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「絶対!……そんな事しないって」
「待って!めっちゃ意味深な間があったじゃん!」
ニヤリとわざと悪い笑みを浮かべて俺をからかってくる。本当に、どこまでが冗談なのか全然わからない。だいきの瞳の奥が、酔いも相まってか妙に据わっているのが恐ろしかった。
翌朝。重い頭を抱えてオフィスへ入ると、入り口で待ち構えていたかのようにりゅうせいが現れた。
「おはようございます!いつきくん!今日は絶対俺の番ですからね?」
「お、おはよう、りゅうせい。わかってるって……あぁ、昨日飲みすぎたわ。ちょっとまだ気分悪い」
あれから、だいきが仕事以外の話をしなくなったせいで気が緩み、つい飲みすぎた。それもだいきの罠だったのかもしれない。ギリギリ記憶があるうちにタクシーに乗れたことが救いだった。
「えぇ~!じゃあ今日は諦めますぅ。……今日は休肝日ですよ?身体大事にしてくださいね」
「お、おう」
あれ? 意外とあっさり突き放されて拍子抜けした。……うん、まあこれで良かったんだよな。
俺はふらつく足取りでデスクに座り、天を仰ぐ。喉がカラカラだ。冷たい水が飲みたい。
「はい、冷たいお水買ってきました。お返しは2人きりの時……いっぱいちゅうしてください」
耳元でコソッと囁かれ、心臓がゾクゾクと跳ねる。デスクには冷えたペットボトル。今、俺が一番欲しかったやつだ。手を伸ばすと、りゅうせいがデスクに手を置いて、水を押さえつけて取らせてくれない。
「……ちょうだい?」
「ん?」
ニコッと笑うだけで渡してくれない。あぁ、そうか。俺としたことが、完全に忘れていた!
「……お水買ってきてくれてありがとう。……ください?」
再度お願いしても、りゅうせいは首を横に振る。一体、俺に何を求めてるんだよ。
「……お返しの、返事は?」
またか。朝からいい年した男が何のやりとりをしてるんだ。
「……ごめんなさい。自分で買ってきます」
諦めて椅子から立ち上がろうとすると、りゅうせいが俺の肩をぐっと押さえつけてくる。無理やり椅子に封じ込められた格好だ。
「これで、お水最後でした。どうしますか?」
その時、いっちゃんが爽やかな笑顔を振りまきながら歩いてきた。よく来てくれた!俺の救世主、いや、ヒーローだな。
「いつきくんおはようございます!今日、楽しみですね?」
「おはよ、いっちゃん。……助けてくれ」
「りゅうせいもおはよ、ん? 2人、喧嘩でもしてんの?」
いっちゃんが不思議そうに俺とりゅうせいの顔を交互に見る。その件は後で説明するから、とにかく今は!
「あ、いっちゃん、水持ってない? この際、飲み物ならなんでもいいんだけど」
「あ、朝買った水ならあります。飲みかけですけど」
いっちゃんが差し出した水に手を伸ばしかけた、その瞬間だった。背後の気配が、一気に冷え込んだ気がした。