テラーノベル
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優しく、ゆっくりと、溶け合うような抽挿は決して激しくない。
新しくなったばかりのマットレスが軋み、揺れるたびに、壱月を全身で感じて、幸福感に包まれる。
あの時みたいに。
ううん、あの時以上に。
マッチングアプリで再会した時。
初めてデートに行った時。
それ以外も。
何度体を重ねても、いつも今以上に幸せな時はないと思うのは、それだけ壱月への『好き』の気持ちがアップデートしているからだと思う。
「愛音……」
不意にぎゅっと私を抱く腕に力が入る。
見上げた壱月に、唇をかすめ取られる。
「大好きだ、愛音」
「私も……」
こうして愛を伝えあいながら、壱月との快楽に溺れる夜。
何度も愛の証を刻み込まれ、その度に身体が熱くなる。
*
体はひどく疲れ、でも幸せな気持ちで彼の腕枕に身を寄せた。
壱月はちゅっと私の額にキスを落とす。
「無理させたよな? 体、平気か?」
「うん……まだ、今は」
「言い方!」
壱月がクスクス笑う。
そのたびに腕枕がぴくぴくと動いて、私の頭も小さく震えた。
なんだかそれが面白くなって、私もクスクスと笑った。
「だってさぁ、体のガタって、なんか遅れてくるじゃない?」
そう言うと、壱月は一瞬キョトンとして、またクスクス笑う。
「あー、今絶対『オバサンくさい』って思ったでしょう」
「……思った」
正直に言う壱月に、唇を尖らせる。
「いいんだ。オバサンでもなんでも、あと何十年かあとにおばあさんになっても、俺にとっては世界一かわいい、大好きな奥さんなんだから」
尖らせたはずの唇がにんまりとゆるみ、頬が落ちてしまいそうになる。
「『嫁バカ』」
いつぞやの壱月が言った言葉を、彼に返す。
けれどそれは、私も同じ気持ちだ。
言葉にするのが恥ずかしくて、ちゅっと彼の頬に唇を寄せる。
「愛音も大概『旦那バカ』だよな」
「あー、そういうこと言う」
「違うか?」
「……違くない、です」
こんな馬鹿な会話をしながら、もし赤ちゃんができたらと未来を想像してみる。
ひとりきり、花斗を腕に抱き奔走していたあの日々。
それは決して消えないけれど、これから先にあるのは温かい未来だ。
家族が増えたら、その温かさももっと増えていくのだと思う。
「幸せになろうね」
「今も幸せだけどな」
「今より、もっともっとだよ」
えへへと笑うと、笑いながら「欲張り」と返される。
でも、胸に思い描いた未来が、今よりもっと幸せであふれているのだから仕方ない。
「欲張りじゃダメですかね?」
「とてもいいと思います」
そう言う壱月の優しい笑みが、心から愛しいと思った。
コメント
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**リオン (古書研究・27歳)** 第99話、拝読しました。優しく溶け合う夜の描写、本当に温かくて、読んでいるこっちまで幸せな気持ちになりました。特に「ひとりきり、花斗を腕に抱き奔走していたあの日々」という一文が胸に刺さって——過去の苦労があったからこそ、今の「欲張りな幸せ」がこれほど輝いて見えるんだなと。壱月の「何十年後も世界一かわいい奥さん」は反則級の台詞でしたね…! 二人の「バカ」の言い合いも、積み重ねてきた時間が感じられて、じんわり沁みました。