚には無理があると結論付け、仕事と子育てに

集中する日々を送った。



伯母の家に呼ばれて行った日から3週間ほど経った頃だったろうか

伯母の洋子ちゃんから遊びに来ない? とお誘いがあった。



子供たちも連れて来なさい、子守してあげるからと。

子守してくれるなんて言われた日には、行かないわけにいかない。


子育ては楽しくて充実しているけれど、私はスーパーマンじゃないから

独りになりたいことだってある。


遊びに行くとこの日は薫も伯父も家にいて、ふたりで交代ごうたいで

まだまだ小さくて2歳児の足元のおぼつかない智宏を抱いてくれた。


それを横で羨ましそうに見ていた美誠に気付いて

薫が美誠のことも抱っこしてくれた。



いつもは私の父にも可愛がってもらってはいるけれど

父もまだまだ現役で働いているので頻繁に抱いてもらえる環境でもなくて

男の人の腕に抱かれることはめったにないから、ものすごく2人とも

うれしそうだ。


45-2



お茶の支度に台所へ呼ばれた。


「ねぇ、薫とのこと……どう?」


「え~と、考えたけどやっぱり無理だよ、洋子ちゃん」



「薫とじゃあ、やっぱり駄目かぁ~。そんな気はしてたけどさン」

洋子ちゃんが元気なくしょぼくれ感いっぱいに言う。


「ちっ、ちがうよぉ。

逆ぎゃく。


私とじゃぁ、薫がかわいそうだよ」



「薫はね、人の機微っていうのか、とにかく相手の心情の細々した

ところまで汲み取る能力に欠けてるし、私が思うに女性ひと

好きになるっていう感情も乏しんじゃないかと思ってるの。

モテるから確かに女の子はいっぱい群がって来るにはくるんだけど

薫が気持ちを返せないから皆去っていくんだよね。


ほらっ、恋する乙女はさ、いろいろと相手にたくさん求めるじゃない?

薫はそういうの駄目だから」



『パラレル』― One Way ―

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

1

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚