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歴史的な瞬間が訪れていた。直前に連絡が入ったとは言え、突如会議室に現れたティナに一同は驚いたが、そこは地球最大の大国を率いる者達。直ぐに立ち直り、来訪者であるティナを歓待した。
「こうしてお会いできて光栄です。アメリカ合衆国大統領のハリソンです」
「ティナです。大統領閣下とお会いできて私も嬉しいです」
両者が握手を交わし、報道官達が一斉にカメラのフラッシュを焚いた。あまりの明るさにティナが顔を少しだけしかめ、それを見たハリソンは直ぐに止めるよう指示を出した。
「いや、驚かせてしまい申し訳ない。写真と言うのだが、今さら説明は不要かな?」
「あっ、はい。大丈夫ですよ、ちょっとびっくりしただけですから」
「ふむ、次からは気を付けよう。私としては今日という日を記念すべき日にしたい。貴女の事をティナ嬢と呼んでも?私はハリソンで良い」
「問題ありませんよ?その……ハリソンさん」
「ありがとう。あっ、そうだった。君も早く会いたいだろう。さっ、此方に」
ティナです。だいと……ハリソンさんが手招きをしたら、中年くらいのアメリカ人さんが近寄ってきた。まさか。
「ジョンさんですか?」
「ああ、そうだよ。ようやく会えたね、ティナ」
ジョンさんともしっかりと握手を交わす。なんだろう、笑顔なんだけど疲れてる?
「君は私の娘を救ってくれた。心から感謝したい」
「私はできることをしただけですよ。ジョンさんの娘さんがご無事でよかった」
「その件は私からも感謝させてほしい。マンハッタンでは君に大層助けられたと聞いているし、ニュースを見たよ。市民を、国民を救ってくれたことに感謝する」
ハリソンさんも笑顔だ。
「勝手なことをしたって怒られないか心配でしたよ。それに、約束の時間に遅れてしまいましたから」
「はははっ、人命は何事にも勝るものだよ。後の案内はケラー室長がしてくる。夕食まで時間があるから、それまでゆっくり過ごしてほしい」
そう言ってハリソンさんは何人かを連れて部屋を出た。大統領だもん、忙しいよね。
「ティナ、地球の様々な料理を用意した。もちろん種族的に食べられないものがあるだろうから、その時は遠慮無く教えてほしい。そして夕食後は改めて首脳陣との会談をお願いしたいんだ。アードとの今後を見据えた話し合いをしたいからね。どうかな?」
「もちろんです!お土産もその時にお渡ししますね?」
今渡すよりその方が良さそうだ。トランクと医療シート。代わりに何を貰おうかな?悩むなぁ。
「お土産もあるのか。それは楽しみだ。此方も出来るだけあらゆる分野の品を用意させて貰ったよ」
「本当ですか?ありがとうございます!でもその前にちょっと休みたいかな」
「大活躍だったからね、さぞ疲れただろう。大統領が部屋を用意してくれた。案内させよう」
「ありがとうございます!あっ、そうだ。ジョンさん」
「なんだい?」
「お疲れみたいですから、こちらを!栄養ドリンクです!地球人にも影響は無い筈ですよ。受け取ってください」
私はお父さんが愛用してる栄養ドリンクを一本ジョンさんに手渡した。アリアの解析だと、地球人が飲んでも害は無いみたいだし。
「おお、ありがとう。いや、気を遣わせてしまったね。時間になったら呼びに行くから、それまでゆっくり休んでくれ」
私は係の人に案内されて部屋まで行くことにした。案外あっさりした対応だったけど、どうやら私がニューヨークで活動して遅刻したせいで予定が押してるみたい。
そりゃ大統領だったり重鎮さん達なんだもん。多忙なのは当たり前だし、むしろ私のために調整してくれたのが有難いけど恐縮ではある。
「此方になります。時間になりましたらケラー室長がお迎えに上がります。なにか必要なものはございますか?」
「ありがとうございます。今はないかな」
「畏まりました。いつでもお呼びください」
明らかに豪華な部屋だけど、こんな部屋がホワイトハウスにあるなんて。国家元首を招いたりするのかな?
「アリア、取り敢えず挨拶は終わったよ」
『お疲れさまでした、ティナ。現地のネットワークを確認してみてください。大反響ですよ』
「そんなに?」
私はブレスレットから投影された仮想端末を弄って地球のインターネットを観覧してみた。すると大騒ぎになってた。
『マンハッタンの奇跡!NYに天使降臨!』
『これは福音か、或いは終焉の鐘か!NYに天使が舞い降りる!』
『天使降臨に宗教界激震!バチカンを始め各団体は沈黙!』
うっわ、大騒ぎになってる。いや、あれだけ派手に立ち回れば当たり前か。テレビのリポートらしき人はたくさん居たし、目撃者なんて大勢居るしね。
ネット界隈も大騒ぎだ。
『天使キターーーっっ!!』
『これマジか!?CGじゃないよな!?』
『マジだよ!俺現場に居たけど震えが止まらねぇもん!』
『しかも美少女だと!?』
『天使爆誕がトレンド総ナメで草』
『こりゃあ宗教界が揉めそうな話題だなぁ』
『直ぐにアメリカの軍やらが保護したらしいぜ?』
『極秘に産み出された生物兵器の実験体である可能性もあるのか……?』
『アメリカ政府が明日の1800時に記者会見を開くらしいぞ。人類にとって重大な発表だそうだ』
『間違いなくこれじゃん!』
『こりゃあ全裸待機だな!』
うわー……何だか恥ずかしいなぁぁああっ!もーっ!!
私はベッドへとダイブして足をバタバタするのだった。あっ、枕ふかふかだ。
異星人対策室のジョン=ケラーだ。無事にティナを迎えることが出来た。次は会食、会談の準備だ。記者会見は明日に延期とした。流石にティナも疲れているだろうし、世間も混乱しているからね。
まだまだやることはたくさんあるが、問題はティナから貰ったドリンクである。
まるでダイヤモンドのような輝きを持つ瓶に満たされた透明な液体。ここは研究班に回すべきだと考えたのだが。
「いや、これは君が飲むべきだろう。彼女の好意を無下にはできないし、感想などを聞かれたらどう答えるつもりかね?」
学者さんに断られた。いや、モルモットになれと言われたような気もするな。
まあ、ティナも栄養ドリンクと言っていたし、地球人にも害はないと話していた。彼女は愛娘の命の恩人、そんな彼女の好意を無下には出来んか。
ええいっ!
ゴクリッ!
一気に飲み干した。味は……ポカ◯◯エットみたいなものか?何だか身体が暖まるような……いや!こっ、これはぁあああっ!!!
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉっっっ!!!!!!!」
「室長ーーっっ!!!」
後に一部始終を見ていた日系人職員はこう語る。
「あれはスーパー野菜人だったw」