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ドーーンッ

まるでトラックとトラックが正面からぶつかったような轟音が轟く。

そんな轟音と共に、海面をぶち破って現れたのは……

画像

「ネッシー?」

その全容は見えないが、10m以上はありそうな長い首を持つ何かが、海面へと姿をあらわにした。

その姿に、俺は空想上の生き物を幻視する。

「セイくんっ!」

そのタイミングで、皆を呼びに行っていた聖奈が甲板へと姿を現した。

今は拙いっ!

「聖奈!何かに掴まれっ!大波が来るぞっ!」

「えっ!?嘘っ!?」

アレだけの巨体が水面を割って出てきたんだ。

津波のような高さの波が、すぐ目の前まで迫っていた。

「きゃあああっ!!」

波が直撃し、船を大きく揺らした。

聖奈は階段の出口にしがみ付き、震度7クラスの揺れに叫びながらも何とか耐えている。

恐らく階段にはミランがいるのだろうが、ルナ様とファフニールもいるだろうから、怪我などの心配はないだろう。

「ああ〜ビックリしたぁ…」

「聖奈!無事か?!」

「う、うん。何とかね。それで、アレが…」

聖奈は俺のそばへ駆け寄ると、海に浮かぶネッシーを指さして告げる。

「海竜だよね」

「そうだと思う。もし違うなら、俺たちの運が底知れない程悪いってことだ」

ルナ様から聞いていた西ルートの障害は、海竜だけだった。

知らないあの大陸のことは、上陸さえしなければ問題はないから伝えなかったのだと思う。

コイツが海竜でなければ、俺達にとってコイツが大した障害じゃないから伝えなかった可能性もあるが、どう見ても立派な障害です。

「縄張りに入ったのよ」

「ん?縄張り?」

急な声に振り向くと、そこにはいつも通りの姿をしたルナ様がいた。

やはり見ているこっちが寒くなるほどの薄着だ。

「ええ。今この船が通っている航路が、三つの大陸を繋げる唯一の航路なのよ。だからそこに来る餌を求めて、海竜はここを縄張りにしているのよ」

「なるほどなぁ…追い込み漁の原理で、コイツにとっての餌はここを通るしかなく、ここで捕食されるってワケか」

やはり海竜だったか……

知らない大陸から見て、俺たちが今いる場所は北方の海域に当たる。

ルナ様曰く、ここしか通り道がないということは、南に向かっていたら元の大陸には戻れなかったということか……

適当に選んだのに正解を選択出来たのは、僥倖と言って良い…のか?

ま。そんなことよりも。

「つまり、アイツはファフニールとは違って敵ってことだな?」

「どうかしらね?私が知らないだけで、友好的に接することができるかもしれないわよ?」

「……俺をオモチャにしないでくれ。一応ルナ様の使徒なんだぞ?」

神様が知らない程度の確率にかけるなんて馬鹿らしいわっ!

どうせ、呑気に話しかけて攻撃される俺を見て、笑いたいだけだろうっ!

性格悪いぞ!

「どんな攻撃手段があるかわからないから、みんな注意してくれ!俺はファフニールに乗って近づいてみる!一応…万が一にも、悪い奴じゃなかったらアレだし…」

「結局話し合うんだね……」

「わかりました!」『任せよ』「私は何もしないわよ」

俺の優柔不断さに、聖奈は白い目を向けてきて、やはりミランは俺の成すことに反対はせず、ファフニールからは良い返事をもらえた。

神様?

んなもん無視だよ。

「よし!ファフニール!少し船から離れて大きくなってくれ!」

『任せよ』

そう応えると、ファフニールは小さな身体で船から飛び立ち、10mほど離れた場所で元の姿へと戻った。

「よっと!」

身体強化魔法を増し増しにかけた後、俺はファフニールへと飛び乗った。

「よし!向かってくれ」

『うむ。あの様な雑魚、余の敵ではないが頼まれてやろう』

そりゃあ、ファフニールなら空に逃げれば敵ではないだろうな。

逆に海竜は海竜で、海中に逃げれば敵ではないだろうし……

あれ?この二匹って相性最悪なんじゃ?

そんな考えを浮かべた俺を乗せ、ファフニールは海竜の元へと近づいていった。



『グギャォォッ!!』

『五月蝿いのぅ。言葉も持たぬ獣め』

空を飛ぶファフニールの移動は速い。

海竜との距離を残り20m程まで詰めたファフニールは、その場でホバリングし、吠える海竜へと向けて唾を吐いた。

「えっ?喋れないのか?」

『当たり前だ。コイツらにはある程度の知性はあれど、理性はないからのぅ』

「…じゃあ近寄る意味なかったじゃん……」

そんな大事なことは初めに言ってくれよなっ!?

「くそっ!じゃあ船に戻るぞ!」

『…何しに来たのだ……』

「うっさいっ!!」

俺は愚痴るファフニールに逆ギレして、帰還を急かした。




「セイくん!どうしたのっ?」

「いや…会話不可だった」

「あ…そう……」

船に急ぎ戻った俺に向けて聖奈は冷たい視線をくれた。

これをご褒美だと思えない俺は、その界隈ではまだまだなのだろうな……

わかりたくない。

「接近してきますっ!」

俺が死んだ目を空へ向けていると、ミランから急報が入る。

その声に視線を戻すと、海竜が信じられない速度でこちらへと突っ込んで来ているのが見えた。

「転移する!ギリギリだから、足止めを頼む!」

「了解!」「わかりましたっ!」『余は?』

ファフニールは黙っていてくれ。

転移魔法は慣れているけど、詠唱が長いんだよ。

余計なことは考えたくない。

そんな面倒な詠唱を誦じている俺の視界には、こちらへと向かって来る海竜に向けて、ミランがロケランを放ち、聖奈が魔法を撃っているのが見えた。

『グギャギャッ!!』

二人に出せる火力最大の攻撃であっても、効いたようには見えない。

だが、足止めは叶った。

「『転移魔法テレポート』」

『ガァ?』

海竜の疑問の声を残し、俺達は視界から消えた。





ドーーンッ


「きゃあっ!?」「きゃっ!?」

転移したのは見えていた水平線。

着水時に二人から可愛い悲鳴があがるが、そんなことよりも海竜が気になる俺は、双眼鏡を手に取り確認を急いだ。

「全く…もう少し揺らさない様に転移しなさいよ」

神様から魔法制御についてダメ出しを受けるが、今は構っていられない。

恐らく魔力波のようなコトが海竜も出来るのだろう。

奴はこちらの気配を掴むと、高速でこちらへと向かってきていた。

「魔法で仕留める!恐らくとんでもない波が立つから、何かに掴まっていてくれ!」

「私の使徒なのだから、スマートに倒しなさいよ。スマートに」

俺にそんなコトが出来るとお思いで?

神に向け不遜な態度が顔を出すものの、今の俺にそんな余裕はない。

海竜との距離は既に500mほどになっていた。

「『トルネード融合フレアボム爆裂』」

こちらへと時速60キロ以上の速さで向かって来る海竜に向けて放たれたトルネード。

それを受けて煩わしそうにしている海竜だが、本命はこれから到着する。

海竜の周りに吹き荒れるトルネードを吸収する火の玉。

そしてそれは全ての暴風を呑み込み、全てを解き放った。

何も無い大海原。

そこに、突如現れたキノコ雲。

それは大量の海水を巻き上げて発生し、俺達の元へ波となって向かってきている。

「て、転覆しますっ!」

「大丈夫だ!」

向かってくる大波を見て、ミランが慌てている。

俺は出来ることをする為、それには簡単に応え詠唱を始めた。

「セイくんっ!?」「セイさんっ!?」

詠唱をほぼ終えた俺は、船から飛び降りる。

それを見た聖奈とミランが悲痛な声を上げる。

俺は海へと頭から飛び込む形になり、両の手が海に着くタイミングで詠唱を終わらせた。

「『アイスバーン』」

海水は凍りづらいが、元々氷点下の水温だ。

俺の魔法を受けた海面は直ぐに凍り始め、やがて大波までも凍らせた。

「す、凄い、です…」「ああ…海を凍らせるかぁ…その発想はなかったなぁ」

「ま。及第点ね」

海は俺を中心に、半径500mくらいの広さで凍った。

その景色は突如現れたもので、とても幻想的だった。

神様からは何とか及第点を貰えたが……

どうしよ……

「助かったけど…これだと船が進めないよぉ」


そう。


船は氷の世界へと、閉じ込められてしまったのだった。

〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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