『いい加減学べよ、抵抗したって痛みが帰ってくるだけ…お前がどう足掻こうがどう野垂れ死のうかどうだっていい』
奴はそういうと俺の股間に向かって足を振りかざした
『あ”っ…がぁ”…』
先程まで殴れ蹴られ焼かれ色んなことをしてきたせいで全身が叫びを上げていた体に追い打ちをかけ喉も焼かれた声からは汚い声しか出なかった
まだ俺が実験成功されていない時の話
まだ4歳の歳、何も分からずなぜここに俺はいるのか何故みんな暴力を振るのか分からないそんな歳
唯一家族のような存在でいてくれるミヒャエル・カイザーことミー君
いつも俺に気をかけてくれて助けてくれるミーくん
そんなミーくんも今は自分の部屋に帰り眠っているだろうこの暗闇の夜
この暗闇がどうしても好きになれなかった
夜は綺麗だ、綺麗だがその綺麗さをこの人たちが蹴り散らかして来るのだ
股間に銃を向けて脅してきたり、時には足を折り片耳を引きちぎられたり散々だった
それでも人らは発散が終わったあとに血が出ていることも構わずに自分の物を俺の体に入れ皮膚がちぎれるんじゃないかと言うぐらい奥まで入れ振ってくる
この行為になんの意味があるのか分からないがこの人らは満更でもない顔で出ていく
もちろん怖いし声なんてでない、身を自由に動かせない恐怖、助けてくれない恐怖、なぜ自分なのだという怒り
逃げたいし叫びたいけれど体格差もありそんなことはできない
逃げたとしてもすぐ捕まり今の何倍もの痛みを食らうだろう
そんな行動は今の歳でも十分にわかっている
俺の他に子供たちは沢山いて俺のようなガリガリの子供に壊れかけている子供
たまに豪華な服を着た子供もいる
その人たちはどんな人かは分からないけれどお偉いさんたちの大切な存在なのだろう
1年に一二回施設に関わっているお偉いさんがたがここに来て子供を観察していた
観察と言ってもそんな肩苦しい視線ではなくドロドロと気持ち悪い視線ばかり
そして稀にお気に入りを見つけて買い取られてしまう
買い取られてもここの施設にいることには変わらない
ただ今までの生活とは随分違う豪華な部屋に豪華な服、人目でこの人のものだとわかる見た目をしている
そのため手荒な真似は出来ないが死ななければ何してもいいという決まりがあることも知らないわけない
そんなこともない、ただ研究されているだけの子供ならば何時でも殺されるようなもの。死と隣り合わせだ
そんなのには死んでもごめんだと子供ながらにもそんなことを思って7歳の時一ヶ月後には誕生日だと言う時に施設長に出会った
その日は一年に来る2回目の日
お目当ての子供を見つけるための行事の日だった
それらがあると知ったのも7歳になったばかりの時だった
7歳になるまで実験の日々だっため休むことなどなかった
それで7歳の時成功しまだ続いてはいるものの昔よりかは自由になっただろう過ごし方をしていた
それでも夜のそれは無くならなかったが
ミーくんに会いに行こうと部屋からクッキーを盗みミーくんがいるであろう庭にかけ走っていた時だった
そんな時に奴は現れた
『っ!何やってんだ!クソガキ!』
『…っ!ご、ごめんなさい!』
楽しみにしていたので周りを見ずに走っていたのが悪かったのかぶつかってしまったのだ
目上の人を怒らせると痛い目にあうとわかっているので一生懸命に謝った
その途端奴は顎を掴み殴りかかろうとする手を見て目をギュッとつぶった時
『あ?…可愛い顔してんな、いいな…買ってやるよ』
生意気な口使いだがこれでも30代後半なのだ
突然の告白に頭が混乱して震える手を掴む奴の手を精一杯振りほどこうと身を揺らすがそのような態度が気に食わなかったのか掴んだ手を引っ張っていつの間にか豪華な部屋に来ていた
乱暴に俺の体をベッドに押さえつけ殴ってきた
『ごめんなさっ…やめてっ!やっ!』
泣き喚いても辞めてくれず体に傷をつけてもすぐに治っていく
『…そうか、お前か…』
死なないという意味のわからない実験が成功した物が俺だとわかった途端しゃぶられ遊ばれ…最後まで言わなくても想像がつくだろう
『お前を買ってやる、施設長と呼べ』
『施設長…』
これがやつとのであいだった
そこからは地獄のように呼び出しを喰らい時に男娼をさせられた
買われたせいで豪華な服を着せられて周りの目も一変した
前まで化け物だと人間じゃないだの言ってきた野郎どもも奴のお気に入りとされたその時は媚びを売られたり好き勝手遊ばれたり時には銃で打たれたりミーくんと遊ぶことすらままならなかった
別に辛いと言ったら嘘になるし辛くないと言っても嘘になる
分からなかった、自分自身について
何も分からなかったんだ
そんな気がしてままならなかった
『我慢すんなよ』
『あ、ぇ…?』
『まだ子供なんだぜ?声出せよ』
なんてみーくんから言われれば涙が溢れ下手くそな泣き方で息を詰まらせたり過呼吸になりかけたりもした
それでもミーくんは大丈夫だと、そばにいると言葉をかけてくれた
嬉しかった
安心した
心が少し楽になったような雲の上にいるような
そんな夢見心地だった
「おーい、潔〜?」
「っ!え、なに?」
「さっきからずっと呼んでたよ?大丈夫?」
そうだった、会議をしていたんだ
蜂楽に迷惑かけてしまった
「うん、大丈夫ごめんな」
「ううん!大丈夫なら良かったー!」
「まともに寝れないのなら俺がトントンしてやろうか?おばぶ世一」
「お前まじしね」
最初の頃の溺愛は何処へ…今もまだウザイほどに引っ付いてくるが…
「おい、お前ら。イチャつく暇は俺らにはないことを考えろ。奴らは今この時間でもここに侵入することは遅かれ早かれ来るんだからな」
「す、すみません…」
「あいあい」
怒られてしまった…
今事時間でも俺は狙われている
先程の話によると俺は危険人物認定らしく早く始末しなければならないらしい
なので俺を殺す武器などを作ってるのだと、それを試すために俺が必要らしい
おっかない話だ
気色悪いし、まずそんなところ爆弾で潰してしまえと思ったがそこを潰せば全国の政府に喧嘩を売ることと一緒
売ってしまえば最後、マフィアに勝ち目は無い
なんてったって政府だ、力はこちらの物でも権力などの力で言ったら不利である
1発KOになる可能性も高い
なのでそんな破壊は出来ないだろうと考えていたのだが奴らは壊す気満々だった
怖くねぇのかよ、と思ったが失うものがないのらしい
可哀想すぎる
本当に可哀想
「いいか?ここは今までのとは全然違う、1歩間違えれば日本なんてドカンだ。もしかしたら世界にも影響を及ぼす…潔世一の事だそんなことをしたら死に物狂いで止めにかかるだろう」
嗚呼、俺は止めるよ、そんなことさせない
まず関係ないやつ巻き込もうとするなよ
と、マフィアに言うのはなんだか気が引けるが
「ならばクリーンな殺人で行う、奴らの狙いは潔世一だ。潔世一だけを狙っている、言ってる意味がわかるか?奴らは潔世一以外どうでもいい、だから子供を人質にして要望を出すこともある…だがな奴らはそんなことできない、あれでも政府の力で動いてると言ってもいいからだ。政府がいなきゃ今頃捕まってこんな事起こってない。ここまで言えばわかるだろ?あとはおまえらでやれ」
絵心が言いたいのは政府を潰せば一件落着ということだろう
その通りだ、政府を潰せばあの施設は自然崩壊するだろう
援護もない、金も無くなる
だが政府を潰すなんてそんな簡単じゃない
「お前らわかってるよな?さっさと終わらせるぞ」
凛、かっこいいうんかっけぇけど規模わかってる?
政府だよ?それも結構位が高い
「当たり前だろ」
「合点承知之助!任せてよ!」
「俺をなめんなよ?」
「クソ楽勝」
「仲間を助けるためならお安い御用だ」
皆はなぜ俺にそこまでするのだろうか
仲間だとしてもそこまで出来るのか?前玲央に「好きだから」と言われているのを思い出した
恋愛なんてしたことないから分からないけれど、好きな人のためなら何でもしようと出来るのか
何それ、すげぇかっこいいじゃん
すごく泣きたくなる衝動を抑えて強気な顔で笑ってみせた
その途端待ってましたと言わんばかりに満更でも無い顔をしたながら凛は俺の肩に手を置いて出ていってしまった
昔の俺は厭世(えんせい)のように生きてきただろう
何度も自殺を試みてみただろう
他人、ましてや憎い人に殺されるぐらいなら自分で死んだ方がマシだと
周りの人が死ぬなら俺が死んだ方がマシだと
何度も思い何度も思いとどまった
このまま死んでも行為は変わらない
俺が死んでも何も変わらないからだ
だったらこいつらが死ぬその時まで俺は生きてみようとか他の子供に被害が来て欲しくないと思わずにはいられなかっただろう
こんな俺に優しく振る舞う人達が現れるなんて思わないだろう
俺は自分が憎い、こんなにもしてくれる皆が俺のせいで巻き込まれると思うと心臓が潰れそうだ
けれど俺は彼らから離れたくない
わかっている、俺がここにいるだけでどれだけ犠牲者が増える事など
とっくの昔に理解している
だけど、願うならば傍にいなくたって名前を呼んでくれなくたっていい、ただ1度だけ…1度だけでいい
俺の事を見て欲しいんだ
「っ!…はっ…はっ」
いつの間にか会議が終わって眠っていたのか汗ビシャビシャで起きてしまった
悪夢を見たのだろう、ひとつも覚えていないけれど
夜になればあいつらの声と笑い声が響く
いないはずのヤツらに抑えられたように身動きが取れなくなる時だってあった
「起きた?」
「うわっ…って蜂楽」
「いやー、魘されてる声聞こてたらほおっておけないよねぇ〜」
「!…ごめん」
「なんで謝るのさー!」
グシャグシャと頭を撫でくりまわし頭がグワングワンしてきた
「ねぇ、潔…俺ね潔に出会えて良かった」
急に何を言い出したかと思えば現実逃避するような言い草にドキリとした
「急になんだよ…」
「…俺さ昔初めて出来た友達がさ、俺の目の前で事故にあったんだよね」
驚いた、何も苦労も知らなそうなハッピーボーイのような彼に友を失っていたとは
「その子さ俺の初恋でね…子供特有の将来結婚しようねっていう早すぎる約束したんだよね…その次の日に速度無視の車に轢かれて亡くなっちゃったんだ。その後喪失感でいっぱいいっぱいで何も手に付けなかった」
それはどれだけ辛いだろうか、大切な人がそれも目の前で死に至り簡単に命を落とす
自殺しても可笑しくない事だった
時に人は前を向けと過去を忘れろと言うがそんな無責任な事を言ったってどうしようもない
彼はまだ乗り切れていないのだろう
「俺、たまに思い出して泣いてまだ縋っちゃうんだ…本当はもう乗り越えてなきゃダメなのにさ」
「俺、思うんだよね…別に乗り越えなくてもいいんじゃないかなって。縋ってもいいと思う、蜂楽は蜂楽だ。」
前を向かなくてもいい過去を忘れなくてもいいと俺は思う
ただ自分の中にまだいるのだからそんなに焦らなくてもいいのだと
言ってやりたかった
けれど蜂楽の目の奥は鎖にまとわりついたひまわりのようだった
所謂依存だろう
これは何を問出しても意味が無い
「俺さ、愛してたんだ…大好きだった。けどそれを伝えたことないんだ」
「蜂楽…大丈夫だよ、伝えなくてもちゃんと心ではわかっているはずだから」
無責任な言葉だ、けれど彼には何を言っても無責任になるだろう
だけど、俺は蜂楽が好きだ
だから俺は最後まで背中を撫でてやれる
「うん…そうだね、ごめんね?こんな暗い話して!」
にぱっと効果音がつきそうなぐらい口を開いてニコニコと笑っていた
これがホントの顔なのかは分からないけれど
「いや、大丈夫だけどさ…」
変わり具合にサイコパスなんじゃないかと思えた
「おやすみ、潔」
「…おやすみ」
なぁ、蜂楽
俺はさっき蜂楽に対して何を言っても無駄だと思ったけれど一つだけ確信していることがある
人は必ず困難に乗り越えられるんだ
時間が解決してくれることもある
乗り越えたあとの安心感と苦痛感が襲ってくるのもわかっている
愛する人を失ったのなら乗り越えた時苦しいと思う人もいる
乗り越えたら全て解決では無いんだ
だからさ、蜂楽
何もそんなに苦しい顔で過去の事を語らないで欲しいんだ
本当は乗り越えているんだろ?
けれど乗り越えたという事は彼女の存在に慣れてしまったという証拠
それが嫌だから乗り越えていないと思い込ませているんだろ?
でも裏を返せばちゃんと彼女を愛しているんだ
どれだけ好きな相手が出来ようと彼女以上のものは現れないだろう
それでもいいんだ
例え依存という終わり方でも
十分愛し合っていると俺は思うよ
「グーテンモルゲーン!世一」
「おはよう…ってなにやってんの?」
朝起きた時皆忙しそうに荷物をまとめていた
主に銃などを
「侵入するための準備だ」
「ほへ〜…え?!早くない?!」
「早かれ遅かれ侵入することには変わりないだろ?そんな事も分からないのかー?世一」
「お前どんどん図々しくなりやがって最初のは演技かよしね」
そうかもしれないけれどもうちょっと話し合いとかないのだろうか
てかほんとにうざ苦しくなってきたな
「世一も口が働くようになって〜まぁまぁ…俺を見て学ぶなんて世一にしてはいいじゃない?」
「自意識過剰すぎんだろ」
「口を動かく子うさぎちゃん、手を動かしな」
どうしよう、殴りたい
そんな衝動を俺の拳人殴りで済ませてやった
銃は使えないし、とか言ってナイフも使えない
俺が使えるのはこの体のみ
だとしても銃ひとつは持っていくが
「いっ…!」
紙で指を切ったのか血が出てきた
その時ふと違和感が漂った
いつもならすぐ治るこの傷が少し間を開けて治り始めたのだ
気のせいだと言いたいがどうも気になる
だが今は施設に集中をしなければ
すぐに視点を変え観察した
『なぁ、お前逃げれるのになんで逃げねぇの』
『急にどーしたの?ミーくん』
『どうしたもこうも…お前逃げ道とか知り尽くしてんだろ?ならなんで逃げねぇの?』
『…分からない』
『はぁ?分からないことねぇだろ頭腐ってんのか?』
『なっ!腐ってないもん!』
『はいはい…で、分からないわけじゃないだろ?』
『…逃げたとしても俺に居場所なんてないから』
『…孤児院とかあるだろ』
『俺汚いもん…』
『?汚くないだろ、俺の方がクソ汚い…このボロボロ見えねぇのか?』
『確かに』
『クソ納得すんな』
『ふふっ…でも俺の方が汚いよ』
『…意味わかんねぇ』
たまにこうして過去の記憶が遮ってくる時がある
たわいのない会話とか行為中の叫び声とか
色々だ
俺の唯一はカイザーだけだった
あの時はカイザーは知らなかったから意味わからなかったよな
人生は美しいけれど醜いものだ
侵入2日前
久しぶりに凪とリビングで楽しく過ごしていた
「潔ゲーム弱すぎ」
「仕方ないだろ、やったことなんてないんだから」
元々ゲームに興味が無いという訳でもないがやろうとは思わなかった
昔の俺はサッカー、サッカー、美術とかだったから
絵を描くのは嫌いじゃない
けれど俺にはサッカー一途だ
「なぁ、凪」
「何」
「この前風呂場の時に感謝の言葉を言われたことなんてないとか言ってたよな、あれどういう意味?」
「どういう意味って…そのまんまだけど」
「嫌、なんか…人って何かしら感謝は言われてるだろうからさ」
「…まぁね」
こちらも何かしらあるのだろう
例えば家族に虐待やらなんやらされていたか、家族を失っていたか
それとも生まれた時からこっちの世界なのか
だとしても仲間からも言われないなんてことはあるのだろうか
「潔…なら別に話してもいいかな」
「なんでも聞くよ」
「こういう世界って暗黙のルールとかあるのわかるよね」
「おう」
「その中に感謝、情を湧かないってのがあるんだけど」
「ほへ〜、でも家族とかは?」
「俺の家族もこっちの世界の人達だし」
「家族でもダメなのかよ!」
「うん」
ルール的なのはあるのは知っていたが家族も範囲に含まれるとは知らなかった
「けど子供産んだんだから情湧かないの?」
「湧かないよ、何人も殺してる人達だよ。湧いたら仕事なんてやってけない」
「確かに…」
「でも偶に、恋人に情を抱いても仕事をやってける人がいるんだよね」
「あ、それ知ってる。結局自殺しちゃうやつだよな」
「そう、普通の人なら情を抱いた瞬間人を殺すことに躊躇うからさ、いつもなら1発死刑、それに恋した奴はその恋した相手を殺さなきゃ行けないからね」
なんほどな、だから感謝を言われることに慣れてないのか
1人納得していると疑問が頭をすぎよった
「ん?でもさっきの話は自分が死んでたよ?」
「うん、相手を殺すより自分が死んだ方がいいって言う思考になるんだろうね。愛してた人だからね」
「…悲しいな」
「情が湧いたらこっちの負けみたいなもんだから」
黙ってしまった
この前誘拐された時玲央に好きだと言われたのはどうなるのだろうか
もし、それが上の人にバレたら1発死
「まぁバレなきゃこっちのもんだし」
「もしバレたら」
「勿論死だよ」
俺は顔を強ばらせた
怖かった、彼らが死んでしまうのが
俺は彼らが死ぬのならこの身を差し出すだろう、躊躇なく
「凪は辛くないのか?」
「何が?」
「家族に何も言われないの」
「…どうだろ、別になんとも思わないかな…めんどくさいだけだし」
そういうものなのだろうか
今の話だと愛されていないのではないか
その家族も情を湧かないために無関心で行動をしていたはずだ
それが子供にどんな影響を与えるのか想像するだけでも顔が歪む
小さい頃から殺しの教育を受けているからなんとも思わないのかもしれない
それは本人しか分からない
「ありがとう、凪」
「…どうしたの? 」
「言っておきたかったんだ」
「前も言ったじゃん」
「1回目ってあまり何も感じないだろ?一回目より2回目の方が断然いいんだよ」
「ふーん…」
ボブっという音を立てながらベッドの海に身を投げた
それと同時に涙も込み上げてきてどうしようもなかった
昔から俺は泣くのが下手だった
呼吸も上手く出来ずにヒックヒックと体を揺らす
過呼吸気味になるばかりで泣くのは好きじゃなかった
でもいつもそんな時に来てくれるのがカイザーだった
昔も今も変わらない
最初の頃は俺が慰めてたり抱きしめてたりしていたけれど大きくなるにつれ立場は逆転していた
「うぅっ…クッソ…ッ」
泣かなかったら人生おかしくなる
泣かない奴なんていない
世界中どこ回ってもいないんだ
絶対に
身を縮ませ自分の体を引き裂くかのように両手で爪を尖らせた
痛いけれど意識を保っていないと過ちを犯してしまいそうで怖かった
そんな時重力が大きくなり右側だけ凹みが強くなった
「カイ…ザー」
「1人で泣くな、俺がいるだろ」
「だって…ッ」
「今は喋るな、呼吸がしずらいだろ」
俺の頭を大雑把に撫でクシャリと髪の毛がぐちゃぐちゃに変形されていく
胸をトントンと優しく叩いてくれるからすぐに呼吸は収まった
「今回はどんな不安?」
「…もし、もしっ皆が先に死んじゃったらって…考えちゃって」
「俺らが先に死ぬわけが無い、アイツらだぞ?癪に障るが。…俺だってお前の事を思ってる」
「でもっ…怖くって…」
「何の不安もいらない…まずは自分の心配をしろ」
「これから侵入作戦を実行した時、もし死んじゃったらどうすんだよ…」
「絶対に死なない、もし死ぬ時が来るのならお前が死ぬ時だ…なぁ俺は世一を愛してる。とてつもなく愛してるんだ、逆に俺はお前が心配だ」
「なんで…」
「自分のことを後回しにするだろ、それが嫌なんだ。お前なら簡単に俺らのためなら自らの命を諦めるだろう」
何も言えなかった
事実だからだ
確かに俺は身を捧げれる
だって…
「だって、大切な人だもん…初めて出来たんだ」
「だからって身を捧げるほど自分を軽く見るな」
ペチンとおでこを叩かれヒリヒリした
「痛い…」
「クソ痛くやってるからな」
「…んひひっ」
「可愛い笑い方しやがって」
鼻を摘みイタズラが成功したような子供じみた顔をしたカイザーに不意にドキリと高鳴った
「なぁ、カイザー…お願いがあるんだ」
「ん?なんだ?添い寝がお希望か?」
「馬鹿言うなよ…もしさ、もし俺が________」
侵入当日
俺は1人行動だった
勿論みんなに猛反対されたし胸ぐら掴まれて怒鳴られた
けれど俺は首を縦に降らなかった
ずっと横に降っていたのだ
カイザーなんて血相を変えて何度も暴言を吐いた
愛されている、そう感じた
俺は西口から侵入する
他のみんなは南、東、北と侵入
なぜ西なのかはそこらには施設長の部屋がある
そこから政府関連のものを掴み取って俺の仕事は終わり
この日は政府関連の人達は来ない
昔の日付が間違っていなかったら来る日では無い
来るのは明日
あと十秒後に緊急音が流れる
鳴ったらその30秒後に侵入
西口は人は少ないものの警備はしっかりされている
やるしかない
ビーッ
うるさい音が耳に響くなり施設にいた研究者たちは急いで銃を持ち一斉に走り出した
静まり返った西口方面
今日この日も暗闇であかりがなければ道に進めやしない
ライトが命綱だ
銃を持って警戒しながら入っていくも静まり返っているのが恐怖着く
「誰もいない…よし」
マイクで彼らに知らせたあと一気に走り始めた
ここから施設長部屋まで20階の階段を登らなければならない
これでも近い方なんだけどね
エレベーターは使ったらバレてしまう可能性が高いから階段だ
まぁ人がいる可能性もあるのだが
「番号は…」
必死に子供時代の頃を思い出していた
「誰だ!」
「っ!」
バンバンッ
急に打たれ避けれるはずもなく右肩に当たってしまった
すぐに治るはずのものが10秒たてて治っていくのに気づいた
「は…?」
どちらの声から分からないが銃撃は止まらない
「もしかしてお前…No.4141か…?!」
バンッ
「かはっ」
しろい服をきた研究者はバタりと倒れていった
「はっ…はっ…」
初めて自分の手で殺した
今までは少し怪我をつけたり気絶させたりしていたから
「急がなきゃ…」
どんどん力が失っていくような感覚がする
あの時からだ
窓からすごいスピードで俺の頬を掠ったその時から
多分、カイザーが言ってた新しい実験
俺を殺すための物だろう
ならば、最後まで使い切ってやる
この身が滅びようとも
10階ぐらいのところだろう
急に電球ででらされていた階段はブレイカーが落ちた
緊急のためだろう
その時後ろから気配がした
「たす…け、て」
「っ!」
子供
ここの施設の子供だろう
ボロボロで実験の跡が痛々しいほど刻まれている
先程の銃撃に巻き込まれたせいか血がドロドロで助かるかどうか分からない
「大丈夫だ!俺が助ける!だから目を閉じないで!」
だからといって助けることを辞める訳には行かない
ドロッ
「…?…はっ?」
血よりもドロドロとしていて魚臭い匂いに違和感を感じ子供を見たらスライムのようにドロドロと蕩け落ち骨すらも溶けていく
「なに…これ…」
「よぉ、No.4141…この前ぶりだな?」
あの時の奴だ
俺を誘拐し俺を弄んだゲス野郎
「お前…おい、応えろこの子供はどうなってるんだ」
「実験体さ、No.253。失敗作だ」
マグマのような暑い液体が俺の胃にグルグルと覆いまくっていく
「ぶっ潰してやる!」
銃でバンバンと打ちながらがむしゃらに走り出し叫んだ
「潰す?お前に何が出来る?不意打ちには強い方だがこうも面と向かっての戦いじゃお前は弱い、適当に打って当たると思っているのか?」
「うるさい!ゲス野郎! 」
弱いさ、俺は守ってもらわなきゃ死んじまう
この世界じゃ簡単に死ぬさ
けれど死ぬ覚悟で生きなきゃ何になるんだ
死にそうだから辞めるとか死にそうだから諦めるとか
そうしたいけどできないんだよ
アイツらがいるんだ
俺を守ってくれて助けてくれてたくさんの声掛けもあってそれなのに俺はあいつらを助けることさえできない
だから俺に諦めるっていう選択肢はないんだ
仲間だから
バンバンッ
「無駄な抵抗は寄せ、言っただろ?俺はここの援護係だって、お前じゃ勝てない」
「勝てないからここから逃げ出すとか出来ないんだよ!今すぐにここから逃げ出したいさ!けどアイツらに言ったんだ!俺は大丈夫だって!」
「無責任な言葉は身を殺すぞ!」
バンッ
「ッ!」
やはり傷はすぐに治らない
なんなら悪化し始めてる
「はっ、成功したのか」
「…?」
「わかって無さそうだから教えてやるよ。前襲われたろ?銃で、その時の薬だ、その能力を一時的に抑えるっていうな、その能力さえ無くなればお前は弱者、それ以下だ」
そんなに俺の力が怖いのか
なら
ババンっ
「…かはっ」
「隙間を作るなんて馬鹿だよな、学べよ脳みそ詰まってなかったのか?嗚呼耳から流れ出てきたのか、それは可哀想に」
存分に俺を足掻いてみせろ
2024 9/19完成
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