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第7話
nmmn
rtkg
学パロ
付き合っている設定
第6話の続き
夜の廊下はしんと静まり返っていた。窓の外には月が浮かび、冷たい光が床に差し込む。
リトは自室のドアを開けた瞬間、ベッドの端に座っているカゲツの姿を見つけて足を止めた。
肩を落とし、視線を伏せたまま。普段なら宿題に向かうか、ふてくされた顔でスマホをいじっているのに、今夜のカゲツは沈んで見えた。
「カゲツ?」
名前を呼ぶと、細い肩がぴくりと震えた。
「……宇佐美」
小さな声。いつもの張りがない。
リトはすぐに隣へ腰を下ろした。
「何かあったのか」
「……」
カゲツは唇を噛み、しばらく黙っていた。けれど、堪えきれなくなったのか、ぽつりと漏らした。
「北見くんに……呼び出されて。今日、放課後……」
その名を聞いた途端、リトの眉が動いた。
「……何された」
声が低くなる。カゲツは慌てて手を振った。
「別に、何かされたわけじゃない。ただ……告白、みたいなことされて……。でもぼくは、ちゃんと断った」
「断った」
「うん。リトがいいって、言った」
赤くなった頬を伏せながら、小さな声でそう告げる。
リトの胸の奥で、熱いものが一気に膨らんだ。
「……カゲツ」
気づけば、彼を強く抱きしめていた。
細い体が腕の中にすっぽりと収まり、心臓の鼓動が触れ合う。
「怖かっただろ」
「……ちょっと、ね。でも……言えたよ。リトが好きだって」
「……っ」
堪えきれず、リトはカゲツの後頭部に顔を埋めた。髪から漂うシャンプーの匂いに、胸がじんわりと熱くなる。
「誰にも触れさせたくない。俺以外の奴に近づかれるなんて……耐えられねぇ」
「……わかってる。ぼくだって、リト以外は嫌だよ」
小さな声。でも真剣な響きだった。
リトは彼の体をさらに強く抱き寄せ、囁いた。
「もう二度と不安にさせない。北見が何を言おうと、俺が全部跳ねのける。……カゲツは俺のだ」
「……ん」
頬を寄せ合いながら、二人はしばらく言葉を交わさなかった。
ただ心臓の音と温もりだけが、確かに存在を証明していた。
やがて、カゲツが小さく呟いた。
「……ねえ、リト」
「ん?」
「さっき……抱きしめてくれたとき、安心した。だから……もう少し、このままでいて」
その願いに、リトは微笑んだ。
「いくらでも」
窓の外の月が静かに照らす中、二人の影はひとつに重なり、夜が深まるほどに甘く溶け合っていった。