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エム「猫語尾中」
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md side――――――――――
静かだった。
さっきまでのスピーカーの音も消えて、
白い部屋には、五人の呼吸音だけが残っている。
誰も動かない。
いや
動けない、の方が正しいかもしれない。
状況が理解できていなかった。
「……能力って、なんだよ」
黄色い髪色の人が低く言った。
苛立ちが混じっている。
無理もない。
「さっきの、見ただろ」
紫髪の人が壁にもたれながら言う。
「普通じゃねぇ」
「普通じゃないで済ませていいのかよ」
黄色い髪色の人が睨む。
空気が少しだけ張り詰める。
その時
ブゥン、と音がした。
全員が反応する。
天井のスピーカーが再び光る。
『被験体001〜005』
冷たい声。
『能力適合テストを開始します』
嫌な予感がした。
「……またか、、」
俺が呟く。
『各被験体は能力を使用してください』
『使用状況、安定性、負荷を測定します』
負荷。
その言葉に引っかかる。
「さっきの頭痛……」
今度は赤い髪の人が小さく言う。
「能力の反動かもしれない」
その可能性は高い。
でも、やらないという選択肢はない。
「……やるしかねぇか」
紫髪の人が言う。
誰も反対しなかった。
まず動いたのは、
さっき“時間”を感じたって言ってたやつ──
青い髪の人だった。
ゆっくり手を上げる。
空気が変わる。
一瞬だけ、音が消えた。
違和感がある。
次の瞬間、
床に落ちていた小さな破片が、
少しだけ浮いた。
「……は?」
黄色い髪色の人が声を出す。
すぐに元に戻る。
時間が
一瞬だけ止まったみたいだった。
「今の……」
俺が言いかけた瞬間、
青い髪の人が膝をついた。
「っ……!」
頭を押さえる。
明らかに異常な痛み。
「おい!」
紫髪の人が駆け寄る。
「……大丈夫、じゃねぇな」
青い髪の人は苦笑した。
その額には汗が浮かんでいる。
「負荷、ってやつかよ……」
次に動いたのは、
黄色い髪色の人だった。
「貸せ」
誰に言うでもなく、
前に出る。
拳を握る。
その瞬間、
空気が変わった。
床がミシッと音を立てる。
一歩踏み込む。
ドンッ!!
拳が床に当たる。
コンクリートが、
ひび割れた。
「……おいおい」
思わず声が出る。
人間の力じゃない。
でも、黄色い髪色の人は顔をしかめていた。
「っ……腕、やべぇな」
小さく呟く。
見れば腕がわずかに震えている。
負担がかかってる。
その時、赤い髪の人が静かに言った。
「……次、やる」
目を閉じる。
空気が歪む。
視界が揺れる。
一瞬だけ別の景色が見えた。
血。
倒れてる誰か。
知らないはずなのに妙にリアルだった。
「っ……!」
思わず目を逸らす。
次の瞬間元に戻る。
「……見えた?」
赤い髪の人が聞く。
誰もすぐに答えない。
「今の……なんだよ」
紫髪の人が低く言う。
「幻覚、か」
赤い髪の人は頷いた。
「多分」
少し間。
「でも、制御できてない」
その声は冷静だった。
でも、ほんの少しだけ震えていた。
次に紫髪の人が手を上げる。
「俺もやる」
そう言って、
わざと壁に手を打ちつけた。
ドンッ!!
鈍い音。
皮膚が裂ける。
血が出る。
「えぇ!?」
思わず声が出る。
でも、次の瞬間。
傷が塞がり始めた。
ありえない速さで。
「……マジかよ」
紫髪の人が苦笑する。
「でもこれ」
少し顔をしかめる。
「普通に痛ぇ」
その一言が、
やけに現実的だった。
最後に、
俺が手を上げた。
「……やるか」
壁に触れる。
その瞬間、配線が動いた。
まるで意思を持っているみたいに絡みつく。
電流が走る。
バチバチと音が鳴る。
「っ……!」
体がビリッと震える。
でも、動かせる。操れる。
「……これ、制御できるな」
そう言った瞬間、
頭に痛みが走った。
「ぐっ……!」
膝をつく。
全員同じだった。
息が荒い。
頭が痛い。
能力を使うたびに、
確実に削られている。
その時、スピーカーが鳴った。
『測定完了』
淡々とした声。
『全被験体、適合率高』
少しの沈黙。
そして、
続いた。
『特に被験体001』
空気が止まる。
『異常な適合を確認』
青い髪の人が顔を上げる。
その目に、
わずかな違和感があった。
『今後の実験において、優先対象とする』
その言葉が、
やけに重く響いた。
優先。
それがどういう意味か、
全員なんとなく分かってしまった。
「……最悪だな」
黄色い髪色の人が吐き捨てる。
誰も否定しなかった。
その時、
また頭にノイズが走る。
一瞬だけ、
景色が変わった。
公園。
夕方。
笑い声。
誰かが言う。
「遅いぞ──」
そこで途切れる。
「……っ、なんだ今の」
俺が呟く。
赤い髪の人が目を細めた。
「……記憶」
小さく言う。
「少しずつ、戻ってる」
その一言で、空気が変わった。
希望か
それとも──
もっと嫌なものか。
どっちかは、
まだ分からなかった。
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