コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
豊かな自然が広がるヒスイ地方。
ポケモンを恐れる風潮のあったこの地は、
一人の『英雄』の力で
ポケモンを怖がっていた人々は、
ポケモンと助け合うようになってきており、
ヒスイ地方は平和に包まれていた。
だが、ある日。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
自室の布団で目を覚ますと、
なんだか外が騒がしかった。
何事かと外を見れば、
なんとテンガン山、シンオウ神殿のすぐ真上には、
時空の裂け目が復活していた。
コトブキムラも大混乱で、
怖がり、恐れる人が大多数。
自身も対応に追われていた。
『大変だねぇ…また不吉なことが起きなければいいけど…』
ペリーラ様がため息を付き、
自分も思わずため息が出る。
時空の裂け目は前よりも小さいものの、
やはり何かあるのではと不安になる。
何故か、妙な胸騒ぎを覚えていた。
すると、
「にゃりん!!」
急にオオニューラが焦った様子で駆け込んできた。
「オオニューラ?」
『焦っているようだけど…一体どうしたんだい?』
「にゃりん!にゃり、にゃりん!」
オオニューラは爪で、時空の裂け目を指す。
「あそこに何かあると?」
「にゃり!」
爪をくいくいと動かす。
「…来い、ということでございましょうか」
「にゃりんっ!」
妙な胸騒ぎを晴らすためにも、
ショウ様と共にテンガン山の頂上へ向かった。
近くで見ると、裂け目は前よりは小さいものの、
前よりずっと近くにあり、
更に荒ぶっているように見えた。
『なんで、また…!
もしかしてまた、ウォロさんが…!?』
警戒心を高めていた時だった。
「にゃり!にゃりん!」
オオニューラに肩を叩かれたと同時に、
『君たちはだれ?』
後ろから、声をかけられた。
『ッ!?』
突然の事に驚き、
反射的に体は後ろを向いた。
そこに立っていた男?は、
自身の物とよく似た白いコートを身に纏い、
帽子を被っていた。
『やあ。はじめまして』
まるで客人を招くかのように礼をする彼。
何故かその姿に既視感を覚えた。
『あ、あなたは何者なんですか!
…ていうか、ノボリさんにそっくり!?』
『…』
「…あ、貴方様は…?」
そう尋ねると、彼は顔を歪めたように見えた。
だが、直ぐに口角を上げ、
まるで道化師のように私たちに語りかける。
『ねぇ、ノボリ
どうして、記憶無くしたの?
どうして、思い出してくれないの?』
「…え?」
彼は私の事を知っているようだ。
だが、言葉を発するよりも先に彼は言葉を続けた。
『思い出してくれないノボリも、
僕達を引き離した神様も、
みんなみんな、どうしてこんなことするの?』
彼は私達の間を通り抜け、時空の裂け目を眺める。
『…の、ノボリさん…?
あなた、ノボリさんを知って…』
とその時彼が時空の裂け目に近づくと、
裂け目は更に荒ぶり強い風が吹いた。
風が自身と彼のコートをなびかせ、枯れ葉が舞う。
『だったらこんな世界、壊してしまえばいい。
そうだよね、ノボリ?』
「…え…?」
枯れ葉の壊れた笑みを浮かべ、まっすぐと見つめてくる。
『ぼくを止めたいなら来て。でも、
ぼく、すっごい本気だから』
彼は一つのモンスターボールから、
ポケモンを繰り出す。
「…っ!!私が相手します!」
『へぇ。手加減しないからね』
唖然とする私を置いて、
二人はポケモンバトルを始めた。
彼の手持ちは、全てこの地に生息していないポケモンだった。
風に揺らぐ紫の炎、電気を纏う鰻。
大きな岩を載せた蟹のようなポケモン、
歯車のような形のポケモンなど…
何故か、妙な懐かしさがあった。
彼の的確な指示と、圧倒的な強さのポケモン達に
ショウ様は押されていった。
『…つ、強い…!!』
『だからいったでしょ。ぼく、本気』
彼は笑う。
だが、彼の目の中には計り知れない闇と悲しみがあるのを私は何故か感じる事ができた。
きっと自分のせいだ。と、そう感じた。
彼はきっと、
ここに来る前に共にいた大事な人なのであろう。
でもまだ記憶は戻っていない。
ついにダイケンキが倒された。
『…ぐっ…!』
『ぼくの勝ち。諦める?続ける?』
『……続け…』
「お待ちくださいショウ様」
『ノボリ、さん?』
彼の前に立ち、まっすぐ目を合わせる。
彼は表情を変えずにこっちを見つめてくる。
少し不気味に感じたが、 自分にはその顔が酷く悲しそうに見えた。
「…確かにわたくしの記憶は無く
あなたの事も覚えておりません、ですが」
無意識にモンスターボールを握りしめる。
「暴走する貴方を止めるのはわたくしの役目。
そう思うのです」
そう言うと彼は少しだけ帽子のつばを下げて顔を隠したあと、すぐ帽子を直した。
目はやはり笑っておらず、
目の奥には確かな闇があった。
『…へぇ。ノボリ、ぼくに勝てるの?
確かにノボリは強かった。でも、今はどうなの?』
「…勝ってみせますとも、貴方の目を覚ます為にも」
お互いにポケモンを繰り出し、いつものように高らかに叫んだ。
「それでは、出発進行ーッ!!」
カイリキー、モジャンボ、ジバコイル、グライガー、フーディン、そして、訓練所では出していないオオニューラを繰り出す。
彼はさっきと同じ手持ちを出す。
彼の腕は確かだ。だが、
何故か体は全て分かっているかのように 的確に弱点と先制を突いていく。
「オオニューラ!フェイタルクロー!!」
オオニューラで最後のポケモンをを打ち倒した。
『…勝負、あり』
そう呟いたショウ様と、それと同時に
ポケモンは彼のボールの中に戻っていく。
「わたくしの勝ちでございます」
彼は無言で膝を付いた。
そのまま数秒何も話さない彼に、
ショウ様が恐る恐る近づき、問いかけた。
『…貴方は、何が目的でこんな事をしたんですか?』
彼は顔を上げずに答えた。
『ぼく、ノボリの弟。
ノボリが大好き。それだけ』
どくん、と自身の中で何かが流れ込んだ気がした。
だが、あと少しという所で思い出すことができない。
もどかしい気持ちになっていると、
彼は静かに涙を流していた。
『なんで、忘れちゃったの?
なんで、ここにいるの?
ぼくたち、2両編成じゃなかったの、ノボリ…』
「…あなた」
『でもぼく、だめなことした。
ノボリ、ごめんね
ぼくのこと、嫌いになってもしかたない。でも』
彼はふらふらと立ち上がる。
背を向けて数秒立ち止まると、
彼は泣き笑いながら言った。
『ぼく、クダリ。
ノボリが大好き。
それだけは、覚えてて。』
どくん。
また、自分の中に何かが流れ込んだ。
自身の中に、記憶が一気になだれ込んでくる。
コンクリートで出来ている建物。
大きな音を立てて動く鉄で出来た乗り物。
駆け寄ってくる緑の服を着た人達。
強く鋭く光る青い瞳と、
紫色の美しく揺れる強き炎、
自分によく似た目の前の彼の姿と声。
クダリは時空の裂け目に飛び込もうとする。
『待っ…!』
ショウ様が手を伸ばすより前に自分は駆け出していて、
倒れかけるクダリの腕を掴み、抱き寄せた。
『…ノボリ?』
強く抱きしめる。
暖かい。
自然と涙が溢れる。
「…クダリ…」
『の、ぼり?』
「わたくしは…何故貴方を忘れていたのでしょう」
たった一人の、かけがえの無い弟。
『…ノボリ?ノボリ、ぼくのこと分かるの、?』
「ええ、…全てを思い出す事ができました
クダリ、申し訳ありません」
『ノボリ…、ノボリィ…っ!!
うわぁぁぁん!!!』
泣き出したクダリを更に強く抱きしめ泣いた。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
「本当に今まで、お世話になりました」
シンオウ神殿でカイ様に深く頭を下げる。
これから、ショウ様と共にアルセウスに会いに行き帰るつもりだ。
『いえいえ!
記憶を取り戻したのなら帰るだろうな、とは思ってましたよ。
今まで、お疲れ様でした!
オオニューラはこっちで任せてください!』
「にゃり!」
オオニューラの頭をそっと撫でる。
『…ノボリ、準備いい?
おわかれ言ってないひと、いない?』
クダリが少し不安げに尋ねる。
「ええ、大丈夫です」
『じゃあ、帰ろっか!』
「ええ。早く戻らなければ」
光の階段を登ってゆく。
周りは光に包まれ、よく見えなくなってくる。
だがクダリと手を繋いでいるから、離れる心配は無い。
『ノボリ、まず帰ったら試験だからね。
実力落ちてたらサブウェイマスター降格だから』
「心配無用でございます」
『早くかえろ!みんなまってるから!』
そう言って笑うクダリの笑顔についほほが緩む。
つないだ手を離さない様に、固く握りしめた。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
どうもぬしです
この話を一度書いたあと保存し忘れて全部消えて 投稿が遅くなりました
闇落ちしたクダリが書きたかったんです
闇落ちが結構好きなんですぬし
特に自ら闇落ちしたタイプとか
共感者いますかね
それでは