ビルの火災現場で現地の人達と一緒に救助活動を手伝った。アリアに生存者の場所を特定して貰って、行けそうな場所は消防士さん達が突入して、無理な場所は私が突っ込んだ。居場所が分かるから、消火作業もピンポイントに出来たから効率も上がったみたい。
消火作業何かで手が空いた時間があったから、負傷者の手当てにも参加した。と言っても私に医学の知識はないし、簡単な治癒魔法くらいしか出来ない。
幸い手元には医療シートがたくさんあったから、それを使うことにした。数に限りがあったから現地のお医者さん達の手を借りて、本当に危ない人にしか使えなかったのが悔やまれる。そのお陰か、亡くなった人は居ない。
問題があるとするなら、お土産として持参した医療シートのほとんどを使ってしまったことかな。
大火傷をした人が居て10枚くらい使ったし、残りは20枚くらいしかない。でも“トランク”はあるし、命には代えられない。そこに悔いはないよ。
で、状況が落ち着いた頃にたくさんの警官や軍人さんが集まってきた。
「お名前を伺っても?」
「ティナですけど」
「対象確保ーーっっ!!!」
「え?えっ!?」
あっという間私は軍人さん達に囲まれて車に押し込まれた。いや、扱いは丁重だったし、触ってきたのは女の人達だったけど。
見るからに高級車だし、私の翼を考えてか柔らかいクッションも用意してくれた。素直に有難い。
「急にこんなことをしてごめんなさいね、ティナさん」
一緒に車に乗り込んだブロンド髪の女の軍人さんが話し掛けてくれた。何だか色っぽい人だなぁ。ザ・大人のお姉さんって感じ。
「ちょっとビックリしちゃいました」
「貴女が来訪する時間になっても来ないから政府も首を傾げていたんです。そしたらニューヨークのことがニュースやインターネット上で話題になりまして」
「あー……やっぱりかぁ」
写真を撮る人がたくさん居たのを覚えてる。それにレポーターらしき人も何人か居たし、話題になるだろうなぁ。覚悟はしてたけど。
「ティナさんさえ良ければこのままワシントンD.C.へ向かいたいと思いますが、構いませんか?」
「あっ、はい。大丈夫ですよ。私こそ連絡を入れずに……ごめんなさい」
「いえ……私個人としても貴女には感謝を。あのビルには姪が居ましたから」
「姪っ子さんですか?」
「ええ、貴女が最初に助けてくれた女の子です。私の歳が離れた兄の娘で、姪と言うより妹みたいな感覚ですけど」
優しげに微笑む美人さんを見て、私も胸が暖かくなる。余計なことをしたと怒られることを覚悟してたんだけど、感謝されると嬉しいな。
自分のやったことが無意味じゃないことを証明してくれる。
「彼女も怪我をしていたみたいですけど、ちゃんと病院へ向かいましたよ」
「ええ、先ほど軽い怪我で済んだと病院から連絡がありましたよ。本当にありがとう。兄に代わってお礼を言わせてください」
「私は自分に出来ることをやっただけです。邪魔になってないか心配でしたよ」
よかった、私でも役立てた。それだけで嬉しい。
「あっ、お名前を伺っても?私はティナです」
「私はメリル=ケラー、こう見えて国防省の職員なんですよ?」
「国防省の……ん?ケラー?」
もしかして、ジョンさんの身内さんかな?
「ファーストコンタクトを果たしたジョン=ケラーは私の兄なんです。歳が凄く離れていますから、兄妹には見えないと言われてしまいますけどね」
「ジョンさんの妹さん!?じゃあ、あの時助けた女の子は……ジョンさんの娘さんだったのかぁ」
いやぁ、世界は狭いねぇ。
私達を載せた高級車は大層な護衛を連れてワシントンD.C.へと向かった。途中で護衛が更に増えて、何か装甲車まで加わったのは驚いたけどさ。
「警備は万全にするようにと改めて指令が出されたみたいですね」
「あんまり目立ちたくはありませんし、ホワイトハウスの近くで止めて貰っても良いですか?目的地は会議室のままで良いんですよね?」
派手なのは苦手なんだよね。
「分かりました。直ぐに相談します」
メリルさんが電話で連絡し始めたのを見て、私もブレスレット型端末を起動した。
「アリア、居る?」
『はい、ティナ。ギャラクシー号はホワイトハウス上空に留まらせています。目的地である会議室まで地球単位で100メートル未満の位置です』
「流石アリア、到着したら“ギャラクシー号”経由で会議室へ行くよ。用意をお願い」
『畏まりました。では後程』
しばらくしてワシントンD.C.へ入った私達はそのままアメリカの中枢であるホワイトハウスへ辿り着いた。前世でニュースや映画で何度か見たことはあるけど、まさかそこに招待されるなんて思っても見なかった。
「ここまでありがとうございました。あとは自分で向かいますね」
「会議室には皆さんがお待ちです。ティナさん、兄によろしくお伝えください」
「はい。メリルさんもまたお会いしましょう」
別れを告げて私は転移魔法で“ギャラクシー号”のコクピットへ戻った。地球の礼服の類いを着ようかと考えたけど、翼があるからほとんどの服は着られない。
アード人が天使みたいな露出の多い服を着てるのは翼があるからなんだよね。ここはこっちの流儀で行く方がよさそうだ。窮屈で痛い思いはしたくないし。
「アリア、行ってくるよ」
『お気を付けて、ティナ。フェルも心配していますよ』
「ん、挨拶が終わったらフェルにも連絡しないとね」
出だしから遅刻してしまったけど、まだ挽回は出来るはず。アード、そして地球の未来のためにも頑張らないと!
私は渡された会議室の画像をじっと見てイメージを構築。そして転移魔法を使った。
次の瞬間コクピットから明らかに高級な調度品で飾られた大きな部屋に転移した。視線の先にはたくさんの人が居て、みんなビックリしてる。
よし!
「遅れてごめんなさい。ティナです。惑星アードから親善のためにやってきました。よろしくお願いします」
いよいよアメリカ政府とのファーストコンタクトだよ!頑張って成果を出そう!
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