ベッドが軋む音で、ふと目が覚めた。
肩にくっついている背中からぬくもりが伝わってきて、自然と笑みが浮かんでしまう。
こうしていつでも彼に逢えるというのに、僕としては、夢の中でも逢いたい気持ちがなくなることはなかった。
僕の予想通り、自分よりも大人な健吾さんに散々翻弄させられ、どう対処していいかわからず、未だにオドオドしている状態が続いている。
そんな情けない姿を見ているのに呆れることなく、屈託ない笑顔を見せてくれた。
あのあと付き合うと決めてから、無職だった健吾さんが僕のマンションに転がり込んだため、一緒に暮らすことになった。その後すぐに就職先を決めた彼と共同生活をして、気がつけば1ヶ月が経っていた。
一緒に暮らせば、毎晩手を出さずにはいられない。『おまえは顔に似合わず、絶倫だからな』と宣告されている意味が、痛いくらいにわかってしまい、行為のたびに申し訳なさを感じた。
だって何度シても全然足りず、もっともっと求めてしまって――はじめて肌を重ねるときなんて、申し訳ない思いやその他もろもろの気持ちが渦巻き、大変の極みそのものだった。
緊張しまくる僕の手を取り、微笑んだ健吾さんの笑顔を、今でもはっきりと思い出せる。
『夢の中で散々ヤったおまえに、こうしてふたたび手ほどきするとは思いもしなかったが、今回は生身の躰だからな。丁寧に教えてやる』
「高橋さん、よろしくお願いします!」
『おまえもはじめてだろうが、俺もネコになるのははじめてだ。正直不安はいろいろあるが、とりあえず挿入したら、俺のことは気にせず、先にイけよ』
他にもいろいろレクチャーされたけど、健吾さんの中に挿れたら、あまりの気持ちよさに、全部吹っ飛んでしまった。
『ん、ふ、あぁ……』
すごくつらそうに眉根を寄せる、健吾さんの姿を目の当たりにしてるのに、腰の動きを止めることができなくて、申し訳なさを感じてしまった。
どうにもできない現状に、健吾さんの顔を見ないようにすべく、上半身に抱きついた。
「高橋さん――」
『ぐ、俺にかま、わず、早く、イって、くれ……』
「でも」
『俺はさっき、おまえに口でしてもらって、気持ちよくしてもらってる、から、気にするな。んっ…は…ぁっ』
喘ぐ呼吸を飲み込むように、健吾さんに口づけた。感じさせるなんて真似はできないだろうけど、自分の中にある気持ちが伝わるようにと思いながら、舌を絡める。
最初の数回は、悲壮な表情を見せていた健吾さんも、気持ちよさを覚えていくうちに、僕が誘う前にバスルームで手を出してきたりして、いい関係を築くことができているという、しっかりとした確信があった。
うなされるように呟いた、彼の寝言を聞くまでは――。
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