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〜ぼっちの月の神様の使徒〜

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〜ぼっちの月の神様の使徒〜

302 - 31話 第三部 第一章最終話 帰還。

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2024年07月26日

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「『ファイアウォール』」

凍らせたものは解かせばいい。

そういうわけで、俺は今自分で作った流氷の上に立ち、魔法で少しずつ航路を切り拓いている。

戦後処理は面倒だが、良いことも聞けた。

アイスバーンこのまほうで良かったわ。もし永久凍土パーマフロストを使っていたら、海は中々元の姿へ戻らなかったでしょうね。そうなると生態系に影響する以前に、航路としてここを暫くは使うことが出来なくなっていたわ』

確かに超級魔法の永久凍土と迷ったが、元々詠唱慣れしていないし、そもそもあの短時間では使えなかったから直ぐにアイスバーンを選択出来た。

運が良かっただけだが、俺はその言葉に『うん、うん』と頷いておいた。

普段がカッコつけられないから、つけれる場所ではカッコつけておかないとなっ!

「おっ。漸く端まで辿り着けたな」

解凍していたのはこれから目指す方角のみ。

それ以外は時間経過とともに、少しずつではあるが自然解凍されていくからな。

それに任せることにした。

ちなみに海竜だけど、綺麗に消滅していたからその存在は確認出来ていない。

融合爆裂は核爆発と同じく爆心地が超高温になるから、如何に海竜といえども蒸発したのだろう。

自分で蒔いた種を処理し終えた俺は、足元を気にしながら船へゆっくりと戻っていったのだった。






「暖かいっていいねぇ」

そう染み染みと呟くのは寒さが苦手な聖奈。

俺達は今、南東に舵を切り進んでいるところだ。

海竜戦の後、東進して知らない大陸圏を抜けたので、南東方面へと進んだ。

今は日本の春くらいの気候になり、聖奈とミランはとても過ごしやすそうにしている。

「後どれくらいで着くと思う?」

「太陽の位置から、このまま東進すればハンキッシュ皇国の海岸に着くと思うよ。時間はどれくらいかなぁ?わかんないけど、そんなにはかからないんじゃないかな?」

「そうか。ありがとう」

あまり南に進むとイステーファル連邦に着いてしまうな。

それは面倒だから、この辺りから真っ直ぐ東を目指そうかな。

俺達の旅は障害物が無くなり、順風満帆なモノになっていた。

後少しでこの旅も終わる。

少し名残惜しくもあるが、やることは山積みなので寂しさは感じられなかった。





「見えましたっ!」

ミランの声に顔をあげると、蜃気楼の様に見える何かが視界へと入ってきた。

「帰って来たね!」

蜃気楼の様に見えたのは、どうやら中央大陸だったようだ。

さらに近づくと、その輪郭は次第にハッキリとしていき、ぼやけていた砂浜がしっかりと見えた。

「帰ってきたといっても、ここは知らない場所なんだが……」

「雰囲気だよ!雰囲気!」

その雰囲気が全く感じられないのだが……

実際来たことがない海岸だからな。

「セイくん!そろそろ転移できそう?」

「ん?バーランドにか?」

「うん」

うーーん。いや。無理だな。

「無理なようだ」

「そうなんだぁ…じゃあもう少し近づかなきゃね」

詠唱を始めると、感覚的に無理なことがわかった。

それを伝えると聖奈は残念そうに呟く。

これ以上海岸に近寄ると、ハンキッシュ皇国から攻撃を受けかねない。

何せ、こちらは所属どころか国籍不明の船だからな。

彼の国は鎖国こそしていないものの、余所者にあたりがキツい国だし。

それで聖奈は嫌がっているんだ。

そんなことを思っていると、不意にルナ様が口を開いた。

「転移魔法は魔力線が繋がっていないと発動出来ないわ。わかりやすくいうと、これまでに行ったことがあるところまでいかないと、魔力歪みで遮断された聖の魔力線がこれまでの魔力線と途切れたままってことね」

「なるほど?つまり、中央大陸の今まで行ったことがあるところまで行けば、これまで通りに使えるってことか?」

「そういうことよ」

今は東の海にある魔力歪みのところでそのヒモが途切れているってことか。

「じゃあ、このまま海岸に近づいたところで、転移魔法は使えないんじゃ?」

「そうね。貴方がここの近くを訪れていないのなら、そうなるわ」

近くか……その判定は俺の魔力が届く圏内って意味なのだろう。

今までは見える範囲なら行ったことがなくても転移できると思っていたが、恐らくそれは間違いだ。

魔力波などの微細な魔力でも、俺の魔力が干渉できる場所までなら、行ったことがないところでも転移できるのだろうな。

ということは……

「ファフニール。出番だ」

『任せよ』

……まだ何も言ってないのに、安請け合いしやがって……

どれだけ頼られたいんだよ……

「これからファフニールに乗って、魔力線を繋げてくるよ。二人とルナ様はここで待っていてくれ」

「うん。それが良さそうだね」「わかりました」「早くしなさいよ」

「行くぞ。ファフニール」

『任せよ』

みんなにそう告げると、何を言っても『yes』と応えるファフニールに飛び乗り、俺は青空へと飛び立ったのだった。






「おかえりなさいっ!早かったねっ!」

空に浮かぶファフニールから船へと向かって飛び降りた俺へ飛びかかって来たのは聖奈。

それを受け止めると挨拶をしてきた。

「遅いわよ」

こうした新婚ムーブ(もう新婚ではない)をかますと、ルナ様の機嫌が必ず悪くなる。

「おかえりなさい。どうでしたか?」

そう言って、聖奈が退くのを待ってからトコトコと近寄り、差し出した頭を撫でられながらもマトモなことを聞くのがミラン。

「流石に飛べばすぐだったよ。バッチリ転移出来たぞ」

ファフニールに乗ると20分程でハンキッシュ皇国の知った場所へと辿り着けた。

そこから水都の屋敷に転移を試せば出来たので、問題なさそうだと、こうして船へと戻って来たんだ。

よく考えれば転移魔法で戻れば良かったんだけど、ファフニールが気持ち良さそうに飛ぶものだから、そんな考えが思い浮かばなかったな。

「じゃあ夜を待とっか」

「そうだな。流石に船を無人にするのは怖いからな」

ハンキッシュ皇国の海岸沿いは、漁業が盛んに行われている。

知らない人にこの船が動かせるとは思えないが、壊されたら最悪だ。

よって、城へ帰るのは船を地球へと返した後になる。

俺達は旅の慰労も兼ねて、夜まで船内パーティを楽しむことにした。






「『テレポート』」

いつもの言葉を口にすると、それは魔法になり、俺の願いを叶えてくれた。



「よっ!ただいま」

「…えっ?!セイさんですぅ!!」

「…私達もいますよ?」「ミランちゃん。ここは譲ってあげよう」

夜になり船を地球へと戻した俺は、海岸で待つみんなのところへと戻り、バーランド城にある俺達の私室へと転移した。

そこで一人寂しく夕食を食べていた俺達の魔導士エリザベスことエリーは、俺を見つけると一目散に駆け寄り、飛びかかって来たので受け止めた。

「長い間留守番させて悪かったな」

「ホントですぅ。これは凄いおやつを期待するですっ!」

ミランはすっかりお姉さんになったが、エリーはいつまで経ってもエリーだ。

そんなエリーを抱えて、ライル達の到着を待った。




「無事で何よりだ」

騎士達を走らせて仲間を集めると、すっかり遅くなってしまった。

時間は22時頃。

この世界では寝静まる時間帯だが、ここバーランド王国は灯の魔導具を全世帯に一つ以上は持たせてあるので、まだまだ夜は長い。

この王城内も魔導具や地球産のライトで煌々と照らされており、生活するには何の問題もない。

いつものリビングで待っていると、仲間達が遅い時間にも関わらず駆けつけてくれた。

「ライルも変わりなさそうだな」

「夜泣きで寝不足だけどな」

ライルは一児の父になっている。

そういった意味では俺よりも先輩だ。

あ、冒険者でもか。

あれ?商会でも?…まぁいいや。

「ガゼル達三人組は?」

「アイツらは何処かで飲み明かしているんだろうぜ。いつものことだが、神出鬼没だからどこにいるのかはわかんねーな」

…相変わらずのようでなによりだよ。

『ひぃっ!?大トカゲがいるのじゃっ!?』

「おお。コンか。何だかお前の悲鳴を聞いたら帰ってきた感じがするな」

おかしいな。コイツは最近ここに来たばかりのはずなのに……

仲間やペットとも会えた。


俺にとって帰る場所とは、みんなのいる場所なんだ。

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