テラーノベル
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喫茶店の帰り、千歳(女子中学生のすがた)にこう言われた。
『なあ、ワシがちゃんと組紐作ってさ、金振り込まれたら、なんか買ってやろうか?』
……うーん、気持ちはありがたいけど、身に過ぎた大金だから俺が触れちゃいけない気がするよ……。
「……えーと……気持ちは嬉しいけど、千歳のお金だし、俺がちゃんと稼げなくて困ったときに頼らせてくれれば、それで十分だよ」
考えた末、俺はそう返事した。お金があるのはいいことだが、お金に振り回されて破産したくない。そもそも千歳のお金だし。
むしろ千歳が大金に振り回されないように、俺が注意して見守らないといけないかも。
千歳は『でも』と不満そうに言葉を続けた。
『お前稼ぎ気にしてなかなか婚活しないから、補助とかさ』
「困ったときにお金頼る先があるだけで十分だよ、それだけでフリーランスにはものすごく心強いからさ」
千歳に頼りすぎるわけには行かない、千歳のお金なんだし、千歳がお金に振り回されないように見守らなきゃならないし。
俺は言葉を続けた。
「俺としてはさ、また体壊したり、もし事故とか怪我とかで働けないって時に、金銭的に頼れる先があるって、すごくありがたいんだよ。だから、それだけでいい」
『うーん、そうなのか?』
千歳は首を傾げた。
「だってさ、俺、雇用保険もないし、入ってる保険は国民健康保険だけだし。もしもの時の備えが全然ないんだ。もしもの時頼れるなら、それだけでいい」
『うーん、そうか……』
千歳は、それなりに納得してくれたようだった。
『じゃ、とりあえず、しっかり貯金しとこう。峰家との見合いで、金の話も出るかもしれないしな』
「逆に、千歳が欲しいものはないの?」
俺が聞いてみると、千歳は首をひねった。
『うーん、せっかくだから高級お菓子に使いたいけど、それは三十万円くらいまでにしといて、あとは振り込まれるたびにちょっとずつ能登の地震に募金するかなって』
「それはいいね」
何だ、すごく堅実じゃん。
『一千万円が十回はすっごい大金だけどさ、お前とお前の子孫をずっと養える金額じゃないし、お前に何かあった時用にとっとかなくちゃいけないしのもあるし、やっぱ貯金が一番なのかなって』
「それがいいよ、えらいよ千歳、すごく堅実でいいよ、絶対そうしな!」
応用としては積立NISAなんかもあると思うが、基本である貯金ができてないと応用は無理だ。
『ワシ、えらいか?』
「えらい! 超絶怒涛にえらい!」
俺が全力でほめると、千歳はドヤ顔になって『ふふん』と言った。
翌日には材料が届き、千歳はこたつで組紐づくりに勤しみだした。
「どう、調子は?」
『んー、玉数が多いから時間はかかるけど、簡単な組み方指定だから、難しくはない』
「そっか、がんばってね」
俺もこたつで仕事しつつ、なんとなく千歳を見た。
千歳は、こういう仕事で経済的には困らなさそうだし、経済的には一人でもやってけるんだよな。
俺は、俺のところに千歳がずっといてくれたらなと、ずっと思ってる。でも、千歳と俺の間にはなんの契約もないわけだから、千歳の気が変わったら、別に俺のところにいる理由なんて、何もないんだよな。
俺は、千歳がいなかったらもうやっていけないと思う。家事ほとんど頼ってるから、というだけじゃなくて、いつもそばにいて元気にかまってくれる存在がいなくなったら、もう仕事も生活も張り合いがなくて、何かする気力が出なくなってしまうと思う。
でも、こんなに激重な人恋しい気持ち、満たすのを千歳にばっかり頼り過ぎちゃいけないのかな。誰かとずっと一緒にいたいっていう思いは、やっぱり、結婚っていう契約ができる関係に求めたほうがいいのかな。峰家との話で、お見合いの話が出たら受けるべきなのかな?
でも。
俺が人生どん底の時、ずっとそばにいて世話してくれたのは千歳で、俺がこれからもずっと一緒にいたいのは、千歳なんだよな。
#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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コメント
1件
うわあああ千歳ちゃんえらすぎる…!!「超絶怒涛にえらい」って全力で褒める主人公の気持ち100%わかる😭💕 高級お菓子と貯金と能登地震への募金って、そのバランス感覚がもう尊い…! でも最後の主人公の「ずっと一緒にいたいのは千歳なんだよな」って心の声、重すぎて泣けるよ…。結婚とか契約とか関係なく、ただ一緒にいたいって気持ちがまっすぐすぎて切ないっす…次も読みます!📖💕