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昼下がり、病室は静かだった。
窓から差し込む陽射しが白いシーツに反射して、
穏やかに見えるけど、俺の体はまったく穏やかじゃなかった。
胸の奥がぎゅうっと締め付けられ、頭がぐらぐらする。
手足は冷たく、吐き気がじわじわ押し寄せる。
「……涼ちゃん……」
隣のベッドにいる涼ちゃんの顔を見上げる。
金髪が光を受けて眩しくて、
でもその優しい笑顔にほんの少し安心した。
「元貴、大丈夫か?顔色がすごく悪いよ」
「……熱もある……かも」
涼ちゃんは即座に看護師に呼びかけ、
体温計を持ってきた。
俺は声を出すのもつらく、ただ小さくうなずくだけ。
そこに、白衣の若井が颯爽と現れた。
「元貴、どうした!?」
他の患者や看護師がざわつく中、
若井は俺にだけ真剣な視線を向ける。
周りのざわめきは耳に入らない。
「先生……体が……」
吐き気が限界に達し、
咳き込みながら少し嘔吐してしまう。
若井は即座に駆け寄り、背中をさすり、
横に膝をついて支えてくれた。
「しっかり、俺がいるから……大丈夫だ、元貴」
その声は低く、優しく、
でもどこか独占的な温かさがあって、
俺の体の力が少しずつ抜けていく。
涼ちゃんも隣で、
「元貴、俺も手伝うから」
と励ましながら、タオルや水を用意する。
「涼ちゃん……ありがとう……」
息も絶え絶えに言うと、二人の存在が体を支えてくれる。
若井は看護師に指示を出しながら、
俺の額に手を当てて熱を測る。
「熱が高い……点滴で水分補給する。すぐやる」
俺の腕に針が刺さる瞬間も、
若井の手は優しく握り、視線は離さない。
「痛い?」
「……少し……」
「よく頑張ったな、元貴」
その言葉に、つい涙がこぼれる。
身体も心も、全部弱っているから、
安心と甘えが一気に押し寄せる。
点滴が始まると、若井は背中をさすり続けながら、
「ゆっくりでいい。俺がついてるから」と囁く。
涼ちゃんも隣で、手を握ってくれる。
「元貴、大丈夫、俺もいる」
体温はなかなか下がらないけれど、
若井の手と声に包まれて、
俺の心は少しずつ落ち着く。
「元貴、頑張ったな。もう安心だ」
「若井……」
俺の声はかすれ、涙で声が詰まる。
それでも、
若井は笑顔で「よく耐えた」と言ってくれた。
午後の光が差し込む中、
二人に支えられて横になっていると、
体のだるさも吐き気も、少しだけ和らいだ気がする。
「俺、こんなに甘えていいのかな……」
若井は目を細め、優しく抱きしめる。
「元貴は俺だけのものだ。誰にも譲らない」
涼ちゃんも微笑みながら、
「そうだよ、元貴。俺もいるからね」
と手を握り返す。
二人に囲まれて、俺は初めて心から安心できた。
体はまだつらいけど、甘やかされる温もりが全身を満たす。
夜になり、点滴も終わって体温も落ち着く頃、
若井はベッドサイドに腰かけ、
額に手を置き、優しく頬を撫でた。
「元貴、よく頑張ったな」
「……ありがとう、若井……」
言葉は少ないけれど、二人の愛情が全身に染み込む。
涼ちゃんも傍で微笑み、
俺の頭をぽんと軽く撫でてくれる。
体はまだ完全じゃないけれど、
この二人に囲まれている限り、俺は大丈夫だ。
苦しいけれど、甘くて温かい、
病室での溺愛タイムが静かに過ぎていった。