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「クレハとフィオナ嬢の確執について……我々はどう対処すべきかずっと頭を悩ませていました。クレハが心を痛めてしまうことを恐れて、真実を伝えることに二の足を踏んでいたのです」


「リズちゃんの言う通り、環境が変わったことでクレハの考え方にも変化が現れたんだろう。あいつも成長しているってことだな」


姉の話で傷ついていないわけではないだろう。でも、クレハはその事実を受け止めた上で対抗してみせると言い放ったのだという。

クレハの宣言を聞いて俺が最初に感じたのは喜び。それに遅れて心配と……どこまでも自分本位で嫌気がさす。婚約を解消したいと言われなかったのが嬉しかったのだ。リズの前で強がった末に出た発言かもしれないのに……

リズは大丈夫だと言うけれど、やはりクレハとちゃんと会話をすべきだ。


「リズ、クレハが目を覚ましたら伝えてくれるかな。落ちついたら俺とゆっくり話をして欲しいと」


「分かりました。クレハ様も、きっと同じことを考えていらっしゃると思います……」


暴れて驚かせてしまったことを改めて詫びると、リズにはクレハの元に帰って貰った。

リズがいなくなり、部屋には気まずい空気が流れた。その空気を最初に散らしたのはルーイ先生だ。


「レオンー……ほんとにもう大丈夫か? クレハとの話し合い、俺も付いていってやろうか」


「先生のお心遣い痛み入ります。でも、付き添いは結構です。俺はもう平気ですから。それはそうと、セドリック……早く手首の怪我を治療してこい」


「ただの擦り傷です。問題ありません」


「ダメだ。放っておいて化膿したらどうする。今すぐ行け。命令だ」


「……承知致しました」


「セドリック、すまなかったな。それと……ありがとう」


「とんでもありません。私は貴方様のためにやるべき事をしたまでです」


セドリックは一礼して部屋を後にした。残ったのは俺と先生だ。先生にも礼を言わねばならないだろう。物理的に俺を止めていたのはセドリックだが、正気に戻してくれたのは彼なのだ。腰の痛みを顧みずに……


「ルーイ先生もありがとうございました。貴方のおかげで先走った真似をせずに済みました」


「……ほんとにもう大丈夫みたいだな」


「ええ。あの一撃は堪えましたからね」


「そんなに強く叩いてないでしょ!!」


あの時手が出たのは先生も咄嗟のことだったようだ。彼が狼狽えるなんて珍しい。でも、そのおかげで俺の頭は冷えたのだから何にせよ感謝している。


「まあ、とりあえず……クレハの精神面に関しての問題は上手く纏まりそうで良かったんじゃないか。お前が一番心配してたとこだからね」


「諸々の課題は残っていますが、クレハの気持ちさえしっかりしていれば当面は安心できます」


「お前もさぁ……もうちょっと余裕のある態度を心掛けなさいよ。クレハが大事なのは分かるが、事あるごとにプッツンして放電されたら周りは堪ったもんじゃないの。お前の暴走を止められる人間が常に側にいるとは限らないんだからさ」


「はい。それは本当に……申し訳ありませんでした」


先生のお説教が再開してしまう。どうやらまだ俺に対して言い足りなかったようだ。彼に諭されたことは何度もあるけど、今回は特に念入りに叱られてしまった。きっとセドリックを負傷させたからだろう。それを口には出してないけど、相当おかんむりだな……これは。


「レオン!! 俺の話、ちゃんと聞いてる?」


俺に説教できる者など、この国には数えるほどしか存在しない。その中でも先生は特別で唯一無二だ。飾り立てないストレートな物言いだからこそ、彼の言葉は胸に響く。直球過ぎることもあれど、俺たちのことを本気で心配してくれているのが伝わってくるのだ。


「聞いておりますよ。自分の至らなさを痛感していたところです。先生、これからも未熟な俺にご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」


「へっ、あっ……そう? じゃあ、お言葉に甘えて……」


俺の反応に少々戸惑いながらも、先生は話を続行した。先生のこのありがたいお説教は、セドリックが怪我の治療を終えて戻ってくるまで続いたのだった。
















「セドリック……お前、俺の言い付けは守ったのか?」


「守りましたよ! ほら、見て下さい」


セドリックの手首には白い包帯が巻かれていた。治療はちゃんとして貰ったようだな。


「帰ってくるのが遅いと思ったら……怪我してるんだから、お茶は侍女に頼めば良かっただろ」


セドリックは怪我の手当てをするついでに、俺たちのお茶の準備をしていたらしい。場の空気を和ませようと気を使ったんだろう。正直なところ喉は渇いていたので、飲み物は有難いが……


「レオン様、さっきも言いましたが擦り傷なんですよ。手当てが大袈裟なんです。お茶を淹れるくらい、なんてことありません」


配膳ワゴンの上にはティーセットが用意されており、セドリックは怪我の負担を感じさせない鮮やかな手付きでお茶を淹れていく。


「セディ、お菓子は無いの?」


「……クッキーを分けて貰いました。先生、食べ過ぎないで下さいよ」


「分かってる、分かってる。やったー!」


空気は和んだけど……先生は切り替えが早いな。もうさっきの出来事が無かったかのようだ。先生と同じとまではいかずとも、俺もいつまでも凹んではいられない。


「セドリック、俺にも淹れてくれるか?」


「もちろんです」

リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした〜

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