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朝食を済ませた俺たちは再びデレクの町へと飛んだ。
今はナツのログハウスに集合している。
フウガは別行動だな。
冒険者登録が失効していた為、再登録を指示している。
戻ってきたら、子グマ弟のガルを鍛えてやってくれと言い添えた。
(ガル6歳は両手剣を使う剣士スタイルです)
お小遣い込みで大銀貨2枚を渡し、フウガを冒険者ギルドへ送り出す。
目が見えるようになったキロは、とにかく物を覚えさせる事を優先させている。
ここ2日程でしっかりと歩けるようにはなったので、今日はメアリーと共に行動させるようにした。
隣の温泉施設で仕事を手伝ったり、デレクの町を廻って、いろいろ見て覚えるように言ってある。
なれど外は雪がチラつく冬空。すこぶる寒いのだ。
外に出るまえにメアリーとキロにはそれぞれローブを羽織らせた。
それでも首もとが開いて寒そうだったので、赤く染め上げたふわふわタオルを首に巻いてあげた。
――赤い手ぬぐいマフラーである。
余談ではあるが、この赤いタオルはシロにもウケが良かったりする。
こうして先端にダマを作ってプラプラやってると、シロが噛み噛みして戯れついてくるのだ。
ハハハハハハッ! この感じは久しぶりだなぁー。
「あっ、ちょっと待って!」
ログハウスから出ていこうとしているメアリーとキロをとめ、それぞれに大銀貨を1枚ずつ握らせる。
「これで好きな物を買いな。ヘアブラシとかハンカチとかいるだろう。おつりをもらったら誰にも見られないようにマジックバッグにしまうんだぞ」
「うんゲンパパ、大丈夫だよ。キロちゃんとお買い物してくるね」
手を振って二人を送り出したあと、俺もシロを連れて表に出た。
まずは午前中に代官邸を完成させるかな。
用地はすでに確保してある。
迷宮入り口より少し登った場所。その部分をすこし削って平地にしているのだ。
王都ツーハイム邸なら二棟は建ちそうな広さがある。
その敷地のど真ん中に代官邸を建てていく。
イメージは簡単。
この前見てきた迷宮都市カイルにある代官屋敷。あの建物をそのままトレースすることにしたからね。
まあ、中に住んでた奴らはどうしようもない悪党だったけど、建物自体はあれでしっかりしたものだったから。
具体的なモデルがあるだけに、デレクも迷いなく作り上げていく。
あとは邸の中に入り、細かい部分をどんどん手直ししていった。
家宅捜索の折、内装もしっかりと見てきたのでイメージも出しやすいな。
特にこれといって悩む部分もなかった。
ああ、執務室の壁にあった隠し部屋ね。
いらない、いらない、俺にはインベントリーもあるのだし。
だけど秘密の地下通路なんかは楽しそうだよね。ロマンがあって。
あとは温泉と地下水をそれぞれ引き込み、下水の方はダンジョンが処理してくれるということだ。
ちょっと昼をまわってしまったが、なんとか形になったと思う。
家人用の宿舎や馬用の厩舎などは、また後日だな。
屋敷門へ繋がる葛折りの坂をシロと一緒に下りていく。
この道と、先ほど建てた代官邸のある場所は認識阻害の結界が張ってあるため、町の人たちにはまだ見えていない。
てくてく歩くこと10分。
ようやく下の花道に合流した。
町からダンジョンへと延びるこの道は多くの人が行き交っており とても賑やかだ。
道の両サイドには様々な露店が建ち並んでいた。
町の住民もだけど、冒険者の増え方は予想以上だな。
冬場に入ったというのも関係しているんだと思う。
何故なら、冬場は外の仕事が極端に減ってしまうからだ。
これは冒険者だけの話ではない。
よって普段はダンジョンに入っていない者でも、出稼ぎ感覚で ”冬場はダンジョンへ行こう!” となっているようなのだ。
アランさんが派手に宣伝しちゃったからねぇ。(苦笑)
宿もある程度は建てているが足りているのかな?
そんなことを思いながら町へ戻っていると、途中の原っぱに ”テント村” みたいな場所ができていた。
三角テントが所狭しと立ち並んでいる。
端の方では、次々と新しいテントを張っている最中だ。
気になった俺は、そのテント村の向かいにある串焼き屋へ寄った。
「おっちゃん、串焼き4本くれ!」
「あいよ! 120バースだ。焼き直すからちょっと待っててな」
串焼きが焼き上がる間、おっちゃんに話を聞いていく。
濮 ノ 毒 に な っ て ?
餅まめ
124
え〜る
57
どうやら、冒険者向けにテントの貸し出しをおこなっているらしい。
テントの大きさによって料金が異なるそうだ。
それに利用者には毛布の貸し出しの他、奥に並んでる仮設トイレなどを利用できるらしい。
なるほど、よく考えたものだな。
まあ、宿屋が増えていけば自然と無くなっていくだろうが。
ただ、勝手気ままにやられるとトラブルの元ではある。
そのうち不公平を訴える者も出てくるだろう。
今はこの町を管理するため、王国から役人が派遣されて来ているはずだが……。
町の人口が一気に膨れ上がったせいで、ダンジョンや冒険者の対応が間に合ってないのかもな。
これからの課題でもあるな。
準備期間はもらっているけど、できる限り早く引継いであげないと問題が起こりそうだな。
そうなると管理をおこなう人材が足りないなぁ。
おばば様に相談して、また何人かまわしてもらうとするか。
隣ではジャガイモを蒸かしていたので、それも貰うことにした。
お代を払い、取り出したフライパンに蒸かしたジャガイモを入れてもらう。
俺とシロの分で2個だな。十文字にいれた切れ目からはホクホクと湯気があがっている。
屋台の横に置いてあった樽に腰掛け、
こっそり取り出したバターをひとかけら上にのせて頂く。
ん――――っ、コレ旨~い!
威勢のいい声、活気にあふれる人々、ここを練り歩くだけでワクワクしてくるなぁ。
………………
昼めし代わりに屋台を何軒かハシゴしたあと、俺たちは教会へ向かった。
シスターマヤは俺が来たことに気付くと、すぐに笑顔で駆け寄ってきた。
「ゲン様、よくおいでくださいました」
「おう、朝言ったとおり話にきたんだが……。もしかして、全部一人でやっているのか?」
「はい、ごめんなさい。 おそらく来年の春まではこのままかと……」
「それで大丈夫なのか?」
「は、はい……、こちらには王都を経由して参ったのですが。その時お世話になった教会役員の方に人員をまわして頂けるよう通達は出しています。ただ教会本部での承認にも時間が掛かりますし。どう急いでも、そのくらいになってしまうかと……」
「では、奥で落ち着いて話をするという訳にはいかないなぁ」
「はい……」
シスターマヤは申し訳なさそうに下を向いてしまった。
「その辺はこちらでも動いてみよう。シスターの派遣とかは無理だが、”お手伝いさん” ぐらいは何とかできると思う」
「えっ、宜しいのでしょうか。こちらはすごく助かりますが」
シスターマヤは嬉しそうだ。
いやいや、春まで何日あると思ってるんだよ。休みも取れないのでは身体も参ってしまうだろうに。
教会本部も急な話なのは分かるが、あんまりではないだろうか?
まぁ愚痴ったところで、来ないものは仕方がないのだが……。
だけど、ここは俺が管理する町。何とでもしてやるさ。
「じゃあ、そこの長椅子に座って話すぶんならいいか?」
「はい、問題ありません。朝は孤児院がどうとかおっしゃっていましたが?」
「おう、それな。実はここでの孤児院の在り方について考えていたのだが……」
以前考えていたように ”モンソロの孤児院” からこちらに移ってもらい、持ち上がりでスラムの子供たちをその空いた孤児院に収容してはと持ちかけたのだが。
シスターマヤは暫く考えてから、
「それは無理があります。もちろん素晴らしい考えだとは思います。ですが教会にも規定が多くあるのです。 いま孤児院に入っている子を他所の孤児院へ移すというのは現実的な話ではないのです」
「…………」
「あまり詳しい事は申せませんが、孤児院から出すだけでも、一人一人様々な手続きが必要になってくるのです。また孤児院を開く際にもそれなりの手続きが必要になりますし、今すぐにはとても無理なのです。本当にごめんなさい!」
「いやいや、それはマヤの責任ではないし、できないからと攻めてもいないから。 しかしそうか……、教会も大きな組織だからな。その手続きにしたってよく考えてあるのだろうな」
「はい……、お力になれず申し訳ありません」
「それじゃあ、俺個人が勝手にスラムの子供たちを救う分には何も問題ないんだよな?」
「それは勿論です。ですが可能なのでしょうか? それでしたら私も何かお手伝いできるかもしれません!」
少しはやる気が出てきたようだ。
「俺が考えているのはな……。完全なる自活は無理でも、子供でもできる仕事をさせながら学ばせていくやり方だ。まぁどこまで実現できるかはやってみないと分からないが」
「子供たちが自活するのですか。なんて素晴らしいことなのでしょう」
「まあ、色々やらせてみるさ。無駄にはならないよな」
「はひ、そうですよね……」
両頬を涙で濡らしながら答えるシスターマヤであった。
これからの動きとしてはモンソロの町にあるスラムへ直接赴き。
・子供たちをデレクの孤児院へ入所させるよう促していく。
(乳飲み子を抱えた親、どうしても子供と離れられない親は別途判断する)
・親のいないストリートチルドレンの場合は強制的に入所させる。
・生きる希望を捨てていない者は希望者を集い、審査をおこなった上でデレクの農地へ入植させる。