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#K-T
K-Takasaka
103
K-Takasaka
248
#スクラッチャーズ
#異世界転生
部屋の中央に置かれた古いゲーム機は、誰が見ても壊れていた。
画面は真っ黒で、電源コードは途中でねじれている。コントローラーは三つしかなく、そのうち一つはボタンが全部外れていた。
「これ、本当に動くの?」
メバルがゲーム機を覗き込みながら言った。
「動く。少なくとも、電源ランプは点灯している」
アオノは淡々と答えた。機械の側面に接続した小型端末を操作し、画面に流れる数字を確認している。
「それ、電源ランプじゃなくて、警告ランプじゃない?」
「表示上は似ている」
「似てるで済ませないでよ!」
メバルがツッコんだ直後、画面が突然明るくなった。
そこに表示されたのは、色鮮やかなコースと、六台のカートだった。道路は空中に浮かび、左右には巨大なキノコや、意味の分からない土管が並んでいる。
「おおっ! レースゲームか!」
カキが身を乗り出した。
「洞窟コースはあるか? 鉱石が配置されている可能性がある!」
「レースゲームに鉱石を探しに行くな!」
メバルがカキの襟をつかんだ。
そのとき、画面の中から強い風が吹き出した。
「……風圧が発生している」
アオノが言った。
「風圧って、画面から出るものなの?」
マサカゲが一歩下がる。だが遅かった。
ゲーム機の画面が水面のように波打ち、六人の身体が一斉に引き寄せられた。
「うわああああっ!」
「カキちゃん、何かつかんで!」
「このピラミッドはつかめない!」
「ミステーちゃん、それ被り物でしょ!」
メバルの叫びもむなしく、全員が光の中へ吸い込まれた。
次に目を開けたとき、六人はそれぞれ別のカートに座っていた。
メバルの前にはアコースティックギターが固定され、カキのカートにはエレキギターが無理やり取り付けられている。マサカゲの車体にはベースが横向きに載せられ、ミステーのカートにはピラミッド型の飾りが突き刺さっていた。
アオノの前にはキーボードがあり、K-Tのカートだけには防弾盾が取り付けられている。
K-T本人は防弾チョッキを着け、黒色の硬いガラケーを握っていた。
「全員、無事か!」
マサカゲが周囲を見渡した。
「俺は無事だ! それより、あの洞窟はどこだ!」
カキがアクセルを踏み込む。
「カキ、待て。周囲の構造が不明だ」
「大丈夫だって! こういうゲームは走れば分かる!」
「その理屈で分かるのは、たいてい壁の硬さだけよ!」
メバルが叫んだ瞬間、空中に巨大な数字が浮かび上がった。
3。
2。
1。
GO!
六台のカートが一斉に発進した。
「説明なしで始まったぞ!」
マサカゲがハンドルを切る。
「スタート前に確認事項を整理できなかった。次回からは――」
「次回がある前提で話さないで!」
メバルのカートが勢いよく加速した。
目の前には、道路の上に浮かぶ箱が並んでいる。箱の中には光る疑問符が描かれていた。
「アイテムボックスだな」
アオノが言う。
「何が入っている?」
カキが箱へ突っ込んだ。
箱が割れ、カキの手元に三本のバナナが現れた。
「採掘道具じゃない!」
「でも黄色くて、形が鉱石に似ている!」
「どこがよ!」
カキがバナナを後ろへ放り投げる。直後、マサカゲのカートがそれを踏んだ。
車体が大きく滑り、マサカゲは冷静な顔のまま一回転した。
「カキ。アイテムの使用方法を確認してから投げろ」
「悪い!」
「謝る前に前を見て!」
メバルの声が響いた。
前方には巨大な坂道があり、その頂上から甲羅のような物体が転がってきていた。
「接近物。速度、毎秒――」
アオノが計算を始める。
「計算してる場合じゃない!」
K-Tが無言で前へ出た。
カートを横滑りさせ、防弾盾を構える。甲羅が盾にぶつかり、激しい音を立てて弾かれた。
しかし、その衝撃でK-Tのカートはコースの外へ飛び出した。
「Kさん!」
メバルが叫ぶ。
K-Tのカートは雲の下へ落ちていった。
数秒後、空から釣り竿のような機械が伸びてきて、K-Tのカートを引っかけた。そのまま何事もなかったようにコースへ戻す。
K-Tは座席に戻ると、ガラケーのアンテナを伸ばした。
アンテナは金属音を立てながら、短い警棒へ変形した。
「問題ない」
「いや、落ちたよね! 今、完全に落ちたよね!」
「問題ない」
「二回言えば済むと思ってるでしょ!」
K-Tは答えず、前方を見た。
コースは森を抜け、巨大な分岐点へ入っていた。左は明るい舗装路。右は薄暗い洞窟だった。
「洞窟!」
カキが叫び、右へハンドルを切る。
「待て、右側はコース外の可能性がある!」
「鉱石があるかもしれない!」
「カキちゃん、レース中に採掘は禁止!」
メバルが叫ぶより早く、カキのカートは洞窟へ飛び込んだ。
ミステーも続いた。
「洞窟は大地の口だ。口の中には、たいてい秘密がある」
「ミステーちゃんまで行かないの!」
メバルたちも仕方なく後を追う。
洞窟の壁には、奇妙な鉱石が埋まっていた。青、赤、黄色。どれもゲーム画面のように明滅している。
カキがカートを止め、目を輝かせた。
「これはすごい! 掘るぞ!」
「カキ、レースを止めるな。後方から何か来ている」
マサカゲが振り返る。
洞窟の奥から、黒いカートが現れた。
運転席には誰もいない。それでもカートは正確に道を曲がり、六人へ向かって猛烈な速度で近づいてくる。
アオノのキーボードが勝手に入力された。
画面に、六人の順位が表示される。
メバル、二位。
カキ、二位。
マサカゲ、二位。
ミステー、二位。
アオノ、二位。
K-T、二位。
「全員二位って、どういうこと?」
メバルが声を上げた。
その瞬間、洞窟の天井に巨大な文字が浮かんだ。
『参加者を確認。脱出条件を設定します』
黒いカートが、ゆっくりと六人の前で停止する。
誰も乗っていない運転席から、機械音声が響いた。
『最下位の者は、ゲーム世界に残ります』
カキが息をのむ。
ミステーは真面目な顔で、黒いカートを見つめた。
「つまり、最下位になると、ここで暮らせる」
「前向きに考えるな!」
メバルが叫ぶ。
黒いカートのヘッドライトが、赤く点灯した。
次の瞬間、洞窟の奥から無数のエンジン音が響き始めた。
コメント
1件
うわああ第1話からぶっ飛んでてめっちゃ面白い!!😭💕 ゲームに吸い込まれて突然のレース開始!しかも防弾盾とかガラケー警棒とかK-Tさんの装備渋すぎて笑ったww 6人全員が「二位」って表示も不気味で気になるし、最下位は残留ってルールがもうヤバすぎる… カキちゃんの「鉱石あるかも!」に全力なの愛おしいし、ミステーちゃんの「ここで暮らせる」ポジティブ変換も大好きです😂✨ 続きが気になりすぎて今夜眠れない…!!!