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目が覚めると、周囲は闇に包まれていた。
(俺は、いつの間にか寝ちまったのか……)
重い身体を引き起こそうとするが、節々がミシリと鳴り、シーツに沈み込む。昨夜、結局何回重ねたのかさえ覚えていない。
記憶にあるのは、自分から見っともなく腰を振り、貪るように男を求めていた無様な姿と、最後の方は意識が混濁して白目を剥いていたことだけだ。
理人は乱れた髪を掻き上げると、全身の力を抜いて再びマットレスに深く沈んだ。
(……あんなに、激しかったのは初めてだ……)
脳裏に、昨夜の情景がフラッシュバックする。 容赦なく最奥を突き上げられ、内側を執拗に掻き回された感覚。 理人の「経験」など、男の圧倒的な熱量と若さの前では何の役にも立たなかった。
(……それに、あんなに気持ちが良かったのも……っ)
思い出すだけで、シーツの下で身体がカッと熱くなる。 初対面の、名前も知らない若造に、これまでのどんな相手よりも深く、無残に、そして甘く暴かれた。
「……くそっ」
腕で目を覆い、理人は小さく毒づいた。 男を「教える」つもりだった自分が、逆に完膚なきまでに「調教」されてしまった。その屈辱と、いまだ身体の芯に残る痺れるような充足感に、理人は激しく翻弄されていた。
その時、右脇に温かい何かが当たっていることに気が付いて、ドキリとした。
おそるおそる視線を向けると、そこには端正な顔立ちの男が、穏やかな寝息を立てて眠っている。
(やはり、整った顔をしてる……)
濃く長い睫毛がくっきりと影を落としている。薄く開いた唇、枕に流れるさらりとした髪。
きっと男女問わずモテるのだろう。
乱れた前髪を指先でそっと整え、その寝顔をしばらく眺めていると、男がわずかに身じろいだ。
起こしてしまったかと心臓が跳ねたが、再び穏やかな寝息が聞こえてきてホッと胸をなでおろす。
理人は短く息を吐くと、男を起こさないよう静かにベッドを抜け出した。
床に散らばった服を拾い集めていると、内股を生暖かいものが伝い落ちていく。
「チッ……最悪じゃねぇか……っ」
舌打ちをしてバスルームへ駆け込み、シャワーを浴びながら後ろ手に指を這わせる。
中に吐き出されたものを、丁寧に掻き出した。
「くそ……。どんだけ出しやがったんだよ……っ」
ふと、鏡に映る自分の姿を見て息を呑んだ。
いつの間に付けられたのか、全身に禍々しいほどの赤い痕が残されている。
「あいつ、いつの間に……」
意識を手放す前に付けられた記憶はない。
まるで、所有の証を刻みつけるような執拗な痕跡。
よく見れば、太腿の内側にまで何箇所も真っ赤なキスマークが散っていた。
「……まぁいい。どうせ一晩だけの関係だ」
もう二度と会うこともない。
スーツを着込んでしまえば、誰にも気づかれはしない。
後処理を終え、手早く着替えを済ませると、テーブルに一万円札を置いた。
男を起こさないよう、音を殺して部屋を抜け出す。
その頃にはもう、朝靄の中にうっすらと光が差し込み始めていた。