テラーノベル
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執念深く立ち上がった奴から、再び容赦のない拳が繰り出される。
それを腹で喰らいながらも
俺は確実に奴の肉体を削るための反撃のタイミングを一心に見量る。
「………っ」
脳髄を貫くような衝撃が脊髄へと走り、思わず膝の力が完全に抜けかける。
だが、ここで倒れたら
宇佐美に示しがつかない。
男として、人間として終わりだ。
「はぁ!? マジでキモすぎだろてめぇ……!!なんで倒れねぇんだよ!!」
いくら殴ってもゾンビのように立ち上がってくる俺の姿に、茅野の狂気に満ちていた表情が
徐々に明確な「困惑」と「恐怖」へと変わり始める。
なぜ倒れないのか、その理由を奴に教えてやる義理はなかった。
俺はかすむ視界のなかで再び両足で大地を踏み締め、拳を握り直した。
「…おめぇ、俺にこれ以上歯向かうってんなら、マジでブチ殺すぞ……っ」
茅野の低く唸るような、本気の殺意が籠もった声。
振り上げられた奴の拳は
次の一撃で確実に俺を気絶させる致命傷になる──。
冷たい冷気が背筋を走るような、そんな最悪の予感を覚えた、まさにその刹那だった。
キーンコーンカーンコーン…
校内スピーカーから、放課後の終わりを告げる最終下校の鐘が無機質に、そして大音量で鳴り響いた。
途端、静まり返っていた廊下の向こうから、複数のバタバタとした足音が聞こえてくる。
ガララッ、と誰もいないはずの教室の扉が開きかけた。
「──っ!?」
茅野は咄嗟に動きを止め、振り上げていた拳を忌々しげに引く。
薄く開いた扉の隙間から廊下を覗くと、見回りをしている巡回中の教師の影と
その手にする懐中電灯の光が見えた。
ここで見つかれば、一発で停学か退学だ。
「……ッチ! 拓海…今日のところは引いてやるが……次はマジで覚悟しとけよ……!!」
捨て台詞を残し、茅野は教師に見つからないよう、裏の非常階段の方へと逃げるように去っていった。
まるで安っぽい不良漫画のようなシーンが、今、自分の目の前の現実で起きていた。
静まり返った教室に一人残された俺は、張り詰めていた糸が切れたように
膝から床へと崩れ落ちる寸前で、どうにか近くの壁にもたれかかった。
ゼーゼーと、壊れた蛇腹のような荒い呼吸を繰り返す。
口元にじわりと滲む温かい血を、制服の袖で乱暴に拭う。
全身を襲う凄まじい激痛よりも、俺の脳裏を占めていたのは──
〝こんなボロボロの姿……宇佐美に見られたら、頭のおかしい奴だと思われて、もっと嫌われるかもしれない〟
という、情けないほどの心配だけだった。
とにかく、早く。
洗面所でこの顔の血を綺麗に洗い流して、ひっくり返った机と椅子を元の形に直して……。
あとは、宇佐美が来てくれると信じて、ただここで待つしかないんだ。
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み お .