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このあとどうなるの!?続き楽しみにしてます!
いい話すぎる .... でも悲しい .. シンの好きな人への嫉妬とか、気持ちとかが、まったく自分と同じだから、すごく共感できる分、悲しさが増すんだよね ... こんな作品書ける月乃さんやっぱすごいです笑
「湊さん!!」
息を切らせてシンが店に入って来た。
「どうした?シン…」
「お店来る途中そこで桐原先生に会ったんです!病院行ってくれたんですね!」
「そんなに慌てる事か?笑」
「だって…嬉しくて…」
「桐原先生良い先生だな…今は日帰りで手術できる方法があるって教えてくれたよ。紹介してくれてありがとな」
「いえ…俺はまだ何もしてあげられないですから…」
「んな事ねーだろ。誰にも言わなかった膝の事お前は気がついたんだ。それだけでもすげぇよ…」
湊はシンの頭をくしゃくしゃと撫でる。
褒められたシンは嬉しそうな顔をしていた。
「シン…」
湊は椅子に腰掛けると
「今夜、家来れるか?」
「行けますけど…」
「じゃ、待ってるわ」
「何かあったんですか…?」
急に家に呼ばれシンは戸惑った。
「そん時話すわ…」
そう言って湊は口をつぐむ。
その夜シンは湊の家を訪ねた。
「よっ!上がれよ」
湊に上がるように促される。
「はい…」
言われるまま家に上がりリビングに入ろうとするが
「そっちじゃない…こっちだ」
湊が指を差したのは2階だった。
「…えっ?」
シンは目を見開きおどろいた。
「良いんですか…? 」
戸惑い気味に湊に尋ねる。
「来ねーのか?」
「行きます!」
初めて上がる階段。
初めて入る湊の部屋。
何度も断われ続けた念願の湊の部屋の前に立つと、シンは緊張の面持ちでドアノブに手をかける。
「お邪魔します…」
恐る恐る中に入る。
背後から
「俺の秘密の場所だ…」
そう湊が言った。
「秘密って…?」
部屋に入ると窓の向こうにシンの部屋が間近に見える。
「この部屋に入ったのはお前が初めてだな…」
今まで自分の部屋から見えた湊の部屋は窓から見えるほんの一部分だけだった。
シンは目に焼き付けるように部屋中を見渡す。
「あんまりジロジロ見んなっ…恥ずかしいだろっ…」
普段湊が過ごしているこの部屋に入りたくて仕方がなかった。
見えなかった部分が今、はっきりとシンの目にうつっている。
「どうして急に部屋に入れてくれたんですか?あんなに嫌がっていたのに…」
「本当は誰にも見せたくなかった…特別な場所だから…」
「……」
「お前と過ごした思い出がたくさん詰まってる…」
「……まるで別れ話してるみたいですね…笑」
「これが最初で……そして最後だ…」
「はっ?…どういう意味ですか?」
「来月この家を出る」
「ちょっと待ってください!また、俺の前から居なくなるんですか?」
「ちげぇーよ…じぃちゃん達が田舎に家買ったから引っ越すって。それでこの家を売りに出すんだ。だから、俺もこの家出るんだわ…」
「どこに行くんですかっ!」
「心配しなくても俺はこの街からは出ねーよ。店、あるからな」
「……」
「そんな顔すんな。笑」
「湊さんはどこに住むんですか?」
「店の近くのアパートで一人暮らし。じぃちゃんが管理人してんだわ」
湊さんが居なくなる…
シンの頭の中はその事が駆け巡っていた。
「…俺も一緒に住みます」
突拍子も無い事を言っているのはわかってる。
「あのな…なんでお前が一緒に来るんだよ。笑」
「湊さんと離れたくないです!」
だけど…それが本音だった。
「はいはい。でもなシンちゃんとは一緒に住めねーの」
「なんでですか!」
「お前家はそこにあんだろっ」
「……」
反論の余地はない。
「それに、また店来ればいつでも俺はそこに居るから」
「……」
シンはただ黙って、湧き上がる怒りを抑えるのに必死だった。
「怒るなよ…シン」
「毎日行きますっ」
ほとんどヤケクソになっていた。
「受験。もうすぐだろ?約束。守れなかったらキャンセルするぞ」
「……」
それを言われるのが一番つらい…
打開策が見つからないまま、ただ俯いて事の成り行きを受け入れるしかなかった…
「シン…ごめんな…」
湊はシンの肩を叩く。
何も出来ない無力さをまざまざと見せつけられた気がした。
やり場のない怒りをどこにぶつければ良いのか…
やっと入る事のできた湊の部屋なのに、そんな話聞きたくはなかった…
無情に過ぎて行くカウントダウンをただ待つ事しか出来なかった…
一ヶ月後。
湊の住んでいた家が売りに出された。
その後、湊からのLINEで無事に膝の手術が終わり完治に向かっている事を知らされた。
湊が隣から居なくなってからシンの寂しさは日に日に増していた。
それでも会いたい気持ちを抑え毎日必死に勉強した。
約束を果たす為に…
その日どうしても湊に会いたくなり塾の帰りシンの足はコインランドリーに向かっていた。
その途中、飲み屋から出てくる湊を見かける。
「みな…」
シンは言葉を飲み込んだ。
湊の後から桐原先生が出てきた。
仲がよさそうに肩を組んで歩いている。
「…なんで……?」
シンの中で怒りと嫉妬が渦を巻いていた…。
シンの気持ちを代弁するかのように空から勢いよく雨が打ちつけてきた…
【あとがき】
明日、13話投稿します。