テラーノベル
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―見て、あの人かっこよくない?
―うーん、私はあちらの方かしらぁ、
春風が恋を運ぶ。恋をした花は、想い人に摘まれることを願って__。
「わわ、このお花、綺麗だなぁ〜!!」
とある少年が、ひとり。恋する花に目を停めた。
―誰が選ぶのかしら、
―こんなイケメンなら、選んでもいいわぁ、
―私、この人にしちゃおうかなぁ
花たちは盛んに自分を、自分をとアピールする。そうとも知らず、少年は自身の良心と争っていた。
「このお花、摘んじゃってもいいのかなぁ…、」
―貴方が選ばれるならねっ!
―きっと貴方なら誰かが選ぶわぁ〜!
ついに決めたのか、少年が顔を上げる。
「一本貰っちゃお、!」
そうして、花に手を伸ばす。
―きゃあっ!
花たちの間で黄色い声があがった。少年の指が花を一輪手折り、そして立ち上がる。
―選んだのは誰??
―あの子よ!ほら、あの__。
少しの間、花たちはざわめいていたが、それも直ぐに静かになり、道行く人達を見定めるべく頭をしゃんとあげて、美しく咲き続けていた。
「んー、花瓶花瓶っと、」
一方、少年は自身の家で花瓶を探していた。摘んできた花を生けるためだ。
「あっ!あったぁっ!!」
これでいいかなぁ、と少年は首を傾げた。いいわよ、とでも言うように花がふわりと揺れる。風も吹いていないのに、その芳しい香りが辺りを漂った。
「お水、これくらいでいいよね、」
少年の手によって花瓶に生けられた花は、嬉しそうに揺れた。
―ぴーんぽーん―
と、電子的な音が鳴り響く。花は不安そうにゆらゆらとしたが、少年の表情はきらきらと輝いていた。
「やっほー、ちぐ」
「あっとくんっ!」
弾けるような少年の笑顔。甘ったるい声で話しかけるもう一人の少年。
花は、静かに揺れていた。
「な、んで……」
床に倒れ込んだ赤髪の少年と、それを抱きしめる青髪の少年。涙を拭くこともせず、ただ、虚空を見つめていた。
と、青髪の少年の鼻腔を甘い香りがくすぐる。
「え、」
なんで、
なんで、まだ咲いてるの
花はくすりと微笑んだ。
微笑む?そんなわけない。だって、花は花なのだから。
本当に?
「ぁっ、あっとくんっ…!!」
本当に?
それは、本当に貴方なの?
花が口を開いた。
「ごめんな、心配かけて。」
ご覧なさい。嫉妬というものはなんと恐ろしい。こんなちっぽけな花にも力を持たせてしまうのだから。
コメント
2件
すごい!!すごいすごい✨✨ なんかすごくすごいよ〜〜〜!!!!すごすぎて語彙力飛んでいったよ〜〜🥹 なんかさ、tgちゃんが選んだ花が自分の一番好きなatくんの花だったってとこがちょーえもい!!!