テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……っ」
返す言葉が見つからず、咲はただ視線を落とした。
夜風が頬を撫でても、顔の熱は下がらない。
悠真はそんな咲の横顔を横目に、歩幅をゆるめてくれる。
「今日は……楽しかったな」
低く落ち着いた声が、静かな夜に響いた。
「……はい」
ようやく返した声は、自分でも驚くほど小さかった。
沈黙が落ちる。
けれどそれは、気まずさよりも心を満たす余韻のようだった。
やがて、家の灯りが遠くに見えてきた。
「妹ちゃん」
名前を呼ばれるたびに胸が高鳴ることを、咲はごまかせなくなっていた。